精神科訪問看護基本療養費は、精神疾患を有する利用者に対して、精神科訪問看護指示書に基づく訪問看護を行ったときに算定する費用です。一般の訪問看護とは点数表が別で、訪問する看護師にも要件があります。

そのうえで、令和8年6月の改定では同一建物居住者の区分が大きく組み替わりました。変わったのは金額だけではありません。同一日に訪問する人数が10人以上になると、算定の数え方が「週」から「月」に切り替わります。 週3日目まで・週4日目以降で数えていた事業所が、10人以上の建物では月20日目まで・月21日目以降で数えることになる。同じステーションの中に2つの数え方が同居します。

この記事では、対象者と算定要件、区分と金額を令和8年6月改定に対応して整理しました。金額は告示原文と訪問看護療養費マスターの2系統で1セルずつ照合しています。あわせて、算定できる看護師の要件、GAF尺度の記載場所、訪問回数の上限といった、毎月の請求で判断が要る部分もまとめました。

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知りたいこと 該当箇所
対象になるのは誰か・一般の訪問看護と何が違うのか 1章 対象者と3つの違い
6月改定で何が変わったのか 2章 令和8年6月改定の変更点
区分と金額を確認したい 3章 点数早見表
複数回訪問加算が廃止されたと聞いた 4章 複数回訪問と複数名
20時間の研修は必須なのか 5章 算定できる看護師の要件
GAFはどこに書くのか 6章 GAFと2種類の指示書
週に何回まで訪問できるのか 7章 回数制限と30分未満
届出は要るのか 8章 届出と様式

1. 精神科訪問看護基本療養費とは|対象者と一般の訪問看護との違い

精神科訪問看護基本療養費は、精神疾患を有する者又はその家族等に対して、その主治医から交付を受けた精神科訪問看護指示書と精神科訪問看護計画書に基づいて指定訪問看護を行った場合に算定します(保発0305第19号 第3の2(1))。一般の訪問看護基本療養費とは点数表そのものが別建てです。精神科の別紙様式3・4に固有の記載要領と、報告書のGAF欄・訪問日の記号(○・◇・△・◎・□・✔)は訪問看護計画書・報告書の書き方で扱っています。記録側では、精神科の参考様式3・4に一般の記録書Ⅰ・Ⅱにない欄が並びます(病識・金銭管理・服薬状況など)。欄ごとの中身は訪問看護記録書の書き方で扱っています。

一般の訪問看護と違う点が3つあります。

  1. 指示書が違う — 精神科を標榜する保険医療機関で精神科を担当する医師が交付した精神科訪問看護指示書が要ります(→6章
  2. 訪問する看護師に要件がある — 経験または研修のいずれかを満たす必要があり、届出も要ります(→5章8章
  3. 家族等への訪問も算定の対象に含まれる — 条文が「精神疾患を有する者又はその家族等」と定めています

現在の区分は(Ⅰ)(Ⅲ)(Ⅳ)の3つです。

  • (Ⅰ) 同一建物居住者以外への訪問
  • (Ⅲ) 同一建物居住者への訪問
  • (Ⅳ) 入院中の患者が在宅療養に備えて一時的に外泊している期間の訪問

(Ⅱ)は欠番です。告示上は「削除」と表示されており、留意事項通知にも(Ⅱ)への言及はありません。少なくとも令和3年度版の近畿厚生局の手引きの時点で(Ⅰ)(Ⅲ)(Ⅳ)の3区分になっており、令和8年3月のマスター変更点にも(Ⅱ)の廃止コードは立っていません。令和8年6月改定で廃止されたわけではない、と理解しておけば十分です。

なお、精神科訪問看護の利用者は自立支援医療(精神通院医療)の受給者証を持っていることがあります。こちらは医療保険の自己負担部分にかかる公費で、上限額管理票の記入やレセプトの公費欄という別の実務が発生します。訪問看護の自立支援医療|上限額管理票の記入と公費の優先順位にまとめました。

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2. 精神科訪問看護基本療養費 令和8年6月改定の変更点

改定で組み替わったのは(Ⅲ)です。同一日に訪問する利用者の人数区分が細分化され、2人/3人以上9人以下/10人以上19人以下/20人以上49人以下/50人以上の5段階になりました。

そして人数が増えるほど単価が下がるという逓減だけでなく、10人以上の3区分では算定の軸そのものが変わります。

人数区分 日数の数え方
同一日に2人 週3日目まで/週4日目以降
同一日に3人以上9人以下 週3日目まで/週4日目以降
同一日に10人以上19人以下 月20日目まで/月21日目以降
同一日に20人以上49人以下 月20日目まで/月21日目以降
同一日に50人以上 月20日目まで/月21日目以降

グループホームやサービス付き高齢者向け住宅に複数の利用者がいるステーションでは、建物ごとに数え方が変わることになります。週で数えるつもりのまま10人以上の建物を処理すると、月の後半の請求が丸ごとずれます。

なお同じ構造は一般の訪問看護基本療養費(Ⅱ)にも入っています。精神科だけの話ではありません。両保険の加算を横断して確認したい場合は訪問看護の加算一覧・早見表をご覧ください。

2-1. 月内の日数の境目は4種類ある

さらに厄介なのが、月内の日数で単価が変わる項目が複数あり、しかも境目の日付がそれぞれ違うことです。

項目 日数の境目 人数区分
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)の10人以上の区分 月20日目まで/月21日目以降 同一建物・5段階
精神科複数回訪問加算(1日3回以上)の3人以上の区分 月20日目まで/月21日目以降 同一建物・5段階
夜間・早朝訪問看護加算(3人以上の区分のみ) 月15日目まで/月16日目以降 同一建物・5段階
深夜訪問看護加算(3人以上の区分のみ) 月15日目まで/月16日目以降 同一建物・5段階
精神科緊急訪問看護加算 月14日目まで/月15日目以降 なし
訪問看護管理療養費(単一建物20人以上の場合) 月15日目まで/月16日目以降24日目まで/月25日目以降 単一建物・3段階

14日目、15日目、20日目、24日目。4種類の境目が同じ月の中で並行して動いています。 どれかひとつの感覚で全部を処理すると、月の後半でまとめてずれます。

注意点が2つあります。

ひとつは、夜間・早朝訪問看護加算と深夜訪問看護加算の「1人又は2人」の区分には日数の逓減がないこと。夜間・早朝は2,100円、深夜は4,200円の一本値です。日数区分が入るのは3人以上の4区分だけです。

もうひとつは、訪問看護管理療養費だけ基準が別だということ。こちらは「同一建物」ではなく「単一建物居住者」で数え、しかも日数は訪問看護管理療養費または包括型訪問看護療養費を算定する日数で数えます(第5の1(1))。基本療養費と同じカレンダーで処理できません。

2-2. 同一建物の人数は他の療養費と合算して数える

ここが令和8年改定でいちばん見落とされやすい規定です。同一建物居住者の人数は、精神科の利用者だけで数えるのではありません。

同一日に訪問看護基本療養費を算定する利用者数、精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者数及び包括型訪問看護療養費を算定する利用者数を合算した人数

保発0305第19号の第2の2(1)および第3の3(1)です。精神科の利用者が3人でも、同じ建物・同じ日に一般の訪問看護で8人を訪問していれば、合計11人で「10人以上19人以下」の区分になります。週で数えていたつもりの建物が、月で数える建物に変わるということです。

同じ考え方は複数名精神科訪問看護加算の人数にも及びます(→4-2)。

一般の訪問看護側の複数名訪問看護加算とは、主として訪問できる職種も同行できる職種も回数の上限も違います。違いは複数名訪問看護加算|算定要件と令和8年6月の同一建物5区分の9章に対照表で整理しました。

2-3. 「同一建物」の範囲も広がった

人数の数え方が効いてくる以上、どこまでが同一建物かの判定も重要になります。令和8年6月改定では、同一建物居住者に同一敷地内が含まれることになりました。

疑義解釈(その1・令和8年3月23日)の問1がこう整理しています。

① 同一地番の敷地内である場合や、同一地番ではなくとも公道に出ずに敷地を行き来できる等一体的に利用されている敷地である場合が該当する。② (中略)広大な敷地に複数の建物が点在するもの(例えば、UR(独立行政法人都市再生機構)などの大規模団地や、敷地に沿って複数のバス停留所があるような規模の敷地)で、他者が占有する土地によって隔てられており建物と建物の距離が離れている場合は(中略)含まれない。

前項までのとおり、精神科は5つの項目が同一建物内の人数で単価が動きます。この定義変更の影響を最も受ける領域です。 同一建物の判定と減算の考え方は一般の訪問看護でも同じ構造なので、訪問看護の同一建物減算|対象範囲と人数の数え方もあわせてご覧ください。

なお、令和8年度改定の疑義解釈は令和8年6月26日のその9まで出ていますが、精神科訪問看護基本療養費そのものを主題にした問は見当たりません(その1〜その9の全問を精査したわけではありません)。その8の問4が包括型訪問看護療養費のもとでの精神科緊急訪問看護加算に触れているのが、確認できた範囲では唯一の関連です。一般の訪問看護向けに出たQ&Aを、精神科の点数表に自分で当てはめて読む必要があります。

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3. 精神科訪問看護基本療養費の点数早見表(Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ/30分未満対応)

金額はすべて算定方法告示の令和8年6月1日時点の条文によります。訪問看護療養費マスターの変更点とも1セルずつ照合済みです。

3-0. 3ステップで単価を引く

STEP1 その日、同じ建物で何人に訪問したか  1人 … 3-1(Ⅰ)へ/2人以上 … 3-2以降(Ⅲ)へ  ※人数は精神科の利用者だけでなく、一般の訪問看護基本療養費・包括型訪問看護療養費の利用者も合算します(→2-2

STEP2 訪問したのは誰か  保健師・看護師・作業療法士 … 3-2/准看護師 … 3-3

STEP3 日数を数える  同一建物9人以下 … そのの何日目か(3日目まで/4日目以降)  同一建物10人以上 … そのの何日目か(20日目まで/21日目以降)

「30分未満」の欄を使えるのは、短時間訪問の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合だけです(→7-1)。短時間で回ったから30分未満の区分で算定する、という運用はできません。

3-1. (Ⅰ)同一建物居住者以外

職種 週3日目まで 30分以上 週3日目まで 30分未満 週4日目以降 30分以上 週4日目以降 30分未満
保健師・看護師・作業療法士 5,550円 4,250円 6,550円 5,100円
准看護師 5,050円 3,870円 6,050円 4,720円

3-2. (Ⅲ)同一建物居住者・保健師/看護師/作業療法士

同一日の人数 日数区分 30分以上 30分未満
2人 週3日目まで 5,550円 4,250円
2人 週4日目以降 6,550円 5,100円
3人以上9人以下 週3日目まで 2,780円 2,130円
3人以上9人以下 週4日目以降 3,280円 2,550円
10人以上19人以下 月20日目まで 2,760円 2,110円
10人以上19人以下 月21日目以降 2,660円 2,010円
20人以上49人以下 月20日目まで 2,710円 2,070円
20人以上49人以下 月21日目以降 2,610円 1,970円
50人以上 月20日目まで 2,610円 1,990円
50人以上 月21日目以降 2,510円 1,890円

同一日に2人の場合は(Ⅰ)と同額です。3人以上になると単価がおよそ半分になります。

3-3. (Ⅲ)同一建物居住者・准看護師

同一日の人数 日数区分 30分以上 30分未満
2人 週3日目まで 5,050円 3,870円
2人 週4日目以降 6,050円 4,720円
3人以上9人以下 週3日目まで 2,530円 1,940円
3人以上9人以下 週4日目以降 3,030円 2,360円
10人以上19人以下 月20日目まで 2,520円 1,930円
10人以上19人以下 月21日目以降 2,420円 1,830円
20人以上49人以下 月20日目まで 2,470円 1,890円
20人以上49人以下 月21日目以降 2,370円 1,790円
50人以上 月20日目まで 2,370円 1,810円
50人以上 月21日目以降 2,270円 1,710円

3-4. (Ⅳ)入院中の外泊時

8,500円(1回につき)。

入院中の患者が在宅療養に備えて一時的に外泊している期間に、精神科訪問看護指示書と精神科訪問看護計画書に基づいて訪問した場合に算定します。届出が必要で、算定できるのは入院中1回(別に厚生労働大臣が定める疾病等の利用者は入院中2回)に限られます。

3-5. 精神科でよく併算定する加算の金額

早見表として使えるよう、基本療養費とあわせて動く加算の金額も掲載します。

夜間・早朝訪問看護加算

同一建物内の人数 月15日目まで 月16日目以降
1人又は2人 2,100円 (区分なし・2,100円)
3人以上9人以下 2,100円 1,900円
10人以上19人以下 1,800円 1,300円
20人以上49人以下 1,200円 950円
50人以上 1,000円 800円

深夜訪問看護加算

同一建物内の人数 月15日目まで 月16日目以降
1人又は2人 4,200円 (区分なし・4,200円)
3人以上9人以下 4,200円 4,000円
10人以上19人以下 3,900円 2,300円
20人以上49人以下 2,100円 1,500円
50人以上 1,800円 1,300円

深夜の10人以上19人以下は、月15日目までの3,900円が月16日目以降は2,300円になります。1,600円の落差で、他の区分の逓減幅とは桁がひとつ違います。ここを月内で切り替え損ねると、返戻ではなく過大請求として残ります。

精神科緊急訪問看護加算

日数区分 金額
月14日目まで 2,650円
月15日目以降 2,000円

同一建物内の人数による区分はありません。境目は月14日目で、2-1で挙げた4種類のうちいちばん早く来ます。一般の緊急訪問看護加算との考え方の違いは訪問看護の緊急訪問看護加算|算定要件と24時間対応体制加算との関係で扱いました。

長時間精神科訪問看護加算 5,200円。週1日(別に厚生労働大臣が定める者の場合は週3日)が限度です。

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4. 精神科複数回訪問加算・複数名精神科訪問看護加算の算定要件と金額

「精神科複数回訪問加算の1日3回以上が廃止された」という情報を見かけます。これは正確ではありません。

廃止されたのは、マスターコード530004870「精神科複数回訪問加算(1日に3回以上の場合)(同一建物内3人以上)7,200円」という粗い一括区分1本です。そして同時に11のコードが新設されました。つまり区分が消えたのではなく、同一建物の人数で5段階に割られ、さらに月20日目までと月21日目以降の逓減が入ったというのが実際に起きたことです。

4-1. 精神科複数回訪問加算

この加算は届出が必要で、対象は医療機関側で精神科在宅患者支援管理料を算定している利用者です。自ステーションの届出だけでは算定できません。

金額表は、届出が不要な難病等複数回訪問加算と完全に同じです。対象者・届出の違いは難病等複数回訪問加算|全10区分の点数と同一建物の数え方で比較しています。

イ 1日に2回の場合

同一建物内の人数 金額
1人又は2人 4,500円
3人以上9人以下 4,000円
10人以上19人以下 3,700円
20人以上49人以下 3,500円
50人以上 3,300円

ロ 1日に3回以上の場合

同一建物内の人数 月20日目まで 月21日目以降
1人又は2人 8,000円 (区分なし)
3人以上9人以下 7,200円 6,900円
10人以上19人以下 6,300円 5,200円
20人以上49人以下 4,800円 3,500円
50人以上 4,100円 3,000円

3人以上の区分にだけ月次の逓減が入り、1人または2人には日数区分がありません。旧コードの7,200円は、新しい体系では「3人以上9人以下・月20日目まで」に相当します。同じ7,200円でも、月21日目以降に3人以上9人以下で算定していた分は6,900円に下がる計算です。

4-2. 複数名精神科訪問看護加算

同時に訪問する相手の職種で3つに分かれます。

この加算全体に共通する条件がひとつあります。告示の注は「1及び3(いずれも30分未満の場合を除く。)については」と書き出しています。この「1及び3」は加算のイ・ロではなく、精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)と(Ⅲ)のことです。つまり基本療養費側で30分未満の区分を算定する場合、複数名精神科訪問看護加算はイ・ロ・ハのいずれも算定できません。ハだけ例外ということはありません。

イ 保健師・看護師・作業療法士と同時

同一建物内の人数 1日1回 1日2回 1日3回以上
1人又は2人 4,500円 9,000円 14,500円
3人以上9人以下 4,000円 8,100円 13,000円
10人以上19人以下 3,400円 6,880円 11,050円
20人以上49人以下 3,000円 6,070円 9,750円
50人以上 2,700円 5,460円 8,770円

ロ 准看護師と同時

同一建物内の人数 1日1回 1日2回 1日3回以上
1人又は2人 3,800円 7,600円 12,400円
3人以上9人以下 3,400円 6,800円 11,200円
10人以上19人以下 2,800円 5,600円 9,220円
20人以上49人以下 2,500円 5,000円 8,230円
50人以上 2,200円 4,400円 7,240円

ハ 看護補助者又は精神保健福祉士と同時(週1日限度)

同一建物内の人数 金額
1人又は2人 3,000円
3人以上9人以下 2,700円
10人以上19人以下 2,100円
20人以上49人以下 1,900円
50人以上 1,600円

ハだけは回数の区分がなく、その代わり週1日が限度です。

そしてこの加算の同一建物内の人数も、この加算だけを数えるのではありません。告示の注は「当該加算、区分番号01の注12に規定する複数名訪問看護加算又は区分番号04の包括型訪問看護療養費を算定する利用者(同一建物居住者に限る。)の合計人数に応じて」と定めています。加算ごとに数える母数が違うというのが、この改定でいちばん実務を消耗させる部分です。

建物ごとの人数を1か所間違えると、基本療養費(Ⅲ)・精神科複数回訪問加算・複数名精神科訪問看護加算・夜間早朝・深夜の5項目が同時にずれます。しかも母数の取り方は項目ごとに違います。ainaruでは請求代行のなかで、建物ごとの人数と算定区分の突合を月次で行っています。 訪問看護のレセプト請求代行について見る

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5. 精神科訪問看護の算定要件|20時間研修は4つの選択肢のひとつ

「精神科訪問看護は20時間の研修を受けた看護師でないとできない」と語られることがあります。通知を読むと、そうではありません。

保発0305第19号の第3の1は、こう定めています。

精神科訪問看護基本療養費を算定する場合には、次のいずれかに該当する精神疾患を有する者に対する看護について相当の経験を有する保健師、看護師、准看護師又は作業療法士(以下「保健師等」という。)が指定訪問看護を行うこと。

「次のいずれかに該当する」です。 具体的な4つの選択肢は、届出手続の通知である保医発0305第9号の第1に置かれています。

  1. 精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟又は精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者
  2. 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者
  3. 精神保健福祉センター又は保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有する者
  4. 国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する知識・技術の習得を目的とした20時間以上を要し、修了証が交付される研修を修了している者。

精神科病棟での勤務経験が1年以上ある看護師も、精神科訪問看護の経験が1年以上ある看護師も、保健所で精神保健の業務を1年以上経験した保健師も、それぞれ単独で要件を満たします。研修修了は4つ目の選択肢にすぎません。

5-1. 研修を選ぶなら「20時間以上」と「修了証」の両方が要る

一方で、(4)のルートを選ぶ場合の条件は思ったより細かく決まっています。

まず修了証が交付される研修に限られます。 時間数だけ満たしていても、修了を証する文書が出ない研修は要件を満たしません。届出の際に添付を求められるためです。

さらに通知は、研修が次の内容を含むものであると定めています。

ア 精神疾患を有する者に関するアセスメント イ 病状悪化の早期発見・危機介入 ウ 精神科薬物療法に関する援助 エ 医療継続の支援 オ 利用者との信頼関係構築、対人関係の援助 カ 日常生活の援助 キ 多職種との連携 ク GAF尺度による利用者の状態の評価方法

経過措置がひとつあります。令和2年3月31日までにこの研修を修了した者については、クのGAF尺度による評価方法を受講していなくても差し支えないとされています。古い修了証を持つ職員について、GAFの科目がないことを理由に要件を満たさないと判断する必要はありません。

5-2. 別紙様式1は職員ごとに書く

別紙様式1は、看護師等の氏名・職種・該当する経験や研修を個別に記載する構造です。ここが実務で効いてきます。

精神科訪問看護を担当する職員が入れ替われば、そのつど届出の内容が実態と合わなくなります。採用や退職のたびに変更の届出が必要になるという性質を、開設の時点で運用に組み込んでおく必要があります。

届出の管理をどう回すかは訪問看護の開業|事務とレセプト請求の体制で、届出と算定実績の突合が運営指導で確認される点は訪問看護の運営指導対策で扱っています。

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6. GAF尺度の記載場所と、精神科訪問看護指示書・精神科特別訪問看護指示書

精神科特別訪問看護指示書の14日の数え方と、レセプトの<精神特別指示期間>の書き方は、一般の特別訪問看護指示書と同じ構造です。特別訪問看護指示書|14日の数え方と月2回・レセプト記載に整理してあります。

6-1. GAFは3か所に書く

GAF尺度の記載について、保発0305第19号の第3の5はこう定めています。

精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)又は(Ⅲ)を算定する場合にあっては、訪問看護記録書、訪問看護報告書及び訪問看護療養費明細書に、月の初日の指定訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を記載する。

実務で見落とされやすいのが2点あります。

ひとつは記載場所が3か所だということ。訪問看護記録書と訪問看護報告書だけでなく、訪問看護療養費明細書つまりレセプトにも記載します。 記録には書いたがレセプトの記載が漏れた、という形の抜けが起こります。記録書・報告書・レセプトへの転記をどこまで分担できるかは訪問看護の書類作成代行はどこまで可能かで整理しました。

もうひとつは評価のタイミングです。「月1回」ではなく「月の初日の指定訪問看護時」と指定されています。その月の最初の訪問のときに判定した値を使うということです。

対象は(Ⅰ)と(Ⅲ)を算定する場合で、(Ⅳ)は含まれません。

6-2. 精神科訪問看護指示書は交付できる医師が限られる

精神科訪問看護は、一般の訪問看護指示書では算定できません。

一般の訪問看護指示書(別紙様式16)の側の要件——有効期間6か月、交付できる医師の範囲、令和8年6月の押印欄の変更——は訪問看護指示書とは|有効期間6か月・様式16と押印【R8.6】にまとめました。

その主治医(精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師に限る。)…精神科訪問看護指示書及び精神科訪問看護計画書に基づき…

引用箇所は同通知の第3の2(1)です。精神科を標榜していない医療機関の医師、あるいは精神科を担当していない医師からの指示書では要件を満たしません。

6-3. 精神科特別訪問看護指示書は月1回まで

急性増悪などで頻回の訪問が必要になったときに交付されるのが精神科特別訪問看護指示書です。

指定訪問看護を受けようとする者であって注4に規定する精神科特別訪問看護指示書が交付された者に対する指定訪問看護については、当該精神科特別訪問看護指示書の交付の日から起算して14日以内に行った場合は、月1回に限り、14日を限度として所定額を算定できる。

一般の特別訪問看護指示書には、気管カニューレを使用している状態や真皮を越える褥瘡の状態にある利用者について月2回まで交付できる例外があります。精神科特別訪問看護指示書にはこの例外がなく、月1回のみです。 名前が似ているので、一般側の感覚で月2回目を交付してもらうと算定できません。

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7. 精神科訪問看護の回数制限|週3日ルールと2つの例外

保発0305第19号の第3の2(2)はこう定めています。

利用者1人につき、精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)及び訪問看護基本療養費(1及び2のハに規定する専門の研修を受けた看護師の場合を除く。)を算定する日と合わせて週3日(当該利用者の退院後3月以内の期間において行われる場合は週5日)を限度とする。

(Ⅰ)と(Ⅲ)を通算した週3日です。同一建物だから別枠、一般の訪問看護だから別枠、という数え方はできません。あわせて押さえておきたいのは、これが日数の限度であって訪問回数の限度ではないことです。同じ日に2回訪問しても、消費するのは1日分です(複数回の訪問には別途、精神科複数回訪問加算の要件がかかります)。

例外が2つあります。

退院日から起算して3か月以内の期間は、週5日まで算定できます。退院直後の不安定な時期に頻回の訪問を入れられるようにするためのものです。この期間は退院支援指導加算の算定可否も同時に判断することになるので、訪問看護の退院支援指導加算|算定要件と長時間の扱いもあわせてご覧ください。

精神科特別訪問看護指示書が交付された場合は、交付の日から14日以内について日数の制限が外れます。ただし前章のとおり月1回・14日が限度です。

なお緊急の訪問については精神科緊急訪問看護加算があり、金額は3-5に掲載しています。

7-1. 精神科訪問看護の30分未満の算定要件

早見表のとおり、精神科訪問看護基本療養費には30分未満の区分があります。ただし無条件では算定できません。

30分未満の訪問については、当該利用者に短時間訪問の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合にのみ算定する。

第3の4です。指示書への明記が要件です。 短時間で回ったから30分未満の区分で算定する、という運用はできません。

あわせて、同一建物への訪問については第2の2(4)アに次の定めがあります。

訪問看護療養費を算定するに適切な時間の指定訪問看護を実施したうえで、それを訪問看護記録書に記載し算定すること。この場合の適切な時間の指定訪問看護とは、30分以上を標準とし、その取扱いは第4の2に示すとおりであり、少なくとも20分を下回らないこと。

同一建物で頻回・短時間の訪問がしやすい状況を踏まえた規定です。単に長時間の訪問を複数回に分けることは適切でない、という趣旨が同じ号の柱書きに書かれています。

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8. 精神科訪問看護基本療養費の届出と様式(別紙様式1・受理番号 訪看10)

精神科訪問看護で見落とされやすいのが、基本療養費そのものに届出が必要だという点です。加算ではなく基本療養費に届出が要る例は多くありません。

項目 様式 受理番号
精神科訪問看護基本療養費 別紙様式1 訪看10第○号
精神科複数回訪問加算 別紙様式5 訪看27第○号
精神科重症患者支援管理連携加算 別紙様式5 訪看28第○号
機能強化型訪問看護管理療養費1〜4 別紙様式6 訪看機1〜機4第○号

提出先は地方厚生(支)局長です。届出が受理された日と算定開始日の関係は一般の訪問看護と同じで、月末までに受理されればその翌月から算定できます。

届出を出さないまま算定していた事例は実際に記録が残っています。この点も含めて、届出の管理と算定の突合は訪問看護の加算算定漏れ|遡及請求の期限は医療5年・介護2年で扱いました。

8-1. 機能強化型訪問看護管理療養費4という選択肢

令和8年6月に新設された機能強化型訪問看護管理療養費4(月の初日9,030円)は、精神科訪問看護を行うステーションにとって現実的な選択肢になります。告示の施設基準にこう書かれているためです。

ニ 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者又は特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者に対する指定訪問看護について、及び精神障害を有する者のうち、重点的な支援を要する者に対する指定訪問看護について相当な実績を有すること。

この「相当な実績」の中身は、届出手続の通知である保医発0305第9号の第6(4)に置かれています。数値要件は次のとおりです。

4区分の比較、3と4のどちらを取るかの判断、届出の受理タイミングまでは機能強化型訪問看護管理療養費|4の新設と要件・届出にまとめました。

  • 常勤の看護職員が4人以上(サテライトに配置している看護職員を含む。常勤職員のみで数える)
  • 特掲診療料の施設基準等別表第七に規定する疾病等の利用者または別表第八に掲げる者が月に3人以上
  • 1年以上の入院歴を有する者または入退院を繰り返す者で、かつGAF尺度が40以下の者、あるいは精神科重症患者支援管理連携加算を算定する利用者が月に7人以上

ここで要件に出てくる別表第七・別表第八の中身(全項目・全号とレセプトの「心身の状態」欄のコード)は、訪問看護の別表7・別表8の記事にまとめています。

届出は別紙様式6です。24時間対応体制加算の届出も前提になります。GAF40以下という条件が入っている以上、GAFの評価と記録が届出要件そのものに直結しているということでもあります。

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9. よくある質問

Q1. 精神科複数回訪問加算の「1日3回以上」は廃止されたのですか。

廃止されていません。廃止されたのは「同一建物内3人以上」という粗い一括区分のマスターコード1本で、区分自体は人数5段階に細分化され、さらに月20日目までと月21日目以降の逓減が加わりました。

Q2. 20時間の研修を受けていない看護師は、精神科訪問看護を担当できないのですか。

そうとは限りません。通知は4つの要件を挙げ「次のいずれかに該当する」としています。精神科病棟または精神科外来での勤務経験1年以上、精神疾患を有する者への訪問看護の経験1年以上、精神保健福祉センターまたは保健所等での精神保健業務の経験1年以上のいずれかでも要件を満たします。研修修了は4つ目の選択肢です。

Q3. 同じ建物に精神科の利用者が3人しかいなければ、「3人以上9人以下」の区分でよいですか。

いいえ。同一日に同じ建物で訪問看護基本療養費を算定する利用者、精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者、包括型訪問看護療養費を算定する利用者を合算した人数で判定します。精神科3人でも一般が8人いれば合計11人となり、「10人以上19人以下」の区分になって日数の数え方も週から月に変わります。

Q4. 訪問時間が20分だったので、30分未満の区分で算定してよいですか。

短時間訪問の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合に限られます。指示書に記載がなければ、実際の訪問が短かったことを理由に30分未満の区分を選ぶことはできません。

Q5. 精神科特別訪問看護指示書は月に2回もらえますか。

もらえません。一般の特別訪問看護指示書には対象者によって月2回の例外がありますが、精神科特別訪問看護指示書は月1回に限られます。

Q6. 週3日というのは、週に3回までという意味ですか。

日数の限度です。同じ日に2回訪問しても消費するのは1日分になります。ただし1日に複数回訪問して精神科複数回訪問加算を算定するには、医療機関側で精神科在宅患者支援管理料が算定されていることなどの別の要件があります。

Q7. 家族への訪問だけを行った日は算定できますか。

条文の対象は「精神疾患を有する者又はその家族等」です。ただし家族等のみへの訪問だけを行った日の取扱いを明示した規定は、令和8年版の保発0305第19号の第3には見当たりませんでした。実際の運用は提出先の地方厚生(支)局にご確認ください。

Q8. 基本療養費に届出が必要というのは本当ですか。

本当です。精神科訪問看護基本療養費は別紙様式1で地方厚生(支)局長に届け出ます(受理番号 訪看10第○号)。届出をしないまま算定することはできません。

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10. 精神科訪問看護の請求で毎月確認する9項目

精神科訪問看護の請求は、一般の訪問看護と比べて判断すべき箇所が単純に多くなります。ひとつひとつは難しくありません。ただ、これを利用者ごとに毎月まちがえずに積み上げる作業になると話が変わります。

月次で確認する項目を並べておきます。印刷して使えるように、順番は請求の作業手順に合わせました。

  • □ その日その建物で、一般・精神科・包括型を合算して何人を訪問したか(→2-2
  • □ 人数区分は9人以下か10人以上か。10人以上なら日数はで数える(→2章
  • □ 月の何日目か。境目は項目によって14日目・15日目・20日目・24日目と違う(→2-1
  • □ 担当したのは保健師・看護師・作業療法士か、准看護師か(→3章
  • □ 訪問時間は30分以上か。30分未満なら指示書に明記があるか(→7-1
  • □ GAFの値を訪問看護記録書・訪問看護報告書・レセプトの3か所に書いたか(→6-1
  • □ 指示書は精神科訪問看護指示書か。交付元は精神科を標榜する医療機関か(→6-2
  • □ 精神科特別訪問看護指示書は今月すでに使っていないか(→6-3
  • □ 週3日の枠は、退院後3か月の例外にあたるか(→7章

令和8年6月から人数区分が増え、月内で単価が変わる建物が生まれました。高齢者向け住まいに併設・隣接するステーションであれば、同じ改定で新設された包括型訪問看護療養費の対象にもなり得ます。包括型の区分と要件、精神科以外の加算も含めた全体像は訪問看護の加算一覧・早見表で扱いました。

ainaruは訪問看護の請求事務と書類作成を代行しています。精神科訪問看護についても、建物ごとの人数と算定区分の突合、GAFの記載漏れの確認、指示書の期限管理を含めてお引き受けできます。現在の請求業務の状況をお聞かせいただければ、どこまで外に出せるかをお伝えします。

精神科訪問看護の請求代行を相談する(オンライン・費用は事前提示)

返戻が出たときの読み方と再請求の手順は訪問看護のレセプト返戻|原因と再請求の手順にまとめています。


この記事で確認しきれなかった点

一次資料で裏が取れなかった箇所を明示します。以下は提出先の地方厚生(支)局または交付元の医療機関にご確認ください。

  • 精神科訪問看護指示書の有効期間 — 保発0305第19号が「6か月を限度」と定めているのは一般の訪問看護指示書(第2の1(1))です。精神科訪問看護指示書の有効期間を明示した規定は同通知内に見当たりませんでした
  • 訪問看護指示書と精神科訪問看護指示書を同時に交付できるか — 明示した規定を確認できていません
  • 家族等のみへの訪問を行った日の算定 — 対象に家族等が含まれることは条文上明らかですが、家族等のみの訪問の取扱いを明示した規定は見当たりませんでした
  • 要件を満たさない保健師等が訪問した日、GAFの記載を欠いた場合の請求上の取扱い — 明示した通知・疑義解釈が見つかりませんでした
  • 自立支援医療(上限額管理票・公費併用)の実務 — 本記事の範囲外としています

また、精神科訪問看護基本療養費・精神科複数回訪問加算・複数名精神科訪問看護加算・夜間早朝/深夜訪問看護加算・精神科緊急訪問看護加算の金額は、告示の現行条文と訪問看護療養費マスターの変更点の2系統で1セルずつ照合しています。2系統照合が担保するのは金額であって条文の解釈ではないため、判断に迷う場合は必ず原文をご確認ください。


参考・出典一覧

厚生労働省

地方厚生局