特別管理加算は、医療保険にも介護保険にもあります。名前がまったく同じで、対象になる状態もよく似ています。だから「一度覚えれば両方いける」と思いやすいのですが、対象者のリストは一致していません。
医療保険の対象になっていて、介護保険では対象になっていない指導管理が2つあります。しかも令和8年6月の改定で、その差がもう1つ増えました。
この記事は、医療保険と介護保険の条文をいったん横に並べ直して、どこが同じでどこが違うのかを確かめます。金額・対象者・届出・記録の要件は、すべて告示と通知の原本にあたって確認しました。章ごとに出典を明記しています。
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| いまの状況 | 進む先 |
|---|---|
| 金額と算定単位だけ確認したい | 2章 早見表 |
| 令和8年6月改定で何が変わったか知りたい | 3章 改定の内容 |
| 医療と介護でどこが違うのか確かめたい | 4章 対象者の対照表 |
| ⅠとⅡの呼び方で混乱している | 5章 呼称の落とし穴 |
| 届出の様式と提出先を知りたい | 6章 届出 |
| 特別管理指導加算と混同している | 7章 2つの違い |
| 記録に何を残せばよいか知りたい | 8章 算定と記録 |
1. 結論:同じ名前で、中身が違います
先に結論を書きます。
特別管理加算は医療保険と介護保険の両方にあり、名前は同じですが、対象者の範囲が一致していません。
具体的には、次の2つの指導管理が医療保険の対象になっていて、介護保険の対象になっていません。
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理(令和8年6月改定で医療保険側に追加されたもの)
ただし、この2つは差の性格が違います。 ここを混同すると判断を誤るので、先に整理しておきます。
人工呼吸器を使用している状態の利用者は、要介護認定を受けていても医療保険の訪問看護になります。 介護保険の告示は、訪問看護費に関する「厚生労働大臣が定める疾病等」の末尾に「人工呼吸器を使用している状態」を挙げています。つまり、介護保険の特別管理加算のリストに在宅人工呼吸指導管理がないのは、抜けているのではなく、その利用者がそもそも介護保険の訪問看護にならないからです。「介護保険で人工呼吸器の利用者を担当しているのに算定していなかった」という取りこぼしは、原則として起きません。
一方、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は事情が違います。 こちらは上記の疾病等に含まれていないため、介護保険の訪問看護でありえます。それなのに介護保険の特別管理加算の対象には入っていません。こちらが実務上の本当の差です。
さらに、同じ「点滴」でも条件の書き方が違います。医療保険は「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」、介護保険は「点滴注射を週三日以上行う必要があると認められる状態」です。
介護保険での経験をそのまま医療保険に当てはめると、算定できるはずのものを取りこぼします。 逆も同じで、両者は分けて覚える必要があります。
もうひとつ、混乱の原因になっているものがあります。「特別管理加算Ⅰ・Ⅱ」という呼び方は、介護保険の区分名です。 医療保険側にⅠ・Ⅱという法令上の区分名はありません(5章)。
以降で、金額から順に整理していきます。
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2. 金額と算定単位の早見表
まず金額です。医療保険は「円」、介護保険は「単位」で、算定の考え方も少し違います。
| 医療保険 | 介護保険 | |
|---|---|---|
| 加算する先 | 訪問看護管理療養費 | 訪問看護費(その月の1回目の訪問日) |
| 高いほう | 5,000円 | 特別管理加算(Ⅰ)500単位 |
| 低いほう | 2,500円 | 特別管理加算(Ⅱ)250単位 |
| 算定単位 | 月1回に限り | 1月につき |
| 区分の呼び方 | 重症度等の高いもの/それ以外 | (Ⅰ)/(Ⅱ) |
| 届出 | 必要(地方厚生局) | 算定要件ではないが届け出る |
医療保険の告示は、金額をこう定めています。
特別管理加算として、月1回に限り、2,500円を所定額に加算する。ただし、特別な管理を必要とする利用者のうち重症度等の高いものとして別に厚生労働大臣が定める状態等にある利用者については、5,000円を所定額に加算する。
なお、特別管理加算の対象は別表第八に掲げる者で、特別訪問看護指示書が交付されていることは要件に入りません。気管カニューレを使用している利用者に特別指示書が出ている場合も、加算が取れる理由は気管カニューレのほうです。指示書のほうの規定は特別訪問看護指示書|14日の数え方と月2回・レセプト記載にまとめました。
「2,500円が原則で、重症度等の高いものだけ5,000円」という書き方になっている点に注意してください。医療保険側は、ⅠとⅡという2つの区分が並列にあるのではなく、本文とただし書の2段構えです。
条文の構造としては、本文が別表第八の全体を対象にし、ただし書がそのうち第一号を5,000円に引き上げる形になっています。結果として、2,500円になるのは第二号から第五号までです(4章)。
介護保険は、指定訪問看護ステーションと病院・診療所のどちらでも単位数は同じです。訪問看護費には事業所の種別で単位数が変わる項目がありますが、特別管理加算にその区別はありません。
なお介護保険の特別管理加算は、区分支給限度基準額の管理対象外です。限度額の枠を圧迫しません。
この章の出典
3. 令和8年6月改定で変わったこと
令和8年度の診療報酬改定は、令和8年6月1日から適用されています。特別管理加算に関係する変更は次のとおりです。
3-1. 医療保険:対象者が1つ増えました
厚生労働省の改定説明資料は、別表第八の改定前後をこう対比しています。
- 改定前 — (前略)在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者
- 改定後 — (前略)在宅自己疼痛管理指導管理、在宅肺高血圧症患者指導管理又は在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者
※ここに引用したのは列挙の末尾部分です。改定前後とも、この前に在宅自己腹膜灌流指導管理などが並んでいます。変わったのは末尾に1つ加わった点です。
「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が、特別管理加算の対象に加わりました。 表皮水疱症や天疱瘡といった難治性の皮膚疾患の管理を受けている利用者が該当します。
なお別表第八は、特別管理加算の対象を定めると同時に、訪問看護基本療養費等を週4日以上算定できる対象の定義も兼ねています。したがって、別表第八に追加された結果、週4日以上の算定対象にもなります。
別表第八の全5号と別表第七の20項目、そして「要介護者を医療保険に移せるのは第七だけ」という2つの別表の役割の違いは、訪問看護の別表7・別表8の記事で条文から整理しています。レセプトの「心身の状態」欄のコードと加算金額の対応表もそちらにあります。
3-2. 金額は変わっていません
改定説明資料に、特別管理加算の金額(5,000円・2,500円)を変更したという記載はありません。金額は据え置きです。
3-3. 介護保険:特別管理加算に変更はありません
令和8年度の介護報酬改定は期中の臨時改定で、内容は介護職員等処遇改善加算の新設が中心でした。「介護報酬の算定構造」の令和8年6月改定版を見ても、特別管理加算の単位数・要件はそのままです。
処遇改善加算の要件と手続きは「訪問看護の処遇改善加算|1.8%の一択・6月開始・出す書類と期限」で整理しています。
3-4. 結果として、医療と介護の差が広がりました
ここが実務上いちばん大事な点です。在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は、医療保険の対象に追加されましたが、介護保険の対象には追加されていません。 もともとあった「在宅人工呼吸指導管理」の差と合わせて、医療にあって介護にない項目が2つになりました。
次章で、リスト全体を並べて確認します。
この章の出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保発0305第19号)令和8年6月1日適用
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和8年6月改定箇所)
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1477」(令和8年3月13日)
4. 【対照表】医療と介護の対象者を並べ直す
この章がこの記事の中心です。医療保険は「特掲診療料の施設基準等 別表第八」、介護保険は「平成27年厚生労働省告示第94号 第六号」が対象者を定めています。両方の原文を横に並べます。
4-1. 高いほう(医療5,000円/介護Ⅰ500単位)の対象
医療保険の別表第八 第一号は、こう定めています。
在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者
介護保険の第六号イも、ほぼ同じ内容です。
医科診療報酬点数表に掲げる在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理、在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態
ここは医療と介護で一致しています。 気管カニューレや留置カテーテルを使っている状態が、高いほうの区分に入ります。
介護保険側の条文が「医科診療報酬点数表に掲げる」と書いている点に注目してください。介護保険の対象は、医科の指導管理の名称を引いて定められています。名称を挙げて特定する形なので、挙がっていないものは対象にならないという読み方になります。
なお「在宅悪性腫瘍等患者指導管理」という名称を使っている解説を見かけますが、現行の告示にこの名称はありません。 現在は在宅麻薬等注射指導管理・在宅腫瘍化学療法注射指導管理・在宅強心剤持続投与指導管理として掲げられています。
4-2. 低いほう(医療2,500円/介護Ⅱ250単位)の対象 ― ここがズレます
医療保険の別表第八 第二号から第五号です。
二 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理、在宅肺高血圧症患者指導管理又は在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者
三 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
四 真皮を越える褥瘡の状態にある者
五 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
介護保険の第六号ロからホです。
ロ 医科診療報酬点数表に掲げる在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態
ハ 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態
ニ 真皮を越える褥瘡の状態
ホ 点滴注射を週三日以上行う必要があると認められる状態
並べると違いがはっきりします。
| 対象となる状態 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 在宅自己腹膜灌流/血液透析/酸素療法/中心静脈栄養法/成分栄養経管栄養法/自己導尿/持続陽圧呼吸療法/自己疼痛管理/肺高血圧症患者の各指導管理 | 対象 | 対象 |
| 在宅人工呼吸指導管理 | 対象 | 対象外 |
| 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理 | 対象(令和8年6月追加) | 対象外 |
| 人工肛門・人工膀胱 | 対象 | 対象 |
| 真皮を越える褥瘡 | 対象 | 対象 |
| 点滴注射 | 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 | 週三日以上行う必要があると認められる状態 |
在宅人工呼吸指導管理と在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は、医療保険の条文にはありますが、介護保険の条文にはありません。
ただし1章で触れたとおり、この2つは性格が違います。人工呼吸器を使用している状態は、介護保険の告示で「厚生労働大臣が定める疾病等」に挙げられており、要介護認定を受けていても医療保険の訪問看護になります。 介護保険の特別管理加算のリストにないのは、その利用者が介護保険の訪問看護にならないからです。
実務で注意が要るのは、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理のほうです。 こちらは疾病等に挙げられていないため介護保険の訪問看護がありえますが、介護保険の特別管理加算の対象には入っていません。
4-3. 点滴の条件は「算定している」か「必要と認められる」か
同じ点滴でも、条件の立て方が違います。
医療保険は「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」です。この指導料そのものが算定されていることが条件になります。
介護保険は「点滴注射を週三日以上行う必要があると認められる状態」です。必要性が認められる状態であるかどうかで判断します。
書きぶりが違うということは、判断の材料も違うということです。 介護保険の解説をそのまま医療保険に当てはめて「週3日以上やっているから算定できる」と考えると、医療保険側の要件を満たしていない可能性があります。
この章の出典
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」(平成20年厚生労働省告示第63号)別表第八
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号)第六号
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等」(現行条文)
5. 「Ⅰ・Ⅱ」という呼び方の落とし穴
検索して出てくる解説を読み比べると、混乱する原因のひとつがここにあります。
「特別管理加算(Ⅰ)」「特別管理加算(Ⅱ)」は、介護保険の区分名です。 介護保険の告示第94号 第七号が、こう定めています。
イ 特別管理加算(Ⅰ) 第六号イに規定する状態にある者に対して指定訪問看護を行う場合
ロ 特別管理加算(Ⅱ) 第六号ロ、ハ、ニ又はホに規定する状態にある者に対して指定訪問看護を行う場合
一方、医療保険の告示には、Ⅰ・Ⅱという区分名がありません。 前章で見たとおり「2,500円を加算する。ただし、重症度等の高いものは5,000円」という本文とただし書の構造です。
つまり、医療保険の加算を「特別管理加算Ⅰ」と呼ぶのは、法令上の正式な呼び方ではありません。社内で通称として使うのは構いませんが、医療と介護をまたいで「Ⅰだから」と話すと、相手がどちらの制度を指しているのか分からなくなります。
安全なのは、保険種別を必ず冠して呼ぶことです。「医療の5,000円のほう」「介護の特別管理加算Ⅰ」のように言えば、取り違えは起きません。
この章の出典
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号)第七号
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第67号)訪問看護管理療養費 注3
6. 届出の要否と提出先
届出の扱いも、医療保険と介護保険で違います。
6-1. 医療保険は届出が必要です
医療保険の特別管理加算は、地方厚生(支)局長への届出が算定の前提です。施設基準は次の3つで、いずれも満たす必要があります。
- 24時間対応体制加算を算定できる体制を整備していること
- 当該加算に該当する重傷者に対応できる職員体制、勤務体制が確保されていること
- 医療器具等の管理、病状の変化に適切に対応できるように、医療機関等との密接な連携体制が確保されていること
※2つ目の「重傷者」は、通知(保医発0305第9号)の原文の表記をそのまま用いています。
1つ目に注目してください。特別管理加算の施設基準には、24時間対応体制加算を算定できる体制が組み込まれています。 24時間対応体制加算そのものについては「訪問看護の緊急訪問看護加算|医療と介護で違う3つの加算を整理」で整理しています。
24時間対応体制加算を含めて1日あたりの包括評価にした包括型訪問看護療養費の算定要件・点数は、包括型訪問看護療養費|算定要件・点数・届出にまとめています。
届出は別紙様式2を用い、訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局長に提出します。効力の発生時期は通知に定めがあります。
各月の月末までに受理したものはその翌月から、月の最初の開庁日に受理した場合は、当該月の1日から当該療養費を算定すること
月末までに出せば翌月から、月の最初の開庁日に出せばその月の1日から、という区切りです。届出が間に合わないと、その月は算定できません。
6-2. 介護保険は届出が算定要件ではありません
介護保険側は考え方が違います。老企第36号は、こう述べています。
特別管理加算については、届出が加算の算定要件ではないが、利用者や居宅介護支援事業所が訪問看護事業所を選定する上で必要な情報として届け出させること。
届出をしていないから算定できない、という関係ではありません。 ただし、利用者やケアマネジャーが事業所を選ぶための情報として届け出ることが求められています。届出をしない選択肢がある、という意味ではない点に注意してください。
もうひとつ、介護保険側では特別管理加算の算定実績そのものが別の加算の要件になります。看護体制強化加算は、前6月間の実利用者のうち特別管理加算を算定した人の割合が20%以上であることを条件のひとつにしています。 実利用者が48人なら10人が境目です。割合の数え方と毎月の判定は看護体制強化加算の記事で扱っています。
この章の出典
- 厚生労働省「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第9号)令和8年3月5日
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)
7. 「特別管理指導加算」は別の加算です
名前が似ているために取り違えやすいのが、特別管理指導加算です。これは特別管理加算とはまったく別のものです。
告示はこう定めています。
注4に規定する者が注3本文に規定する別に厚生労働大臣が定める状態等にある場合には、特別管理指導加算として、更に2,000円を所定額に加算する。
「注4に規定する者」とは、退院時共同指導加算(8,000円)の対象になる利用者のことです。つまり特別管理指導加算は、退院時共同指導加算への上乗せ2,000円です。
退院時共同指導加算は、新規利用者の初回加算と同時には算定できません。どちらを取るかの判断材料は初回加算の記事にまとめました。
2つを並べると違いがはっきりします。
| 特別管理加算 | 特別管理指導加算 | |
|---|---|---|
| 加算する先 | 訪問看護管理療養費 | 退院時共同指導加算(8,000円) |
| 金額 | 5,000円/2,500円 | 2,000円 |
| 算定のタイミング | 月1回 | 退院・退所後の最初の訪問時 |
| 対象 | 別表第八に該当する状態 | 退院時共同指導の対象者のうち、別表第八に該当する状態 |
特別管理指導加算の対象は「注3本文に規定する状態等」、つまり別表第八の第一号から第五号までのすべてです。5,000円の区分(第一号)に限られるわけではありません。
なお退院時共同指導加算は、退院・退所につき1回が原則で、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者については2回まで算定できます。
さらに紛らわしいのが退院支援指導加算です。これは退院時共同指導加算とは別に、退院日の在宅療養指導そのものに付く加算で、算定日や単独算定の扱いが異なります。名前が似た制度の整理はそちらの記事にまとめています。
なお医療保険の特別管理加算は地方厚生(支)局長への届出、介護保険の特別管理体制は指定権者への体制届と、届出先も期限も別系統です。この二系統の違いは訪問看護の開業と事務・請求体制の記事で整理しています。
特別管理加算以外も含めた金額と届出の要否は、訪問看護の加算一覧・早見表にまとめました。
この章の出典
8. 算定と記録の実務
算定にあたって押さえておく点をまとめます。
8-1. 月1回のカウントの仕方
医療保険は「月1回に限り」算定します。なお、加算する先は訪問看護管理療養費です(2章)。その月に訪問看護の提供がなければ、加算を付ける土台がありません。
介護保険は加算する日が決まっています。老企第36号は、こう定めています。
特別管理加算は、当該月の第一回目の介護保険の給付対象となる訪問看護を行った日の所定単位数に加算するものとする。
その月の1回目の訪問日に加算する、という建て付けです。したがって、その月に介護保険の訪問看護を1度も行っていなければ、加算を付ける先がありません。
8-2. 医療と介護の二重請求は明文で禁止されています
同じ老企第36号に、次の一文があります。
当該加算を介護保険で請求した場合は医療保険では特別管理加算を請求しないこと
介護保険で請求したら、医療保険では請求しない。 ここは明文があります。保険区分の管理が曖昧だと、この取り違えが起きます。保険の取り違えは返戻の原因にもなります。返戻になったときの読み方と再請求の手順は「訪問看護のレセプト返戻|原因と再請求の手順・エラーコード早見表」にまとめています。
8-3. 記録に残すべきこと(医療保険)
留意事項通知は、状態ごとに記録の要件を定めています。
真皮を越える褥瘡の場合 — 定期的(1週間に1回以上)に褥瘡の状態の観察・アセスメント・評価を実施し、訪問看護記録書に褥瘡の発生部位及び実施したケアについて記録することが求められます。
在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している場合 — 点滴注射が終了した日およびその他必要が認められる場合には、主治医への連絡を速やかに行うこととされ、訪問看護記録書への記録も求められます。
共通 — 症状が重篤であった場合には、速やかに医師による診療を受けることができるよう必要な支援を行うこととされています。
そもそも特別管理加算は「指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合」の加算です。特別な管理を行った事実が記録に残っていることが前提になります。
記録や書類の事務をどこまで外部に出せるかは「訪問看護の書類作成代行はどこまで可能か|事務と判断の線引き」で整理しています。
8-4. 特別地域訪問看護加算の計算に含めません(介護保険)
介護保険の特別地域訪問看護加算は所定単位数の15%加算ですが、この所定単位数に特別管理加算は含めません。 緊急時訪問看護加算・ターミナルケア加算も同様です。
この章の出典
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保発0305第19号)令和8年6月1日適用
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)
9. 判断に迷う場面と、確認のしかた
ここまでは条文で答えが出る話でした。実務では、条文を読んでも判断がつかない場面があります。
先にお断りしておきます。この章で挙げる論点の多くは、一次情報に明文が見当たりませんでした。 答えを断定せず、論点として示します。判断に迷う場合は、医療保険は地方厚生局、介護保険は指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
9-1. 明文で確認できること
ドレーンチューブを使用している状態 — 介護保険のQ&Aに答えがあります。
ドレーンチューブを使用している状態にある者は、留置カテーテルを使用している状態にある者に含まれるため、特別管理加算(Ⅰ)を算定することが可能である。
告示の条文に「ドレーンチューブ」という語はありませんが、留置カテーテルを使用している状態に含まれるという整理です。
ただし、これは介護保険についてのQ&Aです。 答えにある「特別管理加算(Ⅰ)」も介護保険の区分名です(5章)。医療保険側に同趣旨の明文は確認できませんでした。医療保険で同じ判断ができるかは、地方厚生局にご確認ください。
9-2. 明文が見当たらず、確認が要ること
次のような場面は、判断が分かれるところです。いずれも一次情報で明文を確認できませんでした。
医療器具が留置されているが、使用していない場合。 中心静脈用のポートが挿入されていても在宅で使用していない、といったケースです。加算の要件が「計画的な管理を行った場合」である以上、管理の実態があるかどうかが判断の分かれ目になりますが、明文の基準はありません。
器具は入っていないが、状態としては該当しそうな場合。 気管カニューレが留置されていない永久気管孔などです。条文は「在宅気管切開患者指導管理を受けている状態」と「気管カニューレを使用している状態」を並べて書いており、どちらで拾うのかが論点になります。
「真皮を越える褥瘡」の深さの判断。 条文は深さで線を引いていますが、どの評価スケールで判定するかは定めていません。判断の根拠を記録に残しておくことが重要になります。
なお、令和8年版の訪問看護指示書(別紙様式16)の褥瘡の深さの欄には、DESIGN-R2020分類とNPUAP分類が併記されています。指示書側の記載は判断の手がかりになります(→訪問看護指示書とは|有効期間6か月・様式16と押印【R8.6】)。
月の途中で対象の状態でなくなった場合。 医療保険・介護保険とも、この場合の扱いを定めた明文を確認できませんでした。
月の途中で医療保険と介護保険が切り替わった場合。 「介護保険で請求したら医療保険では請求しない」という明文はありますが(8章)、切替時にどちらで算定するかを直接定めた通知は確認できていません。
これらは、迷ったまま毎月処理するのが一番危険です。 照会して判断を確定させ、照会した内容と回答を記録に残しておいてください。 後の実地指導で、そう判断した根拠を説明できます。
照会記録の整備は運営指導への備えにもなります。通知から当日までの流れは運営指導対策の記事にまとめました。
この章の出典
- 厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)」(平成24年4月25日)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保発0305第19号)
10. よくある質問
Q. 特別管理加算は医療保険と介護保険で同じものですか?
名前は同じですが、対象者の範囲が一致していません。医療保険の対象に「在宅人工呼吸指導管理」と「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が入っていますが、介護保険の対象には入っていません。ただし人工呼吸器を使用している状態の利用者は、そもそも医療保険の訪問看護になります(1章)。金額の単位も、医療は円、介護は単位です。
Q. 「特別管理加算Ⅰ」は医療保険にもありますか?
法令上の区分名としてはありません。Ⅰ・Ⅱは介護保険の区分名です。医療保険は「重症度等の高いもの(5,000円)」と「それ以外(2,500円)」という書き方になっています。
Q. 令和8年6月の改定で何が変わりましたか?
医療保険で、特別管理加算の対象に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が追加されました。金額の変更はありません。介護保険側の特別管理加算には変更がありません。
Q. 医療保険と介護保険の両方で算定できますか?
できません。老企第36号に「当該加算を介護保険で請求した場合は医療保険では特別管理加算を請求しないこと」と明記されています。
Q. 届出をしないと算定できませんか?
医療保険は届出が必要です(地方厚生局へ別紙様式2)。介護保険は届出が算定要件ではありませんが、利用者やケアマネジャーが事業所を選ぶための情報として届け出ることとされています。
Q. 月に何回まで算定できますか?
医療保険は月1回に限られます。介護保険も1月につき1回で、その月の1回目の訪問日の所定単位数に加算します。
Q. ドレーンチューブを使っている利用者は対象になりますか?
介護保険については、厚生労働省のQ&Aで、留置カテーテルを使用している状態に含まれるため特別管理加算(Ⅰ)を算定できるとされています。医療保険側に同趣旨の明文は確認できませんでしたので、地方厚生局にご確認ください。
Q. 特別管理加算と特別管理指導加算は何が違いますか?
別の加算です。特別管理加算は訪問看護管理療養費への月1回の加算、特別管理指導加算は退院時共同指導加算への2,000円の上乗せです。
この章の出典
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第67号)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号)
- 厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)」
11. まとめ
要点を整理します。
特別管理加算は医療保険と介護保険の両方にありますが、対象者のリストが一致していません。 在宅人工呼吸指導管理と在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は、医療保険の対象で、介護保険の対象ではありません。
令和8年6月改定で、その差が1つ広がりました。 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理が医療保険側にだけ追加されたためです。金額は医療・介護とも据え置きです。
「Ⅰ・Ⅱ」は介護保険の呼び方です。 医療保険は「重症度等の高いもの/それ以外」で、Ⅰ・Ⅱという法令上の区分名はありません。社内では保険種別を冠して呼ぶと取り違えを防げます。
届出の扱いも違います。 医療保険は地方厚生局への届出が前提で、月末までに受理されれば翌月から算定できます。介護保険は届出が算定要件ではありません。
同じ月に医療と介護の両方で請求することはできません。 明文があります。
この加算は、対象になるかどうかの判定が利用者の状態に紐づいていて、しかも状態は変わります。カテーテルが入った、褥瘡ができた、退院してきた——そのたびに対象かどうかが動きます。 判定のタイミングを個人の気づきに任せていると、算定漏れも過剰算定も起こります。新規契約時と状態変化時に対象状態を確認する運用と、月次の請求前チェックを仕組みにしておくのが確実です。すでに漏れていた分をどこまで遡って請求できるかは「訪問看護の加算算定漏れ|遡及請求の期限は医療5年・介護2年」にまとめています。
そのチェックを回す人手の確保まで含めた考え方は「訪問看護の人手不足対策|採用の前にできる3つのこと」で整理しています。
請求業務や加算の算定・チェックを外部に任せるという選択肢について、対応できる範囲や進め方をご案内しています。
ご利用にあたって
本記事は2026年7月時点で公開されている厚生労働省の告示・通知にあたって作成しています。そのうえで、次の3点にご留意ください。
制度は改定されます。 金額・単位数・対象者・要件は診療報酬・介護報酬の改定で変わります。本記事の内容は令和8年6月1日適用の告示に基づきますが、その後の改定で変わることがあります。本記事の内容が最新である保証はありません。
記載に誤りが含まれている可能性があります。 告示原本にあたって確認していますが、条文の読み取りを誤っている箇所があるかもしれません。金額・対象者・算定要件は原本でご確認ください。とくに他の加算との併算定の可否は、告示・留意事項通知の原本でご確認ください。
判断に迷う場合は提出先にご照会ください。 9章で挙げた論点のように、一次情報に明文が見当たらないものがあります。窓口は次のとおりです。
| 確認したいこと | 窓口 |
|---|---|
| 医療保険(訪問看護療養費)の算定・届出 | 地方厚生局 |
| 介護保険(介護給付費)の算定・届出 | 都道府県・市町村(指定権者)、国民健康保険団体連合会 |
| 医療保険と介護保険の適用関係 | 主治医・地方厚生局 |
照会した内容と回答は記録に残しておくことをおすすめします。後の実地指導で、そう判断した根拠を説明できます。
参考・出典一覧
厚生労働省|医療保険(訪問看護療養費)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年厚生労働省告示第67号/現行条文)
- 訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等(現行条文)
- 特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)別表第八
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保発0305第19号/令和8年6月1日適用)
- 訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第9号)
- 令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】(令和8年3月10日版)