退院支援指導加算で実務が混乱しやすいのは、金額でも要件でもなく「いつ算定するか」です。指導を行うのは退院日。しかしレセプトに載せるのは、退院日の翌日以降に行った初回の訪問看護の日。実施した日と算定する日がズレることが、この加算の建付けそのものだからです。

もう一つ、知られていない規定があります。初回訪問の前に利用者が亡くなった、あるいは再入院した場合。訪問看護は一度も行っていないのに、この加算だけを単独で算定できます。退院日の指導という仕事は実際に発生しているからです。

金額は6,000円、長時間の指導なら8,400円。令和8年6月の改定でも金額・要件は変わっていません。この記事では、算定日の考え方、対象者の範囲、8,400円の要件、そして名前の似た加算との区別までを、告示・通知の原文にあたって整理しました。

急ぎの方へ

いまの状況 進む先
要件と金額を確認したい 1章 要件と金額
レセプトのどの日付で算定するか知りたい 2章 算定日はいつか
初回訪問の前に死亡・再入院してしまった 2章 単独算定
この利用者は対象になるのか知りたい 3章 対象者
8,400円で算定できる条件を知りたい 4章 長時間の要件
退院時共同指導加算との違いが分からない 5章 似た名前の加算
介護保険の利用者に算定できるか 6章 介護保険利用者の退院日
記録に何を残すか・レセプトの注意点 7章 実務の注意点

1. 退院支援指導加算とは — 要件と金額

退院支援指導加算は、医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)の加算です。入院していた利用者が退院する日に、訪問看護ステーションの看護師等が自宅などで療養上必要な指導を行ったことを評価します。訪問看護管理療養費への加算という位置づけです。

項目 内容
金額 6,000円(長時間の指導は8,400円。4章
誰が 訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く
いつ 退院日当日
どこで 退院した医療機関以外の場所(自宅など)
前提 利用者の退院時に訪問看護指示書の交付を受けていること
回数 1人の利用者につき1つのステーションのみ

告示の注は次のとおりです(訪問看護療養費の算定告示・訪問看護管理療養費の注7)。

指定訪問看護を受けようとする者が、退院支援指導を要する者として別に厚生労働大臣が定める者に該当する場合に、保険医療機関から退院するに当たって、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く。)が、退院日に当該保険医療機関以外において療養上必要な指導を行ったときには、退院支援指導加算として、退院日の翌日以降初日の指定訪問看護が行われた際に6,000円(〔中略〕長時間にわたる療養上必要な指導を行ったときにあっては、8,400円)を所定額に加算する。ただし、当該者が退院日の翌日以降初日の指定訪問看護が行われる前に死亡又は再入院した場合においては、死亡日又は再入院することとなったときに算定する。

なぜ「加算」なのか。退院日の指導は指定訪問看護として行うものではなく、基本療養費の対象になりません。告示も「退院日の翌日以降初日の指定訪問看護」に乗せて加算する建付けです。これが次章の「算定日のズレ」を生んでいます。

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2. 算定日はいつか — 指導は退院日、算定は初回訪問日

【図版1】実施日と算定日のズレのタイムライン図(下表の3パターンを時系列で図解)

パターン 指導を行う日 レセプトで算定する日
通常 退院日 退院日の翌日以降、初回の訪問看護を行った日
月またぎ(例:7月31日退院、8月2日初回訪問) 7月31日 8月2日(8月分レセプト)
初回訪問の前に死亡・再入院 退院日 死亡日または再入院することとなった日

留意事項通知は「初日の指定訪問看護の実施日に1回に限り訪問看護管理療養費に加算する」と定め、さらに「訪問看護管理療養費を算定する月の前月に退院支援指導を行った場合においても算定できる」と月またぎを明文で認めています。月末の退院で指導と初回訪問の月が分かれても、諦める必要はありません。算定するのは初回訪問の月です。

初回訪問前に死亡・再入院した場合 — 加算のみ単独算定

告示のただし書きが「死亡日又は再入院することとなったときに算定する」と定めており、令和8年版の留意事項通知の通則にも、初回訪問前に死亡・再入院した場合に限り「当該加算のみを算定することができる」と明記されています。訪問看護を一度も提供していない月に、加算だけのレセプトが立つ例外的な形です。月内に退院と再入院を繰り返した場合も、それぞれの退院について要件を満たせば算定できるとする整理があります(熊本県看護協会Q&A)。

見落としやすいのが、死亡ケースでの訪問看護ターミナルケア療養費(25,000円)との関係です。ターミナルケア療養費の要件は「死亡日及び死亡日前14日以内の計15日間」に訪問看護基本療養費・精神科訪問看護基本療養費又は退院支援指導加算のいずれかを合わせて2回以上算定していること。つまり退院支援指導加算はこの回数に数えられます(1回を退院支援指導加算とする場合は、退院日にターミナルケアに係る療養上必要な指導を行っていることが条件)。入院前に訪問実績のある利用者が退院日の指導後に亡くなった場合、加算の単独算定だけで処理するとターミナルケア療養費を取りこぼす可能性があります。15日間の数え方や1・2どちらの区分になるかの判定など、算定要件の詳細は訪問看護ターミナルケア療養費の記事で整理しています。

なお、単独算定時のレセプト(明細書)の具体的な記載方法は、請求ソフトや審査支払機関の案内に従ってください。訪問実績のない月の請求という例外形のため、摘要欄の書き方等は事前に確認しておくと差し戻しを防げます。ainaruではこうした日付と保険種別で答えが変わる算定判断を、レセプト代行の中で確認しています(サービス案内)。

医療保険と介護保険の加算を横断して確認したい場合は、訪問看護の加算一覧・早見表に金額と届出の要否をまとめています。

開設したばかりの事業所では、その前段として届出そのものが受理されているかの確認が要ります。医療保険と介護保険で提出先も期限も違う届出の整理は、訪問看護の開業と事務・請求体制の記事にまとめました。

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3. 対象者 — 別表該当者に限られない

対象は「退院支援指導を要する者」で、基準告示が3つの類型を定めています。

退院日に療養上の退院支援指導が必要な利用者であって、次のいずれかに該当するもの (1) 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者 (2) 特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者 (3) 退院日の訪問看護が必要であると認められた者

(1)は末期の悪性腫瘍や難病等、(2)は気管カニューレや在宅酸素、真皮を越える褥瘡など、医療管理が必要な状態の利用者です。見落とされやすいのは(3)で、これは受け皿の規定です。別表に該当しなくても、退院日の訪問看護が必要と認められれば対象になります。解説記事のなかには対象を別表該当者に限定して読める書き方のものも見られますが、告示は3つ目の類型を明記しています。主治医が退院日の指導の必要性を認め、指示書が交付されているなら、別表非該当だけを理由に対象外と判断するのは早計です。

対象かどうかの判断で迷いやすい別表第八の範囲は、特別管理加算の記事で扱った対象者リストと同じ告示を参照します。

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4. 長時間の8,400円 — 「90分超」と対象者の3類型

8,400円で算定できるのは、次の2つを両方満たした場合です。

条件1:時間。 「1回の退院支援指導の時間が90分を超えた場合又は複数回の退院支援指導の合計時間が90分を超えた場合」(留意事項通知)。90分ちょうどでは足りません。「以上」ではなく「超」です。また、退院日のうちに複数回に分けて指導した場合は合計時間で判定できます。

条件2:対象者。 「長時間の訪問を要する者」として基準告示が定める3類型のいずれかに該当すること。

イ 十五歳未満の超重症児又は準超重症児 ロ 特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者 ハ 特別訪問看護指示書又は精神科特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者

つまり、90分を超えて指導しても、対象者の類型に該当しなければ6,000円のままです。逆に、別表第八該当者への指導が結果的に90分を超えたのに6,000円で請求しているなら、2,400円分を取りこぼしています。加算の取りこぼし全般の点検方法は加算算定漏れの記事にまとめています。

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5. 名前が似た4つの制度 — 取り違えると請求を誤る

「退院」と「指導」が付く制度は複数あり、取り違えがそのまま請求誤りになります。先に整理表を置きます。

名称 保険 金額 いつ・どこで
退院支援指導加算(本記事) 医療 6,000円/8,400円 退院日に在宅で指導
退院時共同指導加算 医療 8,000円 退院前に入院先で病院側と共同指導+文書提供
特別管理指導加算 医療 2,000円 上の退院時共同指導加算への上乗せ(特別な管理を要する者)
退院時共同指導加算 介護 600単位 退院前の共同指導(介護保険の訪問看護費)

医療保険の退院時共同指導加算(8,000円)とは、実施のタイミングと場所が違います。あちらは退院前・入院先での共同指導、こちらは退院日・在宅での指導。別の仕事の評価なので、それぞれの要件を満たせば同一利用者への算定は妨げられないと解されています(併算定の可否を正面から定めた通知の文言は確認できていないため、初回のケースでは審査支払機関または保険者への確認をおすすめします)。

介護保険にも「退院時共同指導加算」(600単位)がありますが、介護保険に退院支援指導加算に相当する加算はありません。退院日の指導を評価する仕組みは医療保険だけです。介護保険側の退院前後の評価は、初回加算と退院時共同指導加算の択一で、初回加算の記事で整理しています。

表中の特別管理指導加算は、名前が一字違いの特別管理加算(月額の管理加算)とは別の加算です。特別管理加算のほうは別記事で解説しています。

もう一つ、検索で混ざりやすいのが「入退院支援加算」です。これは病院側が算定する医科診療報酬(A246)で、訪問看護ステーションの報酬ではありません。病院の地域連携室から聞いた加算名で調べると別物に行き着くので、名前の確認から始めてください。

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6. 介護保険の利用者に算定できるか

この加算は医療保険の訪問看護管理療養費に乗せるものなので、算定が成立するのは、退院日の翌日以降の初回訪問が医療保険の指定訪問看護として行われる場合です。

普段は介護保険で訪問している利用者でも、退院の場面では医療保険に乗ることがあります。

医療保険に乗るルート 内容 退院支援指導加算
特別訪問看護指示書の交付 交付の日から起算して14日以内は医療保険の訪問看護 算定できる
別表第七該当(末期の悪性腫瘍・難病等) 該当する間は医療保険の訪問看護 算定できる
精神科訪問看護指示書 精神科訪問看護は医療保険で行われる 算定できる

典型は特別訪問看護指示書のケースです。退院時に交付を受け、退院日に指導を行い、翌日以降の初回訪問を医療保険で開始すれば、退院支援指導加算を算定できます。

精神科訪問看護のケースでは、退院直後にもうひとつ効いてくる規定があります。精神科訪問看護は週3日が限度ですが、退院日から起算して3か月以内は週5日まで算定できます。退院支援指導加算の判断と同じタイミングで確認しておくと訪問計画が組みやすくなります。詳しくは精神科訪問看護基本療養費|令和8年6月改定の区分と算定要件をご覧ください。

逆に、退院後も純粋に介護保険の訪問看護だけで再開する場合は、加算を乗せる管理療養費が発生しないため、算定は成立しないと考えられます(この点を正面から定めた通知は確認できなかったため、迷うケースは審査支払機関にご確認ください)。

なお、特別指示書で医療保険に乗った利用者が介護保険に戻るとき、介護保険の初回加算は「過去2月に医療保険の訪問看護を含む」という理由で算定できません。退院前後の加算は保険をまたいで連動しています。この連動は初回加算の記事の3章で書きました。

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7. 実務の注意点 — 記録・レセプト・複数ステーション

記録は義務です。 留意事項通知は「退院支援指導を行った場合は、その内容を訪問看護記録書に記録すること」と定めています。指導した日付・時間(8,400円なら90分超の根拠になる開始・終了時刻)・内容を記録書に残してください。運営指導・個別指導で加算の算定根拠として確認され得る書類です。書類同士の突合という観点は運営指導対策の記事で全体像を書きました。

算定できるのは1つのステーションだけ。 複数のステーションが関わる利用者でも、この加算は「1人の利用者に対し、1つの訪問看護ステーションにおいてのみ」です。どこが算定するかは退院前に決めておくと、請求段階の調整がなくなります。ただし、入院していた病院の看護師等が行う退院日の訪問指導との併算定は認められています。病院側が退院日に来る場合でも、ステーション側の算定は別枠です。

退院カンファレンスの場で確認しておくことが2つあります。一つは指示書です。算定の前提は「利用者の退院時に訪問看護指示書の交付を受けている場合」なので、交付日が退院日より後になっているとこの前提を欠きます。交付タイミングを主治医側と確認してください。もう一つは、その日が退院日か外泊か。試験外泊(1泊2日以上)で帰宅した日の訪問は訪問看護基本療養費(Ⅲ)の別評価で、本加算の対象ではありません。外泊を挟んで退院する利用者では、退院日を取り違えないでください。

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8. よくある質問

Q1. 退院日に准看護師が指導しました。算定できますか。

できません。告示が「看護師等(准看護師を除く。)」と定めています。

Q2. 精神科訪問看護の利用者にも算定できますか。

できます。加算が乗る訪問看護管理療養費は、精神科訪問看護基本療養費の利用者にも共通です。長時間の8,400円の対象類型にも精神科特別訪問看護指示書が明記されています(4章)。

Q2の2. 退院日に電話やオンラインで指導した場合は算定できますか。

告示は「退院日に当該保険医療機関以外において療養上必要な指導を行ったとき」、通知は「在宅での療養上必要な指導」としており、訪問による指導を前提とした書きぶりです。オンラインで足りるとする明文は確認できなかったため、訪問以外の方法を検討する場合は審査支払機関にご確認ください。

Q3. 月末に退院して、初回訪問が翌月になりました。どちらの月で算定しますか。

初回訪問の月です。留意事項通知が、算定する月の前月に指導を行った場合の算定を明文で認めています(2章)。

Q4. 指導を2回に分けて合計100分になりました。8,400円になりますか。

時間の条件は満たします。複数回の合計が90分を超えているためです。ただし8,400円にはもう一つ、対象者が3類型(15歳未満の超重症児等・別表第八・特別指示書等)に該当する条件があります(4章)。両方を確認してください。

Q5. 退院日の指導のあと、初回訪問の前に利用者が再入院しました。請求はどうなりますか。

再入院することとなった日に、退院支援指導加算のみを単独で算定します(2章)。訪問看護の実績がない月でも算定できる、告示のただし書きに基づく取り扱いです。

Q6. 病院の看護師も退院日に自宅へ来ます。うちのステーションの加算はどうなりますか。

算定できます。入院医療機関の看護師等が行う退院日の訪問指導との併算定は、通知が明文で認めています(7章)。

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9. 退院日の6,000円と、その周りの確認仕事

退院支援指導加算そのものはシンプルな加算です。手間がかかるのはその周辺で、算定日のズレの管理、月またぎのレセプト処理、8,400円の時間根拠の記録、退院時共同指導加算との整理、介護保険利用者なら保険切り替えの判定までが一続きの確認になります。退院のたびにこれが発生し、誤ると返戻・過誤対応が上乗せされます。

株式会社ainaruは、訪問看護ステーションのレセプト請求・加算算定チェック・書類作成支援を行う介護BPOサービスを提供しています。退院前後の算定判断のような「日付と保険種別で答えが変わる確認仕事」を外に出したい事業所は、サービス案内をご覧ください。加算全体の取りこぼし点検は加算算定漏れの記事もどうぞ。


ご利用にあたって

本記事は令和8年(2026年)8月時点の告示・通知・公開資料に基づいて作成しています。診療報酬・訪問看護療養費は改定で変わります。実際の算定にあたっては、必ず最新の告示・留意事項通知と、審査支払機関・保険者の案内をご確認ください。個別のケースの算定可否は、地方厚生局または審査支払機関にご確認いただくのが確実です。

参考・出典一覧

厚生労働省

地方厚生局・団体