返戻になると、その明細書の分はその月の入金がゼロになります。査定のように「減額されて入る」のではなく、まるごと入りません。しかも原因を直さないかぎり、翌月も同じものが返ってきます。

この記事は、いま手元に返戻の通知がある方が最短で再請求にたどり着けるように書きました。ですので「返戻とは何か」という定義からは始めません。何を見て、何をすればいいかから入ります。

制度に関する記述はすべて、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会・厚生労働省・地方厚生局の一次情報にあたって確認しました。令和8年6月1日から適用されている令和8年度診療報酬改定と、支払基金のチェック一覧 令和8年7月版を反映しています。 章ごとに出典を明記していますので、判断に迷ったときは原典をご確認ください。

急ぎの方へ

いまの状況進む先
介護保険の「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」が届いた2章 通知の読み方3章 エラーコード8章 介護保険の原因
医療保険の返戻ファイル・返戻内訳書が届いた2章 通知の読み方4章 再請求の手順7章 医療保険の原因
コードの意味だけ知りたい(12PA・ANN4・L3943 など)3章 エラーコード早見表
「事由A」と書かれているが意味が分からない2章 事由記号は3種類ある
「保留」と書かれていて返戻ではない5章 返戻・保留・査定・過誤の違い
今月の10日に間に合いそうにない4章 間に合わなかった場合
入金がいつになるか知りたい6章 キャッシュフロー逆算表
令和8年6月の改定で何が変わったか知りたい7章 改定で増えた返戻リスク
毎月返戻が出るので仕組みで止めたい9章 月次オペレーション

1. 返戻通知が届いたら、最初にやること3手順

STEP1|医療保険か介護保険か、どちらの返戻かを確認する

まずこれを確定させてください。訪問看護は医療保険と介護保険の両方を扱いますが、同じ「返戻」でも通知の名前・再請求の手順・締切・時効がすべて違います。 ここを取り違えると、直したつもりでまた返ってきます。

医療保険(訪問看護療養費)介護保険(介護給付費)
審査支払機関社会保険診療報酬支払基金
(国保・後期高齢者医療は国保連)
国民健康保険団体連合会
届く通知返戻ファイル(オンライン)
返戻内訳書
請求明細書・給付管理票
返戻(保留)一覧表
再請求の方法返戻ファイルをダウンロードして再送修正して翌月の請求と一緒に提出
請求権の時効5年2年

時効については補足が要ります。医療保険を「3年」と書いている解説記事が今も見られますが、民法改正(令和2年4月1日施行)により診療報酬請求権の消滅時効は5年になりました。厚生労働省の事務連絡は「原則として診療月の翌月1日(国民健康保険の場合は翌々々月の1日)から起算して5年間で消滅時効が完成する」としています。

一方の介護保険は介護保険法第200条第1項により2年です。ただし条文の文言は「保険給付を受ける権利」であって「介護給付費請求権」ではなく、「サービス提供をした日の属する月の翌々々月の1日」という具体的な起算日は条文ではなく厚生労働省の事務連絡に基づくものです。複数の国保連が同じ起算日を案内しています。

あわせて注意したいのが、介護保険でも2年ではないものがあることです。 介護予防・日常生活支援総合事業費は地方自治法第236条第1項により5年で、介護給付費の2年とは異なります。総合事業を受託している事業所では、同じ「介護保険の請求」でも時効が違うことになります。

STEP2|通知のどこに原因が書かれているかを見る

介護保険なら返戻(保留)一覧表の種別・事由・エラーコードの3欄、医療保険なら返戻ファイルの返戻理由が該当箇所です。読み方は次章で詳しく扱います。

STEP3|いつまでに再請求すれば、いつ入金されるかを逆算する

介護保険医療保険
通知が届くサービス提供月の翌月末ごろ請求月の翌月
再請求の受付翌々月の1日〜10日毎月5日〜10日
エラー訂正11日〜12日(10日までに送信した分のエラー訂正・請求確定)
入金連合会により異なる(後述)支払基金分は請求月の翌月21日/国保連分は翌月20日

医療保険のオンライン請求の受付時間は、支払基金の案内では5日から7日が8時から21時、8日から10日が8時から24時です。

見落とされがちなのが11日〜12日です。ここは新しいレセプトを自由に送り直せる窓ではなく、10日までに送信したデータのうちエラーで自動確定されなかった分を訂正して請求確定する期間です。支払基金は「自動確定されないエラー分は、11〜12日の間に医療機関・薬局で訂正を行い、請求確定する必要があります」と案内しています。10日に送信して終わりにせず、この2日間を「訂正バッファ」として業務カレンダーに確保しておくと、その場で直せるものが直せます。

⚠️ やってはいけないこと:返戻レセプトを新規に作り直す

医療保険で返戻になったレセプトを再請求するとき、手元で新しく作り直さないでください。 支払基金は次のように案内しています。

新たに再作成されることにより、支払基金において返戻履歴の確認ができないため、「返戻」されたレセプトを再請求される場合は、必ず、返戻ファイルを使用して再請求レセプトを作成されるようお願いいたします。

この案内は「オンライン請求を実施されている保険医療機関及び保険薬局の皆さまへ」として出されたもので、名宛人に訪問看護ステーションは含まれていません。ただし訪問看護についても、返戻ファイルをダウンロードして修正・再請求する運用が国保連から案内されており、扱いは同じです。

なお令和6年10月以降、オンライン請求システムを利用している医療機関等宛ての紙媒体での支払関係帳票および返戻レセプトの送付は廃止されました。 廃止されたのは返戻レセプトだけでなく、当座口振込通知書・増減点連絡書・返戻内訳書などを含む支払関係帳票全体です。

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2. 返戻通知の読み方

2-1. 先に整理しておきたいこと ― 「事由記号」は3種類あります

ここを最初に押さえてください。訪問看護の請求では、アルファベットで示される「事由」が3つの別々の体系で使われます。同じ「A」でも意味がまったく違います。

どの通知に書かれているか記号何を表すか
【介護保険】返戻(保留)一覧表A〜E返戻の原因分類
【医療保険】増減点連絡書A〜D と F・G・H・K査定(減点)の理由
(参考)支払基金の統計上の区分A・B返戻を集計する際の分類

医療保険と介護保険を両方扱う訪問看護では、この3つが同じ月に机の上に並びます。「事由Aが出た」という言い方だけでは、入力誤りのことなのか、保険診療上の適応外という指摘なのか、まったく判断できません。

事業所内で共有するときは「介護のA」「医療の査定のD」のように、必ず保険種別とセットで呼ぶようにしてください。この記事でも以降、【介護保険】返戻事由【医療保険】査定事由と明示して書き分けます。

2-2. 介護保険:返戻(保留)一覧表の3欄を順に見る

国保連から届く「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」は、次の3つの欄を順番に見ます。

① 種別 — どの帳票が返戻・保留になったかを示します。国民健康保険中央会の手引きでは4区分です。

種別内容訪問看護ステーションで出るか
請求明細書(サービス計画費を除く)出る。通常はこれ
給付管理票提出者である居宅介護支援事業所側の帳票
サービス計画費(ケアプラン料)出ない
介護予防ケアマネジメント費請求明細書出ない

② 事由 — A〜Eの5分類です。ここで原因が大きく切り分かります。手引きの原文どおりに読むことが重要なので、定義を引き写しておきます。

【介護保険】返戻事由手引きの定義誰が直すか
A請求明細書等の基本的な項目に対する入力(記入)誤り、入力(記入)漏れ等で、審査処理で一次チェックエラーとなったもの自事業所
B受給者台帳・事業所台帳と請求明細書等を突合し、不一致としてエラーとなったもの自事業所(要:保険者への確認)
C請求明細書に対する給付管理票との突合不一致のもの居宅介護支援事業所との調整が必要
Dサービス計画費に対する給付管理票が未提出のもの居宅介護支援事業所側の事由
E介護給付費等審査委員会で返戻となったもの内容による

この表のDには注意が必要です。 事由Dの定義は「サービス計画費に対する給付管理票が未提出のもの」であって、単に「給付管理票が未提出」ではありません。事由Dを「給付管理票が未提出」とだけ読んでしまうと判断を誤ります。訪問看護の請求明細書に対して給付管理票が提出されていない場合は、事由Dではなく備考欄の「保留」として扱われます。

つまり訪問看護ステーションが「ケアマネジャーに連絡しなければならない」と判断すべきサインは、事由Cと、備考欄の「保留」です。ここを事由Dで待っていると、いつまでも来ません。

③ エラーコード — 具体的に何が起きているかを示す記号です。次章の早見表で引いてください。

AとBなら自事業所で完結します。Cまたは保留が出たら、その時点でケアマネジャーへの連絡が必要だと判断してください。ここを最初に見分けるかどうかで、対応にかかる日数が変わります。

2-3. 明細書側の返戻・保留は、ケアマネジャーの一覧表には載りません

実務上きわめて重要な点ですが、正確に理解しておく必要があります。

愛知県国保連は、給付管理票と請求明細書の事業所番号が一致せず請求明細書側が返戻になったケースについて、「当該エラーは居宅サービス事業所の請求明細書に対しての返戻のため、居宅介護支援(予防)支援事業所等には通知されません」と説明しています。

つまり【介護保険】返戻事由のCや保留で自事業所の明細書が止まっていても、ケアマネジャーの手元の一覧表にはその記録が出ません。 こちらから連絡しないかぎり気づかれず、翌月も同じ返戻が返ってきます。愛知県国保連も、対応として「該当利用者の居宅介護支援事業所又は地域包括支援センターへ連絡をして、給付管理票を国保連合会へ提出するように依頼します」と案内しています。

ただし「給付管理票の返戻はケアマネジャーに通知されない」と一般化するのは誤りです。 給付管理票そのものが返戻になった場合は、種別「給」として提出者である居宅介護支援事業所の一覧表に載ります。国保中央会の手引きも「この一覧表は、この返戻(保留)となった『介護給付費明細書』及び『給付管理票』を各事業所へ通知するために作成しています」としています。

整理するとこうなります。自事業所の明細書が止まっている記録はケアマネジャーには見えないが、給付管理票そのものが返戻された記録はケアマネジャーにも届く。 どちらの状態なのかは種別欄で判別できます。「先方が直してくれるはず」と待っていい局面は限られる、と考えておくのが安全です。第8章に、そのまま使える連絡文のテンプレートを用意しました。

2-4. 医療保険:返戻ファイルと増減点連絡書

医療保険では、オンライン請求システムから返戻ファイルをダウンロードし、返戻内訳書で理由を確認します。

査定された場合は「増減点連絡書」が届きます。ここに書かれているのが【医療保険】査定事由で、返戻事由とは別物です。

ここで1点、補足が必要です。査定事由はA〜Dの4つではありません。 支払基金の「増減点連絡書・各種通知書の見方」(令和8年2月)では、「診療内容に関するもの」と「事務上に関するもの」の2グループに分かれています。

【医療保険】査定事由意味
診療内容に関するもの
A療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの
B療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの
C療養担当規則等に照らし、A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの
D告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの
事務上に関するもの
F固定点数が誤っているもの
G請求点数の集計が誤っているもの
H縦計計算が誤っているもの
Kその他

E・I・Jは欠番です。 「Eが出た」という話が出たら、それは介護保険の返戻事由Eか、別の帳票の記号です。

この分け方には実務上の意味があります。A・B・Cは医学的判断に関わるので、査定に納得できなければ再審査請求で争う余地があります。 一方D・F・G・Hは算定要件の理解不足や計算の誤りなので、自ステーションの運用改善で減らせる領域です。とくにD事由が続いているなら、算定マニュアルの整備を検討する価値があります。

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3. エラーコード早見表

3-1. 介護保険(国保連)でよく出るコード

手元の通知に出ている記号をそのまま引けるように並べました。どの帳票のどの欄を直すかまで書いていますので、そのまま作業に移れます。

コード何が起きているかどこを直すか
12P0受給者台帳に該当する受給者情報が存在しない(市町村の認定情報が未登録)認定申請中の可能性。台帳登録の完了を待って再請求
12PA変更申請中の受給者である(市町村の認定変更が未決定)認定が決定してから再請求。急いで出し直しても再度返戻になる
12P3給付管理票の合計+償還払給付実績の合計が、受給者台帳の区分支給限度基準額を超えている他事業所と計画単位数を調整。ケアマネジャーとの協議が必要
12P4受給者台帳記載の支援事業所番号と一致しない明細書の支援事業所番号欄を確認(介護予防支援事業所を含む)
12Q5既に資格喪失した受給者である転出先の新しい保険者番号に訂正して再請求
1204市町村認定の施設所在保険者番号と一致しない住所地特例の登録内容を保険者に確認
10QE生活保護指定を受けていない事業所のため請求できない生活保護法指定の届出
ANN0同月に該当する給付管理票を提出済み給付管理票の重複。既提出分を確認(請求明細書の同月重複は ANN2)
ANN4既に該当する介護給付費請求明細書が存在する(区間異動)前月の過誤決定通知で取下げ完了を確認してから再請求
ASS0査定後の請求額が計算できない単位数・回数・利用者負担額を再計算
ASSA保険単位数合計・保険請求額・保険利用者負担額が計算値を超過同上
ASS5利用者負担額・保険分請求額が計算値を超過負担割合証を確認して再計算
ASS6負担限度額が市町村認定の負担限度額と相違特定入所者の負担限度額認定の内容を確認
ASSD公費分と保険分の出来高医療費単位数合計が一致しない公費併用分の入力を確認
AEFJ請求された日数が受給可能な日数を超過している(サービス実日数)実日数と算定回数を確認

コードは体系化されているので、意味を推測する助けになります。ただしアルファベット始まりと数字始まりで構造が違います。

アルファベット始まりは頭2文字が誤りの種類を表します。AAは形式誤り、ABは項目属性誤り、ACは二重登録(一次)、ANは二重登録(資格)、ADは台帳突合誤り(一次)、AEはサービス提供年月誤り、ASは計算誤り、ARは償還系誤り、ZZはその他です。

数字始まりは上2桁が関連する台帳を示します。10は事業所基本台帳・サービス台帳、12は受給者台帳、13は法別管理台帳・公費負担者台帳、14は単位数表・サービスコード、15は種類別市町村固有台帳、16は市町村特別給付・地域密着型サービスコード台帳、20は総合事業サービスコード台帳です。そして3文字目のP・Q・Vが台帳突合誤り(資格)を示します。たとえば12P0なら「受給者台帳(12)との突合誤り(P)」と読めます。

本表は北海道国保連(令和6年2月版)、沖縄県国保連(平成30年5月審査分)、宮崎県国保連、高知県国保連(令和7年9月以降審査分)、埼玉県国保連(令和6年5月以降審査分)の公表資料を突き合わせて作成しています。コードの内容は国保連や年度によって差異があるため、実務では必ず提出先の国保連が公開している最新版をご確認ください。手元のコードが本表にない場合も、各国保連の返戻対応マニュアルやエラーコード一覧に掲載されています。

3-2. 医療保険:送信前に弾けるエラーと、返戻になるエラー

ここは他ではあまり解説されていない領域ですが、返戻を減らすうえで効果が大きい部分です。

オンライン請求で送信すると「受付・事務点検ASP」が自動チェックをかけ、結果がエラーコードの番台で分類されて返ってきます。この結果を送信時に開いて直せば、返戻になる前に止められます。

支払基金の凡例をそのまま整理します。

区分コード帯支払基金の凡例
L11000番台医療機関単位でエラーとなっているため、再請求が必要なもの
L22000番台レセプト単位でエラーとなっているため、再請求が必要なもの
L33000番台レセプト内でエラーが確認され、要確認となったもの(返戻となる要確認レセプト)
L44000番台レセプト内でエラーが確認され、要確認となったもの(査定又は返戻若しくは正当となる要確認レセプト)
L484800番台エラーとして連絡しているが、正常分として処理しているので再請求が不要なもの

読み方で2点、注意があります。

ひとつは、L1の凡例が「訪問看護ステーション単位」ではなく「医療機関単位」と書かれていることです。訪問看護向けの一覧でもこの表現なので、L1が出たら「うちのステーション全体で受け付けられていない」と読んでください。

もうひとつは、「受付不能かどうか」はL1〜L4の区分とは別の軸で示されることです。チェック一覧には「受付不能ASP」という独立した列があり、注記は「『受付不能ASP』欄に『●』があるチェックは、訪問看護ステーションの修正を必須とするチェックです」となっています。この●はL1・L2だけでなくL3にも付きます。 つまり「L1・L2は受付不能、L3は返戻」という単純な対応ではありません。手元のリストでは番台ではなく●の有無を見てください。

訪問看護でよく出るチェック項目を挙げます。内容は令和8年7月版の原文に照らして確認したものです。

コード内容
L3943指示期間または特別指示期間の日数が超過(訪問看護指示は6か月超、特別訪問看護指示は14日超の両方を検知)
L3942重複する指示期間または不要な特別訪問看護指示期間の記録/指示期間と特別指示期間の不一致
L2926日付の整合性エラー。原因は12項目あり、指示期間(自)が指示期間(至)より未来、算定年月日が訪問開始年月日より過去、GAF尺度判定年月日の年月が違う、などを含む
L3210実日数を超えた訪問看護基本療養費が算定されている
L3935GAF尺度の記録が必要な療養費が算定されている(精神科訪問看護基本療養費Ⅰ・Ⅲで判定値または判定年月日が未記録)
L3934訪問看護情報提供療養費2を算定した場合に前回算定年月が正しく記録されていない
L3006高齢受給者一般レセプトおよび高齢受給者7割レセプトについて、特記事項に所得区分または多数回該当が記録されていない
L3128特記事項に所得区分が複数種類記録されている
L2149記載要領等において定められていない特記事項コードが記録されている
L3204存在しない傷病名コードが記録されている
L2546公費受給者番号に数字以外が記録されている
L3001患者氏名が記録されていない(訪問看護では氏名が省略または全桁スペース)
L2133生年月日が正しい暦年月日ではない
L1912訪問看護ステーションコードが医療機関マスタに未登録

たとえばL3943は、指示書の期間が長すぎることを機械が教えてくれるものです。特別指示書の14日超だけでなく、訪問看護指示書の6か月超も同じコードで検知されます。 送信時点で気づけば、その場で直せば済みます。ASPの結果を確認する習慣があるかどうかで、防げる返戻の数は変わります。

チェック一覧は年度で改廃されます。 L3943は令和6年7月版には存在せず、当時はL3942が指示期間の重複と不一致をまとめて見ていました。現在は2本に分割されています。またL3942の原因には「指定訪問看護年月が令和8年6月以降の場合」という条件が入っており、改定に合わせてチェックそのものが増えています。 版を確認せずに古い一覧を使い回すと、実際に出ているコードと突き合わせられません。

なお、このPDFは表組みのため機械的なテキスト抽出では行がずれることがあります。コードの意味を確認するときは、必ず項番と並べて前後の行ごと読んでください。

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4. 再請求の手順

医療保険と介護保険では、再請求の手順がまったく別物です。混同しやすいので分けて説明します。

4-1. 介護保険:翌月の請求と一緒に出す

介護保険の再請求はシンプルです。返戻された明細書を修正し、翌月の請求受付期間(1日〜10日)に、その月の通常請求と一緒に提出します。

給付管理票側に誤りがある場合は、給付管理票を作成区分「修正」で訂正します。請求明細書側の誤りなら明細書を訂正します。どちらが原因かは、返戻(保留)一覧表の「種別」欄で判別してください。

なお10日という締切は厳格です。東京都国保連は「受付最終日である10日を過ぎて本会が受付けた場合は、翌月受付の扱いとなります」「郵送等の場合、10日必着となります」と案内しています。

4-2. 医療保険:返戻ファイルをダウンロードして再送する

オンライン請求の場合、返戻ファイルをダウンロードし、それを使って修正・再送します。繰り返しになりますが、新規に作り直すと支払基金側で返戻履歴が確認できなくなるため避けてください。

返戻ファイルのダウンロード可能期間は、審査支払機関によって案内が異なります。千葉県国保連は「請求した翌月5日から翌々月の月末まで」、東京都国保連は「毎月5日〜月末」で掲載期間3か月・期間内なら何度でもダウンロード可、愛知県国保連は3か月を過ぎたものはシステムから削除されるとしています。ここは断定できませんので、提出先の案内を必ずご確認ください。

なお何度でもダウンロードできる場合、重複して再請求してしまう事故が起こりえます。 東京都国保連も「重複再請求にご留意ください」と注意を添えています。

4-3. 今月の10日に間に合わなかった場合

月初の10日間は請求業務が集中する時期です。そこに返戻対応が重なって、どうしても間に合わないことがあります。

結論から言うと、次の受付期間に回すことになります。 請求権が消えるわけではありません。ただし入金はさらに1サイクル、およそ1か月遅れます。介護保険なら翌々月の1日〜10日、医療保険なら翌月の5日〜10日が次の機会です。

ここで重要なのは、返戻を放置したまま忘れないことです。時効は医療保険5年・介護保険2年と幅がありますが、月々の返戻が積み上がると、どれが未処理なのか把握できなくなります。間に合わないと判断した時点で、第9章で紹介する返戻管理台帳に記録し、翌月の対応リストに載せてください。

介護保険で時効が到来した場合の取扱いについて、岩手県国保連は「返戻(保留)一覧表には、返戻理由『事由=E、内容=時効による却下』と記載されます」と説明しています。ただしこれは同連合会が独自に作成した説明部分の記述で、国保中央会の全国統一の手引きに時効の記載はありません。 全国共通の取扱いとは限らないため、自事業所の提出先で確認してください。

4-4. 【重要】訪問看護ステーションは、再審査請求にオンラインの選択肢がありません

ここが訪問看護に固有の落とし穴です。オンライン請求が進んだ今も、再審査等請求(査定に納得できない場合の不服申立)だけは扱いが違います。

支払基金の案内には次のように書かれています。

オンライン請求医療機関等(訪問看護ステーションを除く)は、原則、オンライン請求システムによりご提出をお願いします

訪問看護ステーションは紙の「再審査等請求書」を郵送により提出願います。

別のページでも「※訪問看護ステーションは紙の『再審査等請求書』により請求する方法のみとなります」と明記されています。支払基金が公開している「医療機関再審査等請求ファイル作成ツール」の操作手順書(令和8年3月版)でも、点数表の選択肢は医科・歯科・調剤の3種のみで、訪問看護の入力経路そのものが用意されていません。 国保連側も、愛知県国保連が「訪問看護ステーションの再審査請求はオンライン請求システムからは行うことはできません」としています。

正確に言えば、医科・歯科・薬局にも郵送になる場合はあります。支払基金は「資料等を添付した上で再審査請求される場合は、郵送にてご提出ください」としているためです。違いは、他業態は「原則オンライン・例外は郵送」であるのに対し、訪問看護ステーションはオンラインという選択肢が用意されていないという点です。

「オンライン請求にしたのだから再審査もシステム上でできるはず」と思い込んでいると、手続きの存在自体に気づかないまま期限を迎えることになります。

当月請求分のレセプトの取下げ依頼も、システム上では完結しません。 支払基金は「医療機関等照会連絡先(問い合わせ先)検索により、審査事務担当者あてお電話でご連絡ください」としています。ここで注意が要るのは、電話取下げには月ごとの期限日があり、都道府県ごとに違うことです。期限は各都道府県情報ページの「支払基金からのご案内」に掲載されています。前月以前の請求分は電話ではなく、書面の手続きになります。

再審査の申出は原則として6か月以内とされています。ただしこれは法律上の期限ではありません。支払基金は「原則6か月以内に申出いただくよう依頼しているところです」としており、根拠となる昭和60年4月30日の通知(保険発第40号・庁保険発第17号)も「支払基金が定めた申出期間(原則6ヵ月以内)を遵守するよう努められたいこと」という表現です。6か月を過ぎたら一切受け付けられない、という性質のものではありませんが、遅れるほど不利になると考えて動くのが実務的です。

4-5. 「返戻の再請求」ではなく「月遅れ請求」になるケース

見落とされやすい区別です。支払基金と国保連の間で提出先を付け替える場合や、異なる点数表で請求し直す場合は、返戻の再請求ではなく、新たにレセプトを作成して「月遅れ請求」として提出します。返戻ファイルを使い回してはいけません。

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5. 返戻・保留・査定・過誤の違い

似た言葉が並ぶうえ、医療保険と介護保険で用語も帳票も別なので、混乱しやすい領域です。お金がどう動くかで整理すると分かりやすくなります。

お金の動き対応
返戻その月は0円。全額入らない修正して再請求
保留(介護のみ)その月は0円。給付管理票が出れば後で支払居宅介護支援事業所に給付管理票の提出・修正を依頼
査定(減点)減点分だけ差し引かれて入金納得できなければ再審査請求(原則6か月以内)
過誤いったん入金済み。後で相殺される保険者へ過誤申立 → 取下げ → 再請求

5-1. 「保留」を放置すると返戻に変わります。期間は国保連ごとに違います

介護保険の「保留」は、請求明細書自体に誤りはないものの、給付管理票が未提出または返戻のために支払が行われない状態です。国保中央会の手引きは「決められた期間内に給付管理票が提出されれば国保連合会から事業所へ支払いが行われる」としています。

ここで注意が必要です。 保留期間を「2か月」と書いている解説も見られますが、同じ手引きには「※保留の有無、期間は国保連合会ごとに異なる」という但し書きが明記されています。

実際に公表資料を並べると、こうなります。

国保連保留期間返戻に転じる時期
京都府2か月3か月目に返戻
愛知県3か月最初に保留となった翌々々月に返戻
滋賀県1か月翌審査月に返戻(他都道府県の被保険者は保留なし=請求月に返戻
宮城県通常2か月(各県で違うと明記)

「通常2か月」という説明は複数の連合会資料に共通のひな型として現れますが、愛知県は3か月、滋賀県は1か月です。 滋賀県の「他都道府県の被保険者には保留期間がない」という運用は、広域でサービスを提供している事業所には特に影響します。

つまり「まだ保留だから来月まで待てる」という判断は、提出先の国保連の運用を確認していないかぎり成り立ちません。 前節で触れたとおり、自事業所の明細書が止まっている記録はケアマネジャーの一覧表には載りません。待っていても状況が動かない可能性が高いということです。保留の通知を見たら、その時点で連絡を入れてください。

5-2. 過誤には4つの落とし穴があります

過誤は「すでに支払を受けた後で誤りに気づいた」場合の手続きです。返戻とは性質が違い、注意点がいくつかあります。

まず、明細書単位で処理されます。 1枚の明細書に複数のサービスが載っていると、誤っていない分も含めてすべてが過誤処理の対象になります。

次に、支払が確定していることが前提です。 京都府国保連は「過誤処理できるのは、支払決定された請求明細書のみ」としています。長崎県国保連も「過誤は支払いが行われた請求に対して行うものだからです。返戻になった請求には過誤を行わず、必要な場合は再請求をします」と説明しています。保留中のものや当月請求分は過誤処理できません。

そして見落とされやすいのが、請求明細書の過誤処理と給付管理票の修正は、同じ月にはできないという点です。京都府国保連・長崎県国保連いずれも「同月にはできません」としています。居宅介護支援事業所と事前に段取りを決めておく必要があります。

最後に資金繰りの話です。過誤調整額が当月請求額を上回ると、事業所から国保連へ振り込む必要が生じます。 金額の大きい過誤をまとめて出すと、その月の入金がマイナスになりうるということです。

なお過誤申立の締切と方法は保険者・国保連によって異なります。国保中央会の手引きにも「過誤申立ての方法については、過誤該当請求明細書の保険者へお問合せください」とあります。自事業所の保険者にご確認ください。

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6. 入金はいつになるか

返戻の本当の痛みは、手間が増えることより入金がずれることにあります。ここを数字で把握しておくと、経営判断が変わります。

6-1. 介護保険:返戻1件で入金が約1か月ずれます

4月にサービスを提供した分を例にします。ここでは支払が「提出月の翌月末」の連合会を前提にします。

時期通常の流れ返戻になった場合
4月サービス提供サービス提供
5月1〜10日請求請求
5月末ごろ審査結果通知返戻(保留)一覧表が届く
6月1〜10日修正して再請求
6月末ごろ入金入金なし
7月末ごろ入金

4月分の売上が、本来6月末に入るはずが7月末にずれます。提供から入金まで3か月かかる計算です。

ただし支払日は連合会によって1か月近く違います。 ここは自事業所の日程で置き換えてください。

国保連支払日
岩手県提出月の翌月末(例:4月提出 → 5月29日)
東京都請求月と同じ月の23日ごろ(原則23日。休日等は直後の平日。26日以降になる場合は23日の直前の平日)
宮崎県審査結果通知の送付が翌月29日前後、支払が翌々月の銀行最終営業日前日
北海道審査結果通知が4日前後、支払予定日が27日前後

東京都のように請求月と同月に支払われる連合会では、返戻による遅れの体感も変わります。提出先の日程表を一度確認して、自事業所版の逆算表を作っておくことをおすすめします。

6-2. 医療保険:支払は早期化されていますが、条件があります

訪問看護療養費の支払は令和6年7月請求分から早期化されました。ただし、誰に対する話なのかを正確に押さえる必要があります。

千葉県国保連は「オンライン請求の届出をされた訪問看護ステーションに限り、支払日が請求月の翌月20日となります。(20日が土日祝の場合は、翌営業日)」としています。つまり国保・後期高齢者医療分(国保連)については、オンライン請求の届出をしていることが条件です。

一方、社保分(支払基金)の支払予定日は請求月の翌月21日で、訪問看護療養費に独立の日程はなく医科と同じです。

支払が早くなった分、返戻で1サイクル遅れたときの落差は大きくなります。

6-3. 返戻率のベンチマークは見つかりませんでした

「返戻率が何%以上だと多いのか」を知りたくなるところですが、訪問看護に限定した返戻率を示す公的な統計を見つけることはできませんでした。

ここは正確に書いておきます。支払基金は返戻の統計そのものを公表しています。基金年報には「管掌別診療報酬等返戻状況」「支部別医療保険分診療報酬等返戻状況」という表があり、訪問看護療養費も件数・金額の公表区分として存在します。したがって「返戻の統計がない」わけではありません。 見つからなかったのは、訪問看護療養費に絞った返戻率のクロス集計です。存在しないことの証明はできませんので、「公表されているものを確認できなかった」という言い方にとどめます。

いずれにしても、自ステーションで前月比・前年同月比の返戻件数と返戻金額を追うのが、現状で最も確実な指標です。

返戻の規模感を示す公開データはあります。支払基金の発表によれば、オンライン資格確認の導入により原審査での返戻が令和3年10月からの7か月で約25.5万件減少し、12か月分の推計では約43.8万件の減少が見込まれるとされました。

その内訳が示唆的です。12か月推計の43.8万件のうち、約34.4万件が資格喪失後受診・本人家族誤りによるもの、約9.4万件が記載誤りによるものでした(7か月実績の内訳は約20.0万件と約5.5万件)。つまり減った返戻の8割近くが資格関係です。裏を返せば、返戻の最大の塊は資格確認にあったということになります。

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7. 訪問看護に固有の返戻要因【医療保険】

一般的なレセプト解説では扱われない、訪問看護ならではの原因を挙げます。以下の要件は令和8年3月5日発出・令和8年6月1日適用の留意事項通知(保発0305第19号)で確認したものです。

7-1. 訪問看護指示書の有効期限切れ・期間外の算定

指示書の有効期限は主治医が定めますが、6か月を限度とします。指示期間外の訪問を算定していると返戻になります。前章のとおり、6か月を超えた指示期間はASPのL3943でも検知されます。

指示書を交付できる医師の範囲も押さえてください。留意事項通知は「保険医療機関の保険医又は介護老人保健施設若しくは介護医療院の医師に限る」としており、介護老人保健施設・介護医療院の医師については「退所時の場合」に限られます。

そして、複数の医師から交付された指示書に基づいて訪問看護を行うことはできません。 ただし例外があります。近畿厚生局のFAQは「同一の保険医療機関において同一の診療科に所属する複数の医師が、主治医として利用者の診療を共同で担っている場合については、当該複数の医師のいずれかにより交付された訪問看護指示書に基づき、指定訪問看護を行うことは可能です」としています。複数の医療機関にかかっている利用者では、どの医師が主治医なのかの確認が必要です。

7-2. 特別訪問看護指示書の制限 ― 月2回になる場合があります

特別訪問看護指示書は返戻が起きやすい領域です。留意事項通知の規定はこうです。

交付の日から起算して14日以内に行った指定訪問看護について、月1回に限り、14日を限度として算定します。そして気管カニューレを使用している状態にある者、または真皮を越える褥瘡の状態にある者については、月2回です。

「原則として月1回」だけを覚えていると、月2回算定できるケースを取りこぼします。逆に、この2類型に当たらない利用者で月2回算定すれば返戻になります。なお、基準告示第2の1に規定する疾病等の利用者(別表第七・別表第八)は、この特別訪問看護指示書の規定の対象外です。

過去に近畿厚生局は、特別指示書を「恒常的かつ機械的に交付する場合など、望ましくない場合があるとされていることに注意を要する」とも指摘していました。返戻だけでなく、実地指導の観点でも見られる部分だということです。

7-3. 訪問回数の上限

原則として利用者1人につき、週3日が限度です。留意事項通知は、訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)、精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅲ)を算定する日と合わせて週3日を限度としています。

2点、細かいですが実務に効く注意があります。ひとつは「ハを除く」という限定で、専門の研修を受けた看護師による訪問はこの合算に含まれません。もうひとつは、週4日以上算定できる対象が「別表第七」だけではないことです。基準告示第2の1は、特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者と、別表第八に掲げる者の両方を挙げています。末期の悪性腫瘍や難病等だけを思い浮かべていると、別表第八の該当者を取りこぼします。

7-4. 医療保険と介護保険、どちらで請求すべきかの判定ミス

原則として介護保険の給付は医療保険の給付に優先します。 算定告示は「介護保険法に規定する要介護被保険者等については、算定しないものとする」としています。

その例外、つまり要介護被保険者等について医療保険で訪問看護を算定できる場合は、基準告示第4の1で3つ挙げられています。

  1. 特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を行う場合
  2. 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者に対する指定訪問看護を行う場合
  3. 精神科訪問看護基本療養費が算定される指定訪問看護を行う場合

3つ目は見落とされやすい要件です。 精神科訪問看護は実務上よく使われる類型なので、ここを知らないと保険区分の判定を誤ります。

そして前節と混同しやすい点を1つ。週4日以上の算定要件には別表第七と別表第八の両方が入りますが、医療保険に切り替わる要件(基準告示第4の1)に入っているのは別表第七だけです。 別表第八のみに該当する要介護者は、週4日以上の訪問は可能でも、医療保険での算定にはなりません。ここは混ざりやすいので、判定の際に分けて考えてください。

実務上つまずきやすいのは、特別訪問看護指示書の期間中は医療保険に切り替わるのに、介護保険のまま請求してしまうケースです。特別指示書を受け取った時点で保険区分の切替を記録に残しておかないと、月末の請求作業では気づけません。

7-5. 精神科訪問看護のGAF尺度

精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合、GAF尺度により判定した値の記載が必要です。記載先は訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書の3つで、月の初日の指定訪問看護時における判定値を記載します。

記録がない場合、ASPのL3935で「判定値または判定年月日のいずれかが記録されていない」として検知されます。評価と記録の運用が定着していないと、繰り返し発生します。

なお精神科訪問看護には自立支援医療や精神科特別訪問看護指示書など固有の論点が他にもありますが、本記事では扱いきれないため別稿に譲ります。

7-6. 令和8年6月改定で増えた返戻リスク

令和8年度診療報酬改定のうち訪問看護療養費関係は、令和8年6月1日から適用されています。 4月1日ではありません。改定の内容そのものは本記事の範囲を超えますが、返戻の観点から押さえておくべき変更が2つあります。

ひとつは包括型訪問看護療養費の新設です。高齢者向け住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが、その住まいに居住する利用者(別表第七・別表第八・特別訪問看護指示書の対象者)に対して24時間体制で計画的または随時の対応による頻回の訪問看護を行った場合に、1日当たりで算定する区分が新しく設けられました。単一建物居住者の人数と訪問時間で報酬が分かれます。

もうひとつは訪問看護管理療養費の再編です。月の初日の評価を充実させたうえで、月の2日目以降は管理療養費1と2を統合し、施設基準の届出が不要になりました。 そのうえで1月当たりの訪問日数と単一建物に居住する利用者数によって評価が細分化されています。

新しい区分は、算定要件の理解が追いつく前に請求月が来ます。 実際、支払基金のASPチェック一覧も改定に合わせて更新されており、L3942の判定条件には「指定訪問看護年月が令和8年6月以降の場合」という条項が加わりました。改定直後の数か月は、査定事由D(告示・通知の算定要件に合致していない)が増えやすい時期だと考えて、算定根拠の記録を厚めに残しておくのが安全です。

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8. 訪問看護に固有の返戻要因【介護保険】

8-1. 給付管理票との不突合

愛知県国保連が「よくある返戻」として名指ししているのは、次の3点の不一致です。

  • 事業所番号
  • サービス種類
  • 計画単位数

繰り返しになりますが、自事業所の明細書が返戻・保留になっている記録は、ケアマネジャーの一覧表には載りません。こちらから連絡する必要があります。

8-2. ケアマネジャーへの連絡テンプレート

連絡のたびに文面を考えるのは手間なので、定型を作っておくと早くなります。そのまま使える例を置いておきます。

○○居宅介護支援事業所 ケアマネジャー ○○様

いつもお世話になっております。○○訪問看護ステーションです。

○月サービス提供分の介護給付費請求について、国保連合会より返戻の通知がありました。 給付管理票と請求明細書の突合で不一致が生じているとのことです。

・利用者名:○○ ○○様(被保険者番号:○○○○○○○○○○) ・サービス提供月:令和○年○月 ・返戻事由:C(請求明細書と給付管理票の不一致) ・エラーコード:○○○○ ・当ステーションの請求内容:  サービス種類 ○○/計画単位数 ○○単位/事業所番号 ○○○○○○○○○○

お手数ですが給付管理票の内容をご確認いただき、修正が必要な場合は ○月10日までに作成区分「修正」でのご提出をお願いできますでしょうか。

なお、当ステーションの請求明細書に対する返戻の通知は居宅サービス事業所側に 送付される仕組みのため、貴事業所にはこの記録が届いていない可能性がございます。

ご不明な点がございましたらご連絡ください。

最後の一文を入れておくと、「そちらの入力ミスではないか」という不要な行き違いを避けられます。返戻の記録が手元にないケアマネジャーにとっては、まったく身に覚えのない連絡になるためです。

8-3. 認定情報に関する返戻(12P0・12PA)

要介護認定の状況に起因する返戻には、他とは違う特徴があります。急いで出し直しても、再度返戻になります。

12P0(受給者台帳に情報が存在しない)は、認定申請中で台帳登録が完了していない状態です。12PA(変更申請中の受給者)も同様で、認定が決定してからでないと通りません。区分変更申請中の利用者で発生しやすくなります。

「市町村の認定情報が未登録」「市町村の認定変更が未決定」といったメッセージも同じ性質のものです。

このタイプは待つのが正解です。 それを知らないと、毎月出し直して毎月返戻される、という消耗が続くことになります。台帳登録の完了見込みを保険者に確認したうえで、次回請求に回してください。

8-4. 区分支給限度基準額の超過(12P3)

複数事業所を利用している場合、他事業所の計画単位数と合算して限度額を超えると返戻になります。自事業所の請求内容だけを見ていても原因が分からないため、ケアマネジャーとの調整が必要です。

8-5. 体制届の未提出・変更漏れ

加算の算定要件を満たしていても、体制届が出ていなければ算定できません。人員体制が変わったタイミングで届出を忘れると、その月以降の分がまとめて返戻になります。

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9. 返戻を繰り返さない月次オペレーション

返戻対応を「起きたら直す」で回している限り、件数は減りません。発生する前に潰す工程を、月次業務に組み込む必要があります。

9-1. 月次カレンダー

時期やること
訪問の都度オンライン資格確認で資格を確認(枝番まで)。転居・退職・後期高齢者移行・生活保護の開始/廃止情報をケアマネ・家族から拾う導線をつくる
特別指示書を受けた時点その場で保険区分の切替(介護→医療)を記録に残す。あわせて月1回か月2回の対象かを確認
月末〜翌月4日指示書の有効期間(6か月)と訪問実績を突合/特別指示書の14日ルール確認/加算の算定根拠書類の有無/医療・介護の適用区分/居宅介護支援事業所と事業所番号・サービス種類・計画単位数を事前突合
5〜10日送信後、受付・事務点検ASPの結果を必ず開いて確認。「受付不能ASP」に●が付くチェックは修正が必須
11〜12日エラー分の訂正と請求確定。10日までに送った分で自動確定されなかったものを片づける
月末返戻(保留)一覧表・返戻内訳書をその月のうちに開封・仕分け。種別(請/給)と【介護保険】返戻事由A〜E、備考の「保留」で振り分ける
支払通知到着後増減点連絡書の【医療保険】査定事由を判別。D・F・G・H(算定要件不備・計算誤り)は自ステーションで防げる領域として運用改善に回す。A・B・Cは医学的判断なので再審査を検討する

9-2. 返戻管理台帳をつくる

返戻を「あとで直す」で塩漬けにしないために、最低限これだけの項目を記録します。

実績月/利用者名/保険種別/事由記号/エラーコード/原因の分類/対応日/再請求月/入金月

3か月も続けると、自ステーションで繰り返し出ている返戻のパターンが見えてきます。 資格関係が多いのか、指示書関係が多いのか、給付管理票の不突合が多いのかで、打つべき手はまったく違います。訪問看護に絞った返戻率のベンチマークが見つからない以上、自分のところの推移を追うのが最も確実です。

9-3. 請求業務の属人化という構造問題

ここまで書いてきた対策は、どれも「やる人がいる」ことを前提にしています。ところが訪問看護ステーションの人員構成を見ると、その前提が成り立ちにくいことが分かります。

厚生労働省の調査によれば、訪問看護ステーションの従事者20万229人のうち、事務職員を含む「その他の職員」は1万6,917人です。事業所数1万8,042で割ると、1事業所あたり約0.9人。しかもこの区分には事務職員以外も含まれるため、専任の事務職員がいる事業所はさらに少ないことになります。

つまり請求業務は、1人の事務職員か、あるいは管理者が訪問の合間に担っているのが標準的な姿です。この構造には固有のリスクがあります。

請求は1日〜10日という固定の期間に集中します。その時期に担当者が休むと、業務そのものが止まります。 代わりに入れる人がいないためです。

退職すればノウハウごと消えます。エラーコードの読み方も、ケアマネジャーとの調整の勘所も、引き継ぎ書には書ききれません。

そして比較対象がないため、自分のところの返戻が多いのか普通なのかを誰も検証できません。 外部の目が入らないかぎり判断材料がないままになります。

9-4. 打ち手の選択肢

対策は大きく3つあります。どれが適しているかは、返戻の原因がどこにあるかで変わります。

初期コスト効果が出るまで属人化の解消向いているケース
社内で仕組み化3〜6か月△(担当が替わると再構築)事務職員が複数名いる
請求ソフトの導入1〜3か月△(操作は人に残る)入力ミス起因の返戻が多い
請求業務の外部委託即時〜1か月事務が1名以下/管理者が請求も兼務

ソフトを導入すれば入力ミス由来の返戻は減ります。ただし指示書の期限管理やケアマネジャーとの調整といった判断業務は人に残ります。 返戻の原因が判断ミス側にあるなら、ソフトだけでは解決しません。前節の返戻管理台帳をつけて原因の内訳を把握してから選ぶのが、遠回りに見えて確実です。

逆に、事務担当が実質いないステーションでは、仕組み化に割ける時間そのものがありません。この場合は外部委託のほうが早く効きます。

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10. よくある質問

Q. 返戻の通知はいつ届きますか?

介護保険はサービス提供月の翌月末ごろ、医療保険は請求月の翌月です。国保連によって数日前後します。

Q. 今月の10日に間に合いません。どうなりますか?

次の受付期間に回ります。請求権が消えるわけではありませんが、入金はさらに1か月ほど遅れます。忘れないよう返戻管理台帳に記録し、翌月の対応リストに載せてください。

Q. 返戻を放置するとどうなりますか?

その分の報酬は入りません。時効(医療保険5年・介護保険2年)を過ぎると請求権そのものが消滅します。なお介護予防・日常生活支援総合事業費は5年で、介護給付費とは時効が異なります。

Q. 返戻されたレセプトを作り直して出してもいいですか?

医療保険では避けてください。支払基金は「必ず、返戻ファイルを使用して再請求レセプトを作成されるようお願いいたします」と案内しています。新規作成すると返戻履歴が確認できなくなります。書面請求の場合も、返戻付せんをつけたまま訂正して再請求するのが原則です。

Q. 「保留」と「返戻」は違うのですか?

違います。保留は請求明細書に誤りはないものの、給付管理票が未提出・返戻のために支払われない状態です。保留期間は国保連ごとに異なります。 京都府は2か月、愛知県は3か月、滋賀県は1か月(他都道府県の被保険者は保留なし)です。国保中央会の手引きにも「保留の有無、期間は国保連合会ごとに異なる」と明記されています。提出先の案内をご確認ください。

Q. 「事由A」と書かれていますが、何のことですか?

訪問看護では事由記号が3つの体系で使われるため、どの通知に書かれたAかで意味が変わります。介護保険の返戻(保留)一覧表なら「請求明細書等の基本的な項目に対する入力誤り・記入漏れ等」、医療保険の増減点連絡書なら「医学的に保険診療上適応とならない」という査定理由です。詳しくは2章をご覧ください。

Q. 増減点連絡書の査定事由はA〜Dの4つですか?

いいえ。A〜Dは「診療内容に関するもの」の4分類で、これに加えて「事務上に関するもの」としてF(固定点数の誤り)・G(請求点数の集計誤り)・H(縦計計算の誤り)・K(その他)があります。E・I・Jは欠番です。

Q. 介護保険の返戻事由Dが出れば、給付管理票が未提出だと分かりますか?

事由Dの定義は「サービス計画費に対する給付管理票が未提出のもの」です。訪問看護の請求明細書に対して給付管理票が提出されていない場合は、事由Dではなく備考欄の「保留」として扱われます。ケアマネジャーへの連絡が必要だと判断するサインは、事由Cと備考の「保留」です。

Q. 査定に納得できない場合はどうすればいいですか?

再審査請求を行います。支払基金への申出は原則6か月以内とされていますが、これは法律上の期限ではなく「遵守するよう努められたい」とされた申出期間です。訪問看護ステーションには再審査等請求のオンラインの選択肢がなく、紙の再審査等請求書を郵送する必要がある点にご注意ください。

Q. 利用者から受け取った自己負担分はどうなりますか?

請求内容の誤りにより自己負担額が変わる場合、利用者への返金または追加請求が必要になります。返戻の修正が単位数・回数に及ぶときは、必ず自己負担額への影響を確認してください。金額が変わるとご家族への説明も要るため、修正内容が確定した時点で早めに連絡するほうが波風が立ちません。

Q. 給付管理票の返戻は、ケアマネジャーにも通知されますか?

給付管理票そのものが返戻になった場合は、種別「給」として提出者である居宅介護支援事業所に通知されます。一方、自ステーションの請求明細書が返戻・保留になっている記録は、ケアマネジャーの一覧表には載りません。 この場合はこちらから連絡する必要があります。

Q. 令和8年6月の改定で返戻は増えますか?

改定と返戻件数の関係を示す公的データはありません。ただし包括型訪問看護療養費が新設され、訪問看護管理療養費が再編されたため、算定要件の理解が追いつかないうちは査定事由D(算定要件に合致していない)が出やすくなると考えられます。算定根拠の記録を厚めに残しておくことをおすすめします。

Q. 返戻が多いと実地指導の対象になりますか?

返戻件数そのものが指導基準として公表されているわけではありません。ただし【医療保険】査定事由のD(算定要件に合致していない)が続く場合、算定要件の理解や記録の整備に課題があることを示すため、体制を見直す価値はあります。

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11. まとめ

要点を整理します。

まず保険種別を確定させる。 医療保険と介護保険では通知も手順も締切も時効も別物です。介護保険でも、総合事業費は時効が5年で介護給付費と違います。

事由記号は3種類あることを忘れない。 同じ「A」でも、介護の返戻事由なのか医療の査定事由なのかで意味がまったく違います。医療の査定事由はA〜Dだけでなく、事務上のF・G・H・Kもあります。

介護保険は種別と事由で切り分ける。 事由Cと備考の「保留」が、ケアマネジャーへ連絡すべきサインです。事由Dは「サービス計画費に対する」給付管理票の未提出なので、訪問看護の明細書では通常出ません。自事業所の明細書が止まっている記録はケアマネジャーには見えないので、こちらから連絡します。

保留期間は国保連ごとに違う。 2か月と決めつけないでください。1か月の連合会もあり、他都道府県の被保険者には保留期間がない連合会もあります。

医療保険は返戻ファイルを使って再請求する。 新規作成は避けてください。そして再審査請求には、訪問看護ステーションだけオンラインの選択肢がありません。紙・郵送です。

受付・事務点検ASPの結果を必ず開く。 「受付不能ASP」に●が付くチェックは修正が必須です。番台ではなく●の有無を見てください。送信して終わりにしないことです。

11日〜12日を訂正の時間として空けておく。 ここは新規に送り直す窓ではなく、10日までに送った分のエラーを片づける期間です。

令和8年6月改定への追随を怠らない。 包括型訪問看護療養費の新設と管理療養費の再編があり、ASPのチェック項目も更新されています。算定根拠の記録を厚めに残してください。

返戻管理台帳をつける。 訪問看護に絞ったベンチマークが見つからない以上、自ステーションの推移を追うのが最も確実です。3か月続ければパターンが見えます。

返戻は「事務のミス」として個人の注意力の問題にされがちです。しかし原因を分解していくと、指示書の期限管理、保険区分の判定、改定への追随、ケアマネジャーとの連携といった、担当者1人の注意力ではカバーしきれない範囲に行き着きます。前述のとおり訪問看護ステーションの事務体制は1事業所あたり1人に満たないのが実情です。仕組みで受け止める以外に、返戻を減らす道はありません。

請求業務や返戻対応を外部に任せるという選択肢について、対応できる範囲や進め方をご案内しています。

訪問看護の請求業務・返戻対応の外部委託について見る


ご利用にあたって

本記事は2026年7月時点で公開されている社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会・厚生労働省・地方厚生局の資料にあたって作成しています。そのうえで、次の4点にご留意ください。

エラーコードと運用は、国保連や年度によって異なります。 本記事のコード表は複数の国保連の公表資料を突き合わせて作成していますが、コードの追加・改廃があるほか、処理日程・締切・帳票の様式・保留期間も連合会ごとに違います。必ず提出先の国保連が公開している最新版をご確認ください。

制度は改定されます。 本記事は令和8年6月1日適用の令和8年度診療報酬改定と、支払基金のチェック一覧 令和8年7月版・増減点連絡書の見方 令和8年2月を反映していますが、その後の事務連絡や疑義解釈で手続きや期限が変わることがあります。本記事の内容が最新である保証はありません。

記載に誤りが含まれている可能性があります。 原文にあたって確認していますが、条文や資料の読み取りを誤っている箇所があるかもしれません。とくに表組みのPDFは機械的な読み取りで行がずれることがあるため、コードの意味を確認される際は原本の項番と並べてご覧ください。

再請求の可否や期限は、最終的にご自身で確認し、判断に迷う場合は提出先にご照会ください。 窓口は次のとおりです。

確認したいこと窓口
医療保険の請求・返戻・再審査社会保険診療報酬支払基金(国保・後期高齢者医療は国保連合会)
介護保険の請求・返戻・過誤・保留期間国民健康保険団体連合会、保険者(市町村)
算定要件の解釈地方厚生局(医療保険)、指定権者(介護保険)

照会した内容と回答は記録に残しておくことをおすすめします。後の実地指導で、そう判断した根拠を説明できます。


参考・出典一覧

社会保険診療報酬支払基金

厚生労働省・地方厚生局

国民健康保険中央会・各都道府県国保連

自治体