「この利用者、特別管理加算の対象だったのに算定していなかった」——気づいた瞬間に知りたいのは、遡って請求できるのか、いつまでか、どういう手順かの3つだと思います。

先に答えを書きます。算定漏れは、原則として遡って請求できます。 ただし期限が医療保険と介護保険で違います。医療保険は5年、介護保険は2年です。そして、体制届(加算届)を出していなかった期間の分は、遡れません。

この記事は、算定漏れに気づいたときの出口を「まだ請求していない」「もう請求してしまった」「そもそも届出をしていなかった」の3パターンに分けて、手順と期限を一次情報で整理します。あわせて、放置するといくら失うのかの試算と、漏れが起きる構造も示します。

なお、請求したものが審査で差し戻される「返戻」への対応は別の記事「訪問看護のレセプト返戻|原因と再請求の手順・エラーコード早見表」で扱っています。この記事は「そもそも請求していなかった分を取りに行く」話です。

急ぎの方へ

いまの状況 進む先
漏れに気づいた。まず全体像を知りたい 1章 結論2章 早見表
医療保険の分を遡って請求したい 3章 医療保険の手順
介護保険の分を遡って請求したい 4章 介護保険の手順
体制届を出していなかったかもしれない 5章 届出と遡及
放置するといくら失うのか知りたい 6章 金額試算
そもそもなぜ漏れるのかを潰したい 7章 漏れの構造8章 チェックの型

1. 結論:遡れます。ただし「期限」と「届出」の2つの壁があります

算定漏れへの対応で、最初に押さえるべきことは3つです。

① 未請求の分は、期限内なら後から請求できます。 請求の期日は医療保険・介護保険とも「各月分について翌月10日まで」と省令で定められていますが、これは各月分の請求期日であって、間に合わなかった分の請求権が消えるわけではありません。審査支払機関は、期日を過ぎた分の請求(いわゆる月遅れ請求)を前提とした運用をしています。

② その期限が、医療5年・介護2年で非対称です。 医療保険(訪問看護療養費)の請求権は、民法改正後の整理で5年。介護保険(介護給付費)の請求権は、介護保険法第200条第1項により2年です。同じ利用者の同じ加算でも、どちらの保険で算定しているかで、取り返せる期間が倍以上違います。「医療が5年だから介護も同じだろう」と考えるのが、この領域でいちばん危ない思い込みです。

③ 体制届を出していなかった期間は、遡れません。 届出が必要な加算は、届出の受理を起点に「翌月から」(医療)「翌月または翌々月から」(介護)算定が始まります。要件を満たしていたとしても、届出をしていなかった期間に遡って算定することを認める規定はありません(5章)。

この壁に当たりやすいのが精神科訪問看護基本療養費です。加算ではなく基本療養費そのものに届出(別紙様式1・受理番号 訪看10)が必要なため、届出をしないまま算定していたことに後から気づくケースがあります。要件と届出の全体像は精神科訪問看護基本療養費の記事にまとめました。

公費でも同じ構造の取りこぼしが起きます。自立支援医療は指定自立支援医療機関の指定を受けていなければ立てられず、しかも指定はさかのぼって適用できません。受給者証の有効期間が切れていた月も同様です。→訪問看護の自立支援医療|上限額管理票の記入と公費の優先順位

つまり、算定漏れに気づいたときの分岐はこうなります。体制届は出ていたか → 出ていたなら、未請求か請求済みか → それぞれの手順で、時効内に取りに行く。 次章の早見表で全体を確認してください。

この章の出典


2. 状況別の早見表

気づいた時点の状況ごとに、出口と期限を並べます。

状況 出口 期限の目安
未請求(その月のレセプトに載せていなかった) 月遅れ請求として提出 医療:5年/介護:2年
請求済み(レセプトは出したが加算が抜けていた)・医療 取下げ(返戻依頼)→ 修正して再請求 時効内。再審査の申出は原則6か月以内
請求済み・介護 保険者へ過誤申立 → 修正して再請求 時効内。締切・運用は保険者ごと
体制届を出していなかった 遡及不可。至急届出して翌月(介護は翌月または翌々月)から

期限の起算点も、医療と介護で違います。

医療保険 介護保険
時効 5年 2年
起算点 診療月の翌月1日(国保は翌々々月の1日) サービス提供月の翌々々月の1日
根拠 改正民法・令和2年5月11日事務連絡 介護保険法第200条第1項

2点、補足しておきます。介護の「2年」の条文(介護保険法第200条第1項)は「保険給付を受ける権利」の時効を定めたものです。事業者が受け取る介護報酬は被保険者を代理して受領する構成のため、この2年が適用される——というのが厚生労働省の整理です(介護保険最新情報Vol.462)。また起算点の「翌々々月の1日」は条文ではなく厚生労働省の事務連絡に基づくもので、複数の国保連が同じ起算日を案内しています。

なお、介護保険でも介護予防・日常生活支援総合事業費は5年(地方自治法第236条第1項)です。総合事業を受託している事業所では、同じ「介護の請求」でも時効が違います。

この章の出典


3. 医療保険:遡って請求する手順

3-1. 未請求の分は「月遅れ請求」

まだ請求していない月の分は、翌月以降のレセプトに載せて請求します。「月遅れ請求ができる」と正面から定めた全国共通の明文規定は確認できませんでしたが、請求命令の「翌月10日まで」は各月分の請求期日であり、審査支払機関の案内資料には月遅れ請求を所与の手続きとして扱っているものがあります(東京都国保連のオンライン請求Q&Aなど。東京都の例)。提出の仕方に指定がある場合があるので、事前に審査支払機関(支払基金・国保連)へ確認してください。

開業直後の初月請求が10日に間に合わなかった場合も、同じ月遅れ請求で拾えます。初月のスケジュール全体は訪問看護の初月請求の記事で逆算表にしています。

時効は前述のとおり5年です。厚生労働省の事務連絡は、こう整理しています。

当該保険医療機関等が診療報酬請求権を行使できることを知らなかったと考えられる特段の事情がない限り、原則として診療月の翌月1日(国民健康保険の場合は翌々々月の1日)から起算して5年間で消滅時効が完成すると解して差し支えない

なお、この事務連絡は診療報酬債権についての整理で、訪問看護療養費を名指ししたものではありません。訪問看護療養費の請求権にも同様に改正民法が適用されると解されますが、古い月の分を請求する場合は審査支払機関に確認してから動くのが確実です。

3-2. 請求済みの分は「取下げ→再請求」

すでに提出したレセプトに加算が抜けていた場合は、そのレセプトを取り下げて、修正したものを再請求するのが基本ルートです。自院の請求誤りによる取下げは、審査支払機関に依頼します。

ここで訪問看護ステーション特有の注意があります。レセプト本体はオンライン請求ですが、再審査等請求・取下げの手続きは、訪問看護ステーションだけ紙の「再審査等請求書」を郵送で提出します。 支払基金のページに明記されています。

(注2)訪問看護ステーションは紙の「再審査等請求書」を郵送により提出願います。

また、再審査の申出には目安の期限があります。

支払基金に対する再審査の申出はできる限り早期に行い、支払基金が定めた申出期間(原則6ヵ月以内)を遵守するよう努められたいこと

時効は5年でも、手続きの世界では6か月が一つの区切りです。気づいたら早く動くに越したことはありません。

返戻・再請求の実務(通知の読み方、オンラインでの再請求手順、増減点連絡書との違い)は「訪問看護のレセプト返戻|原因と再請求の手順・エラーコード早見表」で詳しく扱っています。

この章の出典


4. 介護保険:遡って請求する手順

4-1. 未請求の分は月遅れ請求。ただし時効は2年

まだ請求していない月の分は、医療保険と同様、翌月以降に国保連へ請求します。東京都国保連は「時効となる月の月末まで」の請求を案内しています(東京都の例)。

繰り返しになりますが、介護給付費の時効は2年です。起算点は「サービス提供月の翌々々月の1日」。たとえば令和6年8月提供分なら、令和6年11月1日から2年、令和8年10月末が請求の限界です。この記事を読んでいる時点で2年近く前の漏れに気づいた場合は、月単位で消えていきます。至急、国保連と保険者に確認してください。

4-2. 請求済みの分は「過誤申立→再請求」

すでに審査・支払いまで終わった月のレセプトに加算を追加したい場合は、保険者(市町村)を経由した過誤申立で、いったんそのレセプトを取り下げてから再請求します。医療保険と違い、窓口が国保連ではなく保険者になる点が最初のつまずきどころです。

過誤には2つの方式があります(江東区の例)。

  • 同月過誤 — 過誤(取下げ)と再請求の審査を同時に行い、差額だけが調整される方式。資金繰りへの影響が小さい
  • 通常過誤 — 支払済の介護給付費の全額がいったん調整(戻し)になる方式

どちらの方式をどう使うか、申立の締切が何日か、様式が何かは、保険者ごとに運用が違います。 また「請求を行った月に当該請求分の過誤申立は出来ません」(大阪市の例)とされており、審査・決定が終わってからでないと動けません。過誤・再請求で加算を追加できるかどうかの取り扱いも含めて、必ず利用者の保険者に確認してから着手してください。

もう1つ、介護保険特有の論点があります。加算を追加すると利用者負担(1〜3割)も変わります。 過誤・再請求の前に、利用者への説明と追加負担の請求方法も決めておく必要があります。

この章の出典


5. 体制届を出していなかった分は、遡れません

ここが算定漏れの中で唯一、後から取り返せないパターンです。

届出が必要な加算は、届出の受理を起点に算定が始まります。

医療保険 — 通知はこう定めています。

各月の月末までに受理したものはその翌月から、月の最初の開庁日に受理した場合は、当該月の1日から当該療養費を算定すること

介護保険 — 老企第36号が定める、いわゆる15日ルールです。届出が毎月15日以前になされた場合は翌月から16日以降の場合は翌々月から算定を開始します。これは自治体の独自運用ではなく、厚生労働省の通知レベルで定められています。

どちらも「届出の後、いつから算定できるか」を定めた規定であり、届出前の期間に遡って算定することを認める規定はありません。 要件をすべて満たしていたとしても、届出がなければその期間の分は算定できない、というのが制度の建て付けです(報酬改定の際に、期限までの届出で改定日に遡って算定できる期間限定の特例が設けられることはあります)。

逆方向にも注意が必要です。老企第36号は、加算が算定されなくなる状況が生じた場合は速やかに届け出ること、そしてその事実が発生した日から算定を行わないことを求めています。届出をせずに算定を続けた場合は、不正請求として返還の対象になります。

体制届が起点になる加算は、この領域の要注意ポイントです。令和8年6月に新設された処遇改善加算も、体制届と計画書の提出が算定の起点でした。「訪問看護の処遇改善加算|1.8%の一択・6月開始・出す書類と期限」で整理しています。

もうひとつ、届け出たあとも毎月の判定が続く加算があります。介護保険の看護体制強化加算は、前6月間の緊急時訪問看護加算・特別管理加算の算定割合と前12月間のターミナルケア加算の件数で要件が決まるため、判定の窓が毎月1か月ずつ動きます。下回った月は算定できず、気づかず算定を続けると返還の対象です。逆に、要件を満たしていた過去の期間があっても届出がなければ遡れないのは、この章の原則どおりです(→看護体制強化加算の記事)。

届出が逆向きに効く場面もあります。介護保険の業務継続計画未策定減算・高齢者虐待防止措置未実施減算は、要件を満たしているのに体制届が「減算型」のままだと、取れるはずの報酬を自分で削ったまま請求し続けることになります。加算の取りこぼしと同じ構図ですが、こちらは減算側なので届出を直すまで気づく手がかりが少ないところが厄介です(→BCP未策定減算・虐待防止減算の記事)。

この章の出典


6. 金額で見る:月1回の加算を1人分取り逃すと

算定漏れの怖さは、1件は小さいのに、毎月・全員分で静かに積み上がることです。体制加算系は月1回・自動的に付くものが中心なので、「1人の利用者で漏れている」は「その利用者の在籍期間ずっと漏れている」を意味することがあります。

告示で確認済みの金額から試算します(介護保険は1単位10円の地域を前提。地域区分により単価は異なります)。

加算(漏れの単位) 1か月 1年
【介護】緊急時訪問看護加算Ⅰ(600単位・月1回) 約6,000円 約7.2万円
【介護】特別管理加算Ⅰ(500単位・月1回) 約5,000円 約6万円
【介護】特別管理加算Ⅱ(250単位・月1回) 約2,500円 約3万円
【医療】24時間対応体制加算(6,520〜6,800円・月1回) 6,520〜6,800円 約7.8〜8.2万円
【医療】特別管理加算(2,500円または5,000円・月1回) 2,500〜5,000円 約3〜6万円
【医療】緊急訪問看護加算(月14日目まで2,650円/15日目以降2,000円・1日ごと) 緊急訪問の日数分 —(発生した日数分)

利用者1人で年3万〜8万円。 対象者が5人いれば年数十万円の規模になります。そして介護保険分は2年で時効を迎えるので、気づくのが遅いほど、取り返せる範囲そのものが縮んでいきます。

なお、算定漏れの規模を示す公的な統計は、調査した限り存在しません。運営指導の事例集や指導マニュアルが扱うのは過大請求・要件未充足の方向が中心で、「本来算定できたのに算定していなかった」漏れは、外から誰も指摘してくれないタイプの損失です。返戻と違って通知も来ません。自分で見つける仕組みがない限り、存在にすら気づけません。

算定漏れだけでなく、運営指導の準備から当日の流れまでは別記事で解説しています。

この章の出典


7. なぜ漏れるのか:4つの構造

算定漏れは「担当者の不注意」で片づけられがちですが、実際には構造的な原因があります。当メディアで加算を1つずつ調べてきて見えた、漏れが発生しやすい4つの型です。

① 判定に必要な情報が、複数の場所に分散している。 加算の判定材料は、利用者基本情報・日々の実績・訪問記録・請求データに散らばっています。同一建物減算の判定で整理したとおり、月末にこれらを突き合わせる作業は担当者の注意力でカバーできる範囲を超えています(「訪問看護の同一建物減算|判定と人数の数え方」)。加算も同じ構造です。

点検に人手を回せないという根本の問題は「訪問看護の人手不足対策|採用の前にできる3つのこと」で扱っています。

② 体制加算と実訪問の加算が入り混じっている。 月1回の体制加算(24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算など)と、実訪問ごとの加算(緊急訪問看護加算など)は算定の仕方が正反対です。「体制加算を取っているから実訪問分も含まれている」という誤解は、そのまま算定漏れになります(「訪問看護の緊急訪問看護加算|医療と介護で違う3つの加算を整理」)。

③ 利用者の状態に連動して、対象かどうかが動く。 特別管理加算が典型です。カテーテルが入った、褥瘡ができた、退院してきた——そのたびに対象かどうかが変わります。判定のタイミングを個人の気づきに任せると、状態変化の月から漏れが始まります。しかも医療と介護で対象者の範囲が一致していないため、保険が切り替わる利用者では取り違えも起きます(「訪問看護の特別管理加算|令和8年6月改定と医療・介護の違い」)。

退院直後の新規利用でとりこぼしやすいのが初回加算です。(Ⅰ)(Ⅱ)の分かれ目と算定できる期間の数え方は初回加算の記事で整理しています。

④ 名前が似た加算の取り違えで、算定をやめてしまう。 「緊急訪問看護加算」と「緊急時訪問看護加算」のように、1文字違いで医療・介護に分かれている加算では、「介護では算定できないのか」と誤解して医療側の算定まで止めてしまうケースが考えられます。名称の混乱は、過剰算定だけでなく算定漏れの原因にもなります。

退院前後の加算も同様です。「退院支援指導加算」「退院時共同指導加算」など名前が似た制度が並んでおり、対象を混同すると片方だけ算定して片方を取り逃す事態が起こります。退院支援指導加算の記事で名称の整理をしています。

開業直後は、そもそも届出を出せていないために算定できないという型の取りこぼしも起きます。開業時に出せる届出と出せない届出は訪問看護の開業と事務・請求体制の記事にまとめました。

どの加算が届出を要するかを一覧で押さえておくと、この型の漏れは防げます。医療保険・介護保険をまとめた訪問看護の加算一覧・早見表をご覧ください。

この4つに共通するのは、どれも「気をつける」では解決しないことです。情報の分散は突合の仕組みで、状態連動は判定のトリガー設計で受け止めるしかありません。次章でチェックの型を示します。

この章の出典


8. 月次チェックの型:3つのタイミングで見る

算定漏れを仕組みで防ぐには、チェックのタイミングを3つに分けるのが実務的です。

① 新規契約時。 利用者の状態を加算の対象要件と突き合わせ、算定できる加算を最初に確定します。医療保険か介護保険かの区分、体制届が出ているかも、ここで一緒に確認します。

② 状態変化時。 退院・カテーテル挿入・褥瘡の発生・特別訪問看護指示書の交付など、状態が動いたら判定をやり直すトリガーを決めておきます。「誰が気づくか」ではなく「どの書類が動いたら見直すか」で設計するのがこつです。

③ 月次の請求前。 レセプト提出前に、体制加算が月1回付いているか、実訪問の加算が訪問実績と一致しているか、保険区分の切替月の帰属が正しいかを確認します。前月と比べて加算が消えた利用者がいれば、状態が変わったのか漏れなのかを判別します。

そのまま使える形に落とすと、次のようになります。

タイミング 確認すること 突き合わせる書類
新規契約時 保険区分(医療/介護)/加算の対象要件に該当する状態はあるか/必要な体制届は出ているか 指示書、利用者基本情報、体制届の控え
状態変化時(退院・器具の挿入/抜去・褥瘡の発生/治癒・特別指示書の交付) 対象になった加算はないか/対象から外れた加算はないか/保険区分は切り替わっていないか 退院時の情報提供書、訪問看護記録書、指示書
月次の請求前 体制加算が対象者全員に月1回付いているか/実訪問の加算が訪問実績と一致しているか/前月と比べて加算が消えた利用者の理由を説明できるか 前月レセプト、当月実績、訪問記録

このチェックは、判定の根拠が記録に残っていることが前提になります。記録・書類の事務をどこまで外部に出せるかは「訪問看護の書類作成代行はどこまで可能か|事務と判断の線引き」で整理しています。

そして正直なところ、この月次チェックを続けること自体が、事務が1人以下の事業所ではいちばん難しいのだと思います。チェックの型を知っていることと、毎月それを回し続けられることは別の問題です。加算の算定チェック・請求業務を外部に任せるという選択肢について、対応できる範囲や進め方をご案内しています。

訪問看護の請求業務・加算算定チェックの外部委託について見る

この章の出典


9. よくある質問

Q. 算定し忘れた加算は、後から請求できますか?

原則できます。未請求の分は月遅れ請求、請求済みのレセプトに追加する場合は、医療保険は取下げ→再請求、介護保険は保険者への過誤申立→再請求という手順になります。ただし体制届を出していなかった期間の分は遡れません。

Q. いつまで遡れますか?

医療保険(訪問看護療養費)は原則5年(診療月の翌月1日起算、国保は翌々々月1日)、介護保険(介護給付費)は2年(サービス提供月の翌々々月1日起算)です。介護のほうが大幅に短い点に注意してください。

Q. 体制届を出し忘れていました。要件は満たしていたのですが、遡って算定できますか?

できません。届出の受理を起点に「翌月から」(医療)「翌月または翌々月から」(介護・15日ルール)算定が始まる建て付けで、届出前の期間に遡って算定することを認める規定はありません。気づいた時点で至急届け出てください。

Q. 介護保険の過誤申立はどこに出しますか?

国保連ではなく、利用者の保険者(市町村)に提出します。締切・様式・同月過誤の可否は保険者ごとに運用が異なるため、必ず事前に確認してください。

Q. 加算を後から追加すると、利用者の負担も変わりますか?

変わります。介護保険では利用者負担(1〜3割)が加算分だけ増えるため、過誤・再請求の前に利用者への説明と追加分の請求方法を決めておく必要があります。

Q. 算定漏れがどれくらい起きているかのデータはありますか?

調査した限り、算定漏れの規模を示す公的統計は存在しません。運営指導の指摘も過大請求の方向が中心で、漏れは外部から指摘されにくい損失です。

Q. 返戻と算定漏れは何が違いますか?

返戻は「請求したものが差し戻される」こと、算定漏れは「そもそも請求していなかった」ことです。返戻は通知が来ますが、算定漏れは通知が来ないため、自分で見つける仕組みが必要です。返戻への対応は別記事で整理しています。

この章の出典


10. まとめ

要点を整理します。

算定漏れは、原則として遡って請求できます。 未請求分は月遅れ請求、請求済み分は医療なら取下げ→再請求、介護なら保険者への過誤申立→再請求です。

期限は医療5年・介護2年で非対称です。 介護給付費は介護保険法第200条第1項により2年。起算はサービス提供月の翌々々月の1日です。介護の漏れは月単位で時効を迎えていきます。

体制届を出していなかった期間だけは、取り返せません。 届出の受理を起点に算定が始まる建て付けで、遡及を認める規定はありません。

放置のコストは、利用者1人あたり年3万〜8万円の規模になりえます。 しかも返戻と違って通知が来ないため、仕組みがなければ存在にすら気づけません。

漏れは不注意ではなく構造から生まれます。 情報の分散、体制加算と実訪問の混同、状態連動の判定、名称の取り違え。新規契約時・状態変化時・月次請求前の3つのタイミングでチェックする型に落とすことが、遡及請求のお世話にならない一番の近道です。


ご利用にあたって

本記事は2026年7月時点で公開されている法令・厚生労働省の通知・審査支払機関等の公開資料にあたって作成しています。そのうえで、次の3点にご留意ください。

制度・手続きは変わります。 請求期限・時効の取扱い・過誤申立の運用は、その後の改正や事務連絡で変わることがあります。本記事の内容が最新である保証はありません。

運用には地域差があります。 月遅れ請求の提出方法、過誤申立の締切・様式・同月過誤の可否は、審査支払機関・保険者(市町村)ごとに異なります。本記事で挙げた自治体の例(東京都・江東区・大阪市)は、その地域の運用です。着手前に必ず提出先へ確認してください。

記載に誤りが含まれている可能性があります。 原本にあたって確認していますが、読み取りを誤っている箇所があるかもしれません。期限・手順は原本と提出先の案内でご確認ください。

確認したいこと 窓口
医療保険の月遅れ請求・取下げ・再審査 審査支払機関(支払基金・国保連)、地方厚生局
介護保険の月遅れ請求 国民健康保険団体連合会
介護保険の過誤申立 利用者の保険者(市町村)
体制届・加算届 医療=地方厚生局/介護=指定権者(都道府県・市町村)

照会した内容と回答は記録に残しておくことをおすすめします。


参考・出典一覧

法令

厚生労働省

審査支払機関・自治体