「運営指導のお知らせ」という封筒が届いた。開くと、日時と、準備しておく書類の一覧。ここから当日まで、何をどの順番でやるか——この記事はそのための整理です。

先に、あまり知られていない数字を一つ。運営指導は「指定の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上」が原則ですが、令和5年度に実際に運営指導を受けた訪問看護事業所は所管15,934か所のうち2,123か所、13.3%でした。単純計算で、6年間でも一巡しない水準です。来る頻度が低いからこそ、来たときには「前回の記憶がない」状態で迎えることになります。

もう一つ。訪問看護には、指導が2系統あります。 介護保険の「運営指導」(自治体)と、医療保険の「指導・監査」(地方厚生局)。準備期間は前者がおおむね1か月、後者は1週間から10日。別の制度なのに同じ「指導」と呼ぶため、混同したまま準備すると空振りします。この記事は両方を1本で扱います。

急ぎの方へ

いまの状況 進む先
自治体から運営指導の通知が来た 1章 最初に確認する3つ3章 段取りと当日4章 書類
地方厚生局から通知が来た(医療保険) 6章 医療保険の指導・監査
何を見られるのか知りたい 4章 確認される書類5章 指摘されるのは突合
指摘を受けてしまった 7章 指摘を受けた後
平時の備えを整えたい 8章 平時の点検の回し方
集団指導の案内が来た 9章 よくある質問

1. 通知が届いたら最初に確認する3つのこと

① 差出人はどこか。 ここで読む章が変わります。

差出人 制度 呼び方 この記事で読む章
都道府県・市区町村(自治体) 介護保険 運営指導(旧:実地指導) 2章5章
地方厚生局・都道府県(連名含む) 医療保険 個別指導・監査 6章

訪問看護は介護保険と医療保険の両方で仕事をしているので、指導も2系統あります。名前が似ているだけで、根拠も実施主体も準備期間も別物です。

② 当日まで何日あるか。 介護保険の運営指導は「実施予定日のおおむね1月以上前まで」に通知することとされています(厚生労働省の運営指導マニュアル)。一方、医療保険の指導・監査の通知は「実施日の概ね1週間から10日前」。医療保険のほうが圧倒的に短い。厚生局からの封筒だったら、読み終えたその日から進めてください。

③ 通知に何が書いてあるか。 介護保険の通知には、根拠規定と目的、日時・場所、指導担当者、出席者、準備すべき書類等、当日の進め方が記載されます。つまり、何を見られるかは通知に書いてあります。 対策の第一歩は、通知に列挙された書類を机に並べることです。網羅的なチェックリストを探しに行くのはその後で構いません。

この章の出典


2. 運営指導とは何か — 旧「実地指導」との関係と、監査との違い

運営指導は、介護保険法に基づいて自治体が行う指導の一つです。以前は「実地指導」と呼ばれていました。名称が変わった理由を、厚生労働省のマニュアルはこう書いています。

この指導はこれまで実地指導としてきましたが、後述するように、今後は実地で行わない場合もあることから、運営指導と名称を改めたところです。
(介護保険施設等運営指導マニュアル・令和4年3月版)

つまり令和4年度からの呼称で、中身の骨格は実地指導と連続しています。検索するときも書類を探すときも、古い資料は「実地指導」の名前で出てくるので、同じものを指していると考えて差し支えありません。

指導の中身は3つに分かれます。

区分 見るもの オンライン実施
① 介護サービスの実施状況指導 サービスの質(計画・記録・提供内容) 実地で実施
② 最低基準等運営体制指導 人員・設備・運営の基準を満たす体制 可能な場合あり
③ 報酬請求指導 請求が算定基準どおりか 可能な場合あり

②と③は「実地でなくても確認できる内容」についてオンライン等の活用が認められています。名称変更の理由がここにつながっています。

頻度は「原則として指定又は許可の有効期間内に少なくとも1回以上」。訪問看護の指定有効期間は6年なので、6年に1回以上が建前です。ただし冒頭のとおり、令和5年度の実施率は全国16.1%、訪問看護は13.3%。すべての事業所を毎年見て回る体制には、自治体側もなっていません。数年に一度、まとめて確認される。この距離感が実態です。

監査とは別物です。運営指導が「支援・育成」を目的とした行政指導であるのに対し、監査は、基準違反や不正請求、高齢者虐待などの疑いがあるときに事実関係を確認する手続きで、勧告・命令、指定の効力停止や取消といった行政処分につながります。運営指導の途中で不正の疑いが見つかれば、監査に切り替わることもあります。令和5年度の全国実績では、監査が1,120件、指定取消・効力停止の処分は計139件でした。

この章の出典


3. 通知から改善報告まで — 段取りと当日の流れ

先に断っておくと、当日の所要時間や結果通知の期限に、全国一律の決まりはありません。 国のマニュアルが定めているのは骨格までで、具体的な運用は自治体ごとに違います。以下、全国共通の部分と自治体の運用例を分けて書きます。

段階 何が起きるか 全国共通か
通知 実施予定日のおおむね1月以上前までに文書で届く。準備書類の一覧つき 共通の原則
事前提出 資料を先に出させる自治体がある(例:大阪府は介護保険施設向けの案内で、実施日の1週間前までにメール提出) 自治体運用
当日 関係書類をもとに説明を求められる面談方式。終了時に講評と、指摘・過誤調整がある場合の流れの説明 方式は共通
結果通知 文書で届く(例:前橋市は約2か月後まで) 期限は自治体差
改善報告 指摘事項への改善内容を期限までに文書で報告(例:前橋市は結果通知からおおむね1か月) 枠組みは共通

通知が来てからの1か月は、こう配分するのが現実的です。最初の1週間で、通知の書類一覧と手元の書類を突き合わせ、欠けているものに印を付ける。2〜3週目は5章のペア表を使って、書類同士の突合を対象期間分。最終週は不整合の事実整理と様式の是正、事前提出、当日の出席者決めに充てます。報酬の誤りに気づいた場合の扱いは7章へ。

当日の実務(進行と受け答え)

当日は、関係書類をもとに説明を求められる面談方式です。進行の例として前橋市は、職員紹介、事業所内の見学、資料確認、行政側での整理、講評という流れを案内しています(自治体例)。終了時にはその場で、良かった点と、指摘事項や過誤調整がある場合の今後の流れが伝えられます。

出席者は通知の「出席者」欄に従うのが第一です。そのうえで、管理者に加えて、記録と請求をその場で説明できる担当を決めておくと、確認のたびに中断せずに済みます。書類を原本で示すかコピーを渡すか、電子記録を画面で見せてよいかは自治体により扱いが異なるので、通知に明記がなければ事前に確認を。電子記録なら閲覧用の端末とログインを用意しておきます。記録そのものの書き方と、医療保険で必須になる訪問時間・訪問職種の扱いは訪問看護記録書の書き方|Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違いと記入例【R8.6】にまとめました。

受け答えの原則は3つ。事実だけを答える。推測で答えない。即答できないことは「確認して後日回答します」で構いません。また、確認文書以外の書類は原則求められない建付けなので(4章)、聞かれていない書類を先回りして差し出す必要もありません。

なお、緊急に状況確認が必要な場合には、事前通知なしに、開始時に文書で通知する形の運営指導が認められています。高齢者虐待や不正の疑いがある場合に行われるのは、運営指導ではなく無通告の監査です。通知が来てから慌てて書類を「作る」のではなく、日頃から揃っている状態にしておく。結局これが一番の対策で、その回し方は8章に書きました。

この章の出典


4. 当日確認される書類 — 標準確認文書の一覧

見られる書類は、マニュアルの別添1「確認項目及び確認文書」に訪問看護の標準として整理されています。指導指針では、確認項目以外の項目は特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則求めないこととされています。つまり、際限なく何でも見られるわけではありません。範囲は決まっています。

量にも目安があります。利用者ごとの記録を確認する対象は「特に必要と判断する場合を除き、対象は原則として3名以内」。全利用者分の記録を徹夜で印刷して備える必要はありません。

サービスの質に関する書類(実施状況指導)

確認されること 対応する書類
説明と同意の手続 重要事項説明書、利用契約書
心身の状況等の把握・連携 サービス担当者会議の記録
ケアプランに沿った提供 居宅サービス計画、サービス提供記録
計画書・報告書の作成 訪問看護計画書、訪問看護報告書、アセスメント・モニタリングの記録
身体的拘束等の記録(行った場合) 態様・時間・利用者の心身の状況・理由の記録

体制に関する書類(運営体制指導)

確認されること 対応する書類
人員基準(常勤換算2.5人以上など) 勤務実績表・タイムカード、勤務体制一覧表、資格証
管理者の配置 雇用形態が分かる文書
利用料の受領 請求書、領収書
運営規程・緊急時対応 運営規程、緊急時対応マニュアル
業務継続計画(BCP) 計画本体、研修・訓練の記録
感染症対策 委員会記録、指針、研修・訓練の記録
虐待の防止 委員会の開催記録、指針、研修記録、担当者の設置
秘密保持・個人情報 個人情報同意書、従業者の誓約書
苦情・事故への対応 苦情受付簿、事故報告の記録、ヒヤリハット

太字にした2つは近年の重点です。BCPと虐待防止の体制整備は令和3年度改定で義務化され、令和6年度改定で未整備の場合の減算が設けられました。訪問看護への適用が始まった時期は2つで違い、高齢者虐待防止措置未実施減算が令和6年6月1日、業務継続計画未策定減算は経過措置を経て令和7年4月1日からです。どちらも所定単位数の1%が利用者全員に掛かります(→BCP未策定減算・虐待防止減算の記事)。身体的拘束についても、緊急やむを得ない場合を除き行ってはならないこと、行った場合はその態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録することが基準省令に定められており、現行の確認項目にはこの記録の確認が追加されています。ここは整備の優先度を上げてください。

公費併用の利用者がいる場合は、自立支援医療の自己負担上限額管理票への記載も記録のひとつになります。管理票は利用者の持ち物なので、自ステーションの記載を写しで残しておかないと、取扱いの根拠を問われたときに説明できません。→訪問看護の自立支援医療|上限額管理票の記入と公費の優先順位

報酬請求(③の区分)については、加算の名前がついた「専用書類」が確認文書に並んでいるわけではありません。請求の正しさは、上の表の書類と請求内容との突き合わせで確認されます。それが次章の話です。

この章の出典


5. 指摘されるのは書類の「有無」ではなく「突合」です

書類が一式そろっていても指摘は出ます。都道府県が公表している指摘事例を読むと、指摘の中心は書類単体の不備ではなく、書類と書類のズレだからです。

東京都が令和7年度の集団指導資料で挙げている指摘事例には、こういう項目が並びます。「指示書の日付がサービス提供開始日より後の日付になっていた。」「指示書とサービス提供の内容が異なっている。」「訪問看護計画書が居宅サービス計画、医師の指示書と相違している。」。どれも、書類はある。ただ、別の書類と突き合わせると合わない

この3つは、令和5年度版から書き換わったものです。旧版は「サービス提供開始後に、主治医からの指示書の交付を受けていた」「訪問看護の内容が主治医の指示書の内容と相違している」「訪問看護計画書が、居宅サービス計画の内容と相違している」でした。指示書は「交付を受けたか」から「日付が提供開始日より後になっていないか」へ、計画書は照合先に医師の指示書が加わりました。見られる粒度が上がっています。計画書・報告書に絞った指摘事例と最新の指導のポイントは訪問看護計画書・報告書の書き方にまとめました(こちらも「内容が不十分」が消え、「訪問看護計画への利用者の同意が確認できない」に入れ替わっています)。

当日に照合されやすいペアを一覧にします。自己点検もこの形でやるのが効率的です。

指示書まわりでは、特別訪問看護指示書の指示期間と訪問日、記録書に書いた「頻回の訪問が必要な理由」の整合がよく見られます。受領時のチェック項目は特別訪問看護指示書|14日の数え方と月2回・レセプト記載にまとめました。

照合されるペア 見られるズレ
指示書の交付日 ↔︎ サービス提供開始日 指示より先にサービスが始まっていないか
指示書の内容 ↔︎ 計画書・提供記録 指示にない内容を提供していないか
訪問看護計画書 ↔︎ 居宅サービス計画 計画同士が食い違っていないか
提供記録の時間 ↔︎ 計画・請求 実際の提供時間で記録しているか
タイムカード ↔︎ 勤務体制一覧表 ↔︎ 常勤換算 人員基準(2.5人)の計算根拠が崩れていないか
加算の要件記録 ↔︎ 請求 算定している加算の根拠が記録に残っているか

最後の行は自治体の指摘でも定番です。和歌山県の集団指導資料では、緊急時訪問看護加算について利用者・家族への説明と同意の記録が不明確、特別管理加算について計画的な管理の内容が計画書に明記されていない、といった指摘が挙げられています。加算ごとの要件と記録の対応は「緊急訪問看護加算の記事」「特別管理加算の記事」で個別に整理しています。

減算側も同じ構造です。同一建物減算のように判定の材料が複数の書類に分散しているものは、突合そのものが月次業務になります。数え方は「訪問看護の同一建物減算の記事」に。

この章の出典


6. 医療保険の指導・監査 — 運営指導とは別制度です

ここまでは介護保険の話でした。地方厚生局から通知が来たら、それは別の制度です。 医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)に対する指導・監査で、令和7年4月3日に大綱が改正された領域です。介護保険との違いを先に表で(1章の判別表の詳細版です)。

介護保険:運営指導 医療保険:個別指導・監査
実施主体 都道府県・市区町村 地方厚生局・都道府県
事前通知 おおむね1月以上前 概ね1週間から10日前
対象資料 標準確認文書(4章) 指導月以前の連続2か月分の訪問看護療養費請求書と関係書類
方式 面談方式 面接懇談方式
指導後の措置 改善指導・過誤調整 概ね妥当/経過観察/再指導/要監査
返還 自主点検のうえ過誤調整(監査で不正認定なら返還+加算金。7章 自主返還は原則として指導月前1年以上、監査では原則5年

押さえておきたいのが個別指導の選定基準です。令和7年の改正で、訪問看護療養費請求書の1件当たり平均額が高いステーションを「高い順に」選定することが明記されました(取扱件数の少ないステーションは除きます)。算出データは支払基金と国保連のレセプトデータです。つまり、レセプト単価が突出していれば、それだけで個別指導の対象になりえます。悪いことをしたから呼ばれる、という制度ではありません。

ほかに、新規指定のステーションは概ね1年以内に集団指導の対象になります。また、正当な理由なく集団指導を拒否すると個別指導、個別指導を拒否すると監査へ進む建付けで、「受けない」という選択肢は実質ありません。 特に悪質と判断された場合の監査は、当日に通知を持参して行われることすらあります。

実施場所は2通りあります。指導要綱の文言は「一定の場所に集めて又は当該訪問看護ステーションにおいて個別に面接懇談方式により行う」。つまり会場に出向く形式と事業所で受ける形式の両方があり、どちらなのかは通知の「日時及び場所」欄で分かります(通知には根拠規定・日時(土日・休日を除く)・場所・出席者・準備すべき書類等が記載されます)。

準備の考え方は介護保険と同じで、軸は突合です。対象が「連続2か月分の請求書」と明記されているのだから、その2か月について、指示書・計画書・記録と請求が突き合う状態にしておく。1週間から10日の使い方としては、通知当日に場所・出席者・準備書類を確定し、前半で対象2か月分のレセプトと指示書・計画書・記録の突合、後半で説明のつかない請求の洗い出しと事実の整理、直前に準備書類と出席者の最終確認、という配分になります。月ごとの請求チェックを回していれば、そのまま個別指導の備えになります。

この章の出典


7. 指摘を受けた後 — 改善報告と、報酬の返還

指摘=処分ではありません。運営指導の結果は大きく2種類に分かれます。

① 運営面の指摘(文書指導)。 期限までに改善報告書を提出します。書き方の基本は、指摘事項ごとに「原因→改善内容→再発防止の仕組み」を対にすること。「今後注意します」だけの報告は、仕組みの改善になっていないため通りにくい。担当者を決め、点検の頻度を決め、様式を直した——という具体で書きます。

② 報酬の誤り(過誤調整)。 算定要件を満たしていない請求が見つかった場合、指摘された分だけでなく、同種の誤りを全利用者・過去分に広げて自主点検したうえで、保険者(市区町村)への過誤申立により返還します。申立書の提出先は国保連ではなく保険者です。過誤申立の実務と、遡って直せる期間の話は「加算算定漏れの記事」で詳しく整理しています(あちらは「取り漏れた分を取りに行く」話ですが、手続きの土台は同じ過誤調整です)。

新規利用者の初回加算も、計画書の作成日と利用実績の整合という同じ観点で確認されうる項目です。(Ⅰ)(Ⅱ)の分かれ目と算定できる期間の数え方は初回加算の記事で整理しています。

医療保険側で同じ観点から確認されやすいのが退院支援指導加算です。指導日(退院日)と算定日(初回訪問日)がずれる制度のため、記録上の日付が実際の訪問と一致しているかが点検の対象になります。

開設して日が浅い事業所では、届出そのものが受理されているかも確認の対象になります。医療保険と介護保険で別々に走る届出の期限は訪問看護の開業と事務・請求体制の記事で整理しています。

どの加算にどちらの届出が要るかは、訪問看護の加算一覧・早見表の届出欄で一覧にしています。

医療保険側は6章のとおり、個別指導での自主返還が原則1年以上、監査に進めば原則5年。介護保険でも、監査で不正と認定されれば返還に加算金がつく可能性があり、令和5年度の指定取消等に伴う返還請求額は約3億5千万円でした。「指摘されてから直す」と「自分で見つけて直す」では、金額も信用も違ってきます。

この章の出典


8. 平時の点検の回し方 — 通知が来てからでは間に合わないもの

1か月あれば、書類は並べ直せます。間に合わないのは、日々の記録そのものです。指示書の日付、提供記録の時間、常勤換算の根拠。これらは過去に遡って「整える」ことができません(作り直せば、それは別の重大な問題になります)。だから平時の点検は、書類を貯めることではなく、ズレを毎月見つける仕組みに寄せます。

指示書まわりで実際に指摘されているのは、留意事項及び指示事項の記載不足、特記すべき留意事項と宛先の空欄、診療録への写しの添付漏れ、同意の記録なしの4つです。受領時に何を確認するか、保存期間が何年かは訪問看護指示書とは|有効期間6か月・様式16と押印【R8.6】にまとめました。

令和7年度版で新しく入った指摘のうち、平時にしか潰せないものが3つあります。ひとつはサテライトの管理で、「管理者が定期的に訪問による管理を行っていなかった」が挙がりました。是正として求められているのは少なくとも月1回以上の訪問と管理記録の整備で、オンラインのみは不可とされています。ふたつめは駐車場代。通常の事業の実施地域内で、利用者宅の近隣にコインパーキングしかない場合の使用料徴収が名指しされました。3つめは事故報告の宛先で、事業所が所在する自治体と利用者が居住する自治体の双方への報告が求められています。どれも通知が来てから直せるものではありません。

自己点検票は、都道府県や市区町村が指定更新・運営指導用に配布しているものを使います。まず自分の指定権者のサイトで「自主点検表 訪問看護」を探してください。東京都は「指定訪問看護事業 指導検査基準」(令和8年6月1日適用)も公開しており、何をどの基準で見られるかが逐条で分かります。

月次の請求チェックには、5章のペア一覧をそのまま項目として足します。運営指導の備えを独立した仕事にするのではなく、毎月の請求業務に載せてしまうのが続くやり方です。加算の算定根拠の点検は「加算算定漏れの記事」の月次チェックの型がそのまま使えます。

令和7年度から、重要事項はウェブサイトに載せる義務があります

書類の話ではないので抜けやすいのですが、運営指導で見られる項目にウェブサイトが加わりました。指定居宅サービス等基準の第32条に、令和6年1月の改正で第3項が入っています。

指定訪問介護事業者は、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない。

訪問介護の条文ですが、第74条で訪問看護に準用されます(「訪問介護員等」は「看護師等」と読み替え)。「原則として」は付いていても、文末は「しなければならない」です。努力義務ではありません。

適用は令和7年4月1日からです。改正省令の附則は、令和7年3月31日までこの第3項を「削除」と読み替えると定めていました。努力義務期間だったのではなく、規定そのものが適用されていなかった期間です。裏を返すと、令和7年度以降の運営指導では、すでに適用済みの義務として見られます。

載せる先は自社サイトに限りません。解釈通知(老企第25号)が「ウェブサイトとは、法人のホームページ等又は介護サービス情報公表システムのことをいう」と定義しているので、情報公表システムへの掲載でも要件を満たします。自社サイトを持っていないステーションはこちらです。

掲示する重要事項の中身も通知が例示しています。運営規程の概要、看護師等の勤務体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制、第三者評価の実施状況(実施の有無、直近の実施年月日、評価機関の名称、評価結果の開示状況)です。苦情処理の体制については、通知が別途「事業所に掲示し、かつ、ウェブサイトに掲載すること」と念を押しています。

規模の小さい事業所の扱いは、資料によって書き方が違うので注意が要ります。東京都の資料は「ウェブサイトへの掲示は1年間にサービスの対価として支払いを受けた金額が100万円以下である事業所は除く」と書いています。ただし省令の第32条第3項に除外規定はありません。根拠は解釈通知のほうで、そこでの書き方は「除く」ではなく「ウェブサイトへの掲載は行うことが望ましいこと」です。義務が外れるのではなく、通知で推奨に落としているという構造です。しかも「1年間」は前年度でも暦年でもなく、都道府県が定める公表計画の基準日から遡る1年間を指します。

そして、ウェブサイトに載せない場合でも第1項の掲示義務は残ります。事業所の見やすい場所に掲示するか、重要事項を記載した書面を備え付けて自由に閲覧させるか(第2項)のどちらかは必要です。掲示する場所について、東京都は従業者の事務スペースを「✕」、相談室等を「〇」としています。利用者から見える場所かどうかで判断されます。

なお、これは事業所の収益・費用を都道府県に報告する経営情報の制度(介護保険法第115条の44の2)とは別のものです。あちらは財務諸表等を報告する義務で、公表するのは都道府県側です。名前が似ているので混同しないでください。

点検の仕組みは、担当者がいて初めて回ります。看護師と管理者が請求も点検も抱えている体制なら、まず「人手不足対策の記事」で書いた時間の測り方から。記録・書類の整備や請求点検は、外部に切り出せる領域でもあります(制度上の線引きは「書類作成代行の記事」に)。

事務の点検体制づくりや請求まわりの整備は、どこまでを外に出せるかの整理からご相談に応じています。

訪問看護の事務負担・請求業務の外部委託について見る

この章の出典


9. よくある質問

Q. 通知から当日まで、どのくらい時間がありますか?

介護保険はおおむね1月以上前まで、医療保険は概ね1週間から10日前です。厚生局からの通知は即日着手を。

Q. 集団指導の案内が届きました。運営指導とは違うのですか?

違います。集団指導は、制度改正の内容や指導事例などを事業者を集めて(またはオンライン等で)伝える情報共有の場で、個別に書類を確認されるものではありません。医療保険では、新規指定のステーションは概ね1年以内に集団指導の対象となり、正当な理由なく拒否すると個別指導に進みます。案内が来たら出席が基本です。

Q. 当日確認される利用者は何人分ですか?

介護保険の運営指導では、記録等を確認する対象は特に必要と判断する場合を除き原則として3名以内とされています。医療保険の個別指導は、指導月以前の連続2か月分の請求書が対象です。

Q. 準備や当日の対応を外部に頼めますか?

事前の準備(書類の棚卸し、請求と記録の突合、自己点検)は、事務代行・BPOに切り出せる領域です。当日の立会いの可否や範囲は自治体や依頼先によります。制度上どこまで事務として外に出せるかは、8章で触れた書類作成代行の記事に整理しています。

Q. 当日は何時間くらいかかりますか?

全国一律の決まりはありません。自治体運用の例として、前橋市はおおむね半日から1日と案内しています。

Q. 通知なしで来ることはありますか?

あります。ただし介護保険では建付けが分かれていて、緊急に状況確認が必要な場合は事前通知なしの運営指導(開始時に文書で通知)が認められ、高齢者虐待や不正の疑いがある場合は運営指導ではなく無通告の監査になります。医療保険でも、特に悪質と判断された監査は当日に通知を持参する形が認められています。

Q. 通知に書かれていない書類まで見られますか?

介護保険の運営指導では、確認項目以外は特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則求めないこととされています。まず通知に列挙された書類を揃えるのが先です。

Q. 運営指導の対象になりやすい事業所はありますか?

介護保険は原則として指定有効期間内に1回以上です。虐待や不正につながる情報が寄せられた場合は、運営指導ではなく監査の対象になりえます。医療保険の個別指導は、レセプト1件当たり平均額が高い順に選定することが令和7年の改正で明記されています(取扱件数の少ないステーションは除く)。単価が突出していれば、それだけで対象になりえます。

Q. 指摘されたら処分されるのですか?

指摘の大半は文書指導で、改善報告書を出して改善すれば終わります。処分(指定取消・効力停止)は監査を経た場合の話で、令和5年度の全国実績は計139件です。ただし報酬の誤りは自主点検のうえ過誤調整(返還)になります。

この章の出典


10. まとめ

運営指導は、6年に1回以上が原則でありながら実施率は年13.3%。めったに来ないぶん、来たときには久しぶりの確認になります。通知が届いたら、まず差出人を見る。自治体なら介護保険の運営指導で、当日までおおむね1か月。地方厚生局なら医療保険の指導・監査で、1週間から10日しかありません。この判別を最初に間違えなければ、準備の方向はほぼ決まります。

見られる範囲は決まっています。介護保険は標準確認項目・確認文書の枠内で、通知に書類の一覧が同封されます。そして指摘の中心は書類の有無ではなく突合です。指示書の日付とサービス開始日、計画書とケアプラン、記録と請求、タイムカードと常勤換算。書類が揃っているかではなく、書類同士が合っているかを見られます。医療保険も、対象が連続2か月分のレセプトと明記されている以上、同じ発想で備えられます。

そして、日々の記録だけは通知が来てからでは間に合いません。自己点検票と月次の突合チェックを請求業務に載せて、ズレを毎月見つける。運営指導対策とは、結局のところ月次の事務を正しく回すことと同じ——それがこの記事の結論です。

この章の出典


ご利用にあたって

本記事は2026年8月時点で公開されている公的資料にあたって作成しています。そのうえで、次の4点にご留意ください。

自治体ごとの運用差があります。 事前提出の様式・当日の所要時間・結果通知や改善報告の期限は自治体により異なります。本文では全国共通の原則(厚生労働省のマニュアル・通知)と自治体の運用例(前橋市・大阪府・東京都・和歌山県)を区別して書き、自治体例にはその旨を明記しています。実際の手続は、通知書と指定権者の案内に従ってください。

医療保険の指導・監査は令和7年4月3日適用の改正大綱に基づいています。 個別指導の選定基準(1件当たり平均額の高い順)や自主返還の期間(原則として指導月前1年以上)は、この改正で明記されたものです。

記載に誤りが含まれている可能性があります。 一次資料の原本にあたって確認していますが、読み取りを誤っている箇所があるかもしれません。手続に関わる判断の前に、原本と指定権者・地方厚生局の案内をご確認ください。

制度は改定で変わります。 減算・義務化の内容(BCP・虐待防止・身体的拘束の記録)は令和6年度改定時点の整理です。


参考・出典一覧

厚生労働省

全国訪問看護事業協会

自治体(運用例・指摘事例として引用)