訪問看護ステーションの理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)による訪問には、令和6年度の介護報酬改定で1回8単位の減算が入りました。告示はこの3職種を「理学療法士等」と呼ぶので、この記事でもそれに合わせます。294単位に対する8単位ですから、率にすれば約2.7%です。
金額の小ささのわりに、この減算はやっかいな作り方をしています。該当するかどうかが前年度の実績で決まり、しかも入口が2つあってどちらか一方に当たれば発動します。 リハビリ職の訪問が少ない事業所でも減算になることがある、というのがこの制度の分かりにくいところです。
この記事では、告示・通知・疑義解釈の原文にあたって、判定の条件と回数の数え方を整理しました。
30秒で判定する
次の3つを順に見てください。
| # | 確認すること | 結果 |
|---|---|---|
| 1 | 前年度(前年4月〜当年3月)、事業所全体で理学療法士等の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えていたか | 超えていた → 8単位減算(→2章) |
| 2 | 算定する月の前6か月間に、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれかを算定したか | 1つも算定していない → 8単位減算(→4章) |
| 3 | 介護予防で、理学療法士等の訪問の利用開始月から数えて12月を超えているか | 8単位減算ありなら+15単位(計23単位)、なしなら5単位(→7章) |
※1の「訪問回数」はレセプトの算定回数ではありません。60分の訪問は算定3回・訪問1回と数えます(→3章)。算定回数で数えると判定が逆になることがあります。
1と2はどちらか一方に当たれば減算です。両方に当たっても減算は8単位のままで、二重にはなりません。どちらにも当たらなければ減算はありません。当たった場合、イの減算は前年度実績の確定後、翌年度4月から1年間続きます(→5章)。
判定の根拠条文を確かめたい方は1章、回数の数え方は3章、いつから減算されるかは5章へ。単位数・週6回・1日2回超といった基本ルールだけ知りたい方は6章へ進んでください。
1. 理学療法士等の訪問看護が減算になる入口は2つある
この減算の要件は、告示の1か所に集まっています。「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年3月23日 厚生労働省告示第96号)の四の二です。
次に掲げる基準のいずれかに該当すること。
イ 当該訪問看護事業所における前年度の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること。
ロ 緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算のいずれも算定していないこと。
読むべきは冒頭の「いずれかに該当すること」です。イとロはAND(両方満たす)ではなくOR(どちらかで足りる)で並んでいます。
ここを取り違えると判断が逆になります。「うちはリハビリ職より看護師の訪問のほうが多いから関係ない」と考えている事業所でも、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算を1つも算定していなければ、ロだけで減算の対象になります。
1-1. 8単位はいくらか
減算後の単位数はこうなります。
| 保険 | 理学療法士等による訪問(1回) | 8単位減算後 |
|---|---|---|
| 介護(訪問看護費 イ(5)) | 294単位 | 286単位 |
| 介護予防(介護予防訪問看護費 イ(5)) | 284単位 | 276単位 |
この「1回」は算定回数です。294単位という所定単位数が20分1回あたりの単位なので、そこから引く8単位も算定1回ごとにかかります。60分の訪問なら算定3回・24単位の減算。判定に使う「訪問回数」(→3章)とは数え方が違う点に注意してください。
対象は理学療法士等が行った訪問の全件です。リハビリ職の訪問が月200回(算定回数)ある事業所なら1,600単位、地域区分にもよりますが1万数千円が毎月落ちます。しかもイで該当した場合、減算はその年度のあいだ続きます(→5章。ロで該当した場合は月次で判定が動きます)。
【図版1】判定フロー図(前年度の訪問回数の比較→3加算の算定状況→介護予防なら12月超の判定、という3段の分岐を1枚に)
この章の出典
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年3月23日 厚生労働省告示第96号)四の二
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年2月10日 厚生省告示第19号)訪問看護費
- 厚生労働省「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年3月14日 厚生労働省告示第127号)介護予防訪問看護費
2. 入口①:前年度の訪問回数の比較
告示イは「当該訪問看護事業所における前年度の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること」です。3つの点を押さえてください。
比べるのは事業所全体です。 条文の主語は「当該訪問看護事業所における」で、利用者ごとではありません。Aさんはリハビリ中心、Bさんは看護中心、という内訳は判定に関係なく、事業所の年間の合計回数だけを見ます。
期間は年度単位です。告示は「前年度」とだけ書いていますが、通知(老企第36号)が「当該訪問看護事業所における前年の4月から当該年の3月までの期間」と書き下しており、4月から翌年3月までの12か月で締めます。
「超えている」であって「以上」ではありません。 同数なら該当しません。通知も「前年の4月から当該年の3月までの期間の看護職員の訪問回数が理学療法士等による訪問回数以上である場合であっても」という書き出しでロの話に移っており、イが同数を含まないことを前提にしています。
2-1. 「訪問回数」は算定回数と違う
ここがこの制度の判定でいちばん間違えやすいところです。理学療法士等の訪問は20分を1回として算定しますが、判定に使う「訪問回数」は算定した回数ではありません。 数え方は3章で扱います。
この章の出典
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年3月23日 厚生労働省告示第96号)四の二
- 厚生労働省 老企第36号「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月15日改正・新旧対照表)
3. 理学療法士等の「訪問回数」の数え方
疑義解釈が正面から答えています。「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(令和6年3月15日・介護保険最新情報Vol.1225)の問28です。
問 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士(以下「理学療法士等」という。)による訪問看護の減算の要件である、前年度の理学療法士等による訪問回数は、連続して2回の訪問看護を行った場合はどのように数えるのか。
答 理学療法士等による訪問看護の減算に係る訪問回数については、理学療法士等が連続して2回の訪問を行った場合は、1回と数える。例えば、理学療法士が3月1日と3月3日にそれぞれ2回ずつ訪問を実施した場合、算定回数は4回であるが、訪問回数は2回となる。また、理学療法士等が3月5日の午前に1回、午後に連続して2回訪問を実施した場合は、算定回数は3回、訪問回数は2回となる。
答の中に計算例が2つ入っています。表にすると差がはっきりします。
| 実施のしかた | 算定回数 | 訪問回数(判定に使う) |
|---|---|---|
| 3月1日に連続2回、3月3日に連続2回 | 4回 | 2回 |
| 3月5日の午前に1回、午後に連続2回 | 3回 | 2回 |
「訪問回数」は、事業所を出て利用者宅へ行った足の回数だと考えると合います。 1回の訪問で40分いて20分を2回算定しても、足は1回です。午前と午後に分けて2度出向けば2回になります。
この差は判定に効きます。リハビリ職は60分の訪問を20分×3回で算定することがありますが、その日の訪問回数は1回です。看護職員が20分の訪問を1日1回ずつしていれば、算定回数ではリハビリ職が3倍でも、訪問回数では並びます。算定回数で比べて「うちは超えている」と早合点しないでください。
3-1. 何を見て数えるか
問29は数え方ではなく確認資料を示しています。
問 前年度の理学療法士等による訪問回数はどのように算出するのか
答 居宅サービス計画書、訪問看護報告書及び訪問看護記録書等を参照し、訪問回数を確認すること。
請求データの算定回数ではなく、記録側から数えるという指示です。記録書に訪問の開始・終了時刻と職種が入っていないと、連続2回だったのか午前午後だったのかを後から再現できません。記録書の書き方については訪問看護記録書の記事で整理しています。
3-2. 定期巡回との連携分も数える
問30は1行です。
問 前年度の理学療法士等による訪問回数には、連携型の定期巡回・随時対応型訪問介護看護による訪問回数は含まれるか
答 含まれる。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護と連携している事業所は、訪問看護費(ハ)で算定している分も合算します。集計の範囲を訪問看護費のイ・ロだけに絞ると、実態より少ない回数で判定してしまいます。
なお、医療保険の訪問看護をこの訪問回数に含めるかを明示したQ&Aは確認できていません。 この減算は介護報酬の施設基準(告示96号)なので介護保険の訪問回数で判定すると読むのが素直ですが、問29が参照先に挙げる訪問看護報告書・記録書は医療保険の訪問も載る書類です。医療・介護の利用者が混在する事業所では、集計の範囲を指定権者に確認してください(→確認しきれなかった点)。
【図版2】訪問回数と算定回数の対比図(1日の時間軸に、20分×3回の1訪問と、午前1回・午後連続2回の2訪問を並べ、下に算定回数と訪問回数を並記)
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4. 入口②:3つの加算を1つも算定していない場合
告示ロは「緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算のいずれも算定していないこと」だけです。期間が書かれていません。 そこを通知が補っています。
前年の4月から当該年の3月までの期間の看護職員の訪問回数が理学療法士等による訪問回数以上である場合であっても、算定日が属する月の前6月間において、緊急時訪問看護加算(Ⅰ)、緊急時訪問看護加算(Ⅱ)、特別管理加算(Ⅰ)、特別管理加算(Ⅱ)、看護体制強化加算(Ⅰ)及び看護体制強化加算(Ⅱ)のいずれも算定していない場合は、理学療法士等の訪問看護費から8単位を減算する。
告示が3つの加算名で書いているところを、通知は6つの区分に開いています。加算にⅠ・Ⅱの区分があるものは、どちらか一方でも算定していればロには当たりません。
期間は「算定日が属する月の前6月間」です。前年度でも当年度でもなく、請求する月から遡って6か月。ここだけ判定の時間軸が違うので、イと同じ感覚で年度単位に丸めないでください。
4-1. どういう事業所が当たるか
3つの加算はいずれも、利用者側の状態か事業所の体制がそろって初めて算定できるものです。
| 加算 | 算定できる条件のおおよその性格 |
|---|---|
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 24時間連絡・訪問できる体制を届け出て、利用者の同意を得ている |
| 特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 気管カニューレ、留置カテーテルなど特別な管理を要する利用者がいる |
| 看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 緊急時訪問・特別管理・ターミナルケアの実績と、看護職員6割以上の人員構成 |
開設まもない事業所、利用者が軽度に偏っている事業所、24時間の体制を組めていない事業所は、リハビリ職の訪問が少なくてもロで減算に入ります。それぞれの要件は緊急時訪問看護加算と名前の似た加算の整理、特別管理加算の記事、看護体制強化加算の記事で扱っています。医療保険の「緊急訪問看護加算」「24時間対応体制加算」は名前が似た別の加算で、ロの判定には関係ありません。
なお、この3つを算定していない状態は、減算そのものより先に見直す余地があります。緊急時訪問看護加算は体制を届け出れば月単位で付く加算で、失っている額は8単位の比ではありません。減算を避けるためというより、加算側の検討が先です。
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5. いつから減算するのか
適用の時期は通知の末尾に書かれています。
また、令和6年度に減算する場合は、令和5年度の訪問回数の実績に応じ、令和6年6月1日から令和7年3月31日までの間で減算することとし、令和7年度以降は前年度の訪問回数の実績に応じ、翌年度4月から減算とする。
2つのことが書いてあります。
初年度だけ6月1日始まりです。 令和6年度の介護報酬改定は原則4月1日施行ですが、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーションの4サービスだけは、診療報酬改定が6月1日施行とされたことなどを踏まえて6月1日施行とされました。この減算もその扱いに乗っています。
令和7年度以降は年度の頭からです。 前年度(前年4月〜当年3月)の実績を締めて、翌年度4月から1年間かけて減算します。判定と適用が1年ずれる作りです。
| 判定に使う期間 | 減算する期間 |
|---|---|
| 令和5年4月〜令和6年3月 | 令和6年6月1日〜令和7年3月31日 |
| 令和6年4月〜令和7年3月 | 令和7年4月〜令和8年3月 |
| 令和7年4月〜令和8年3月 | 令和8年4月〜令和9年3月 |
つまり、いま減算がかかっているかどうかは、いまの訪問構成では決まりません。 1年前の実績で決まっています。逆に、この4月から看護職員の訪問を増やしても、効いてくるのは翌年度4月からです。
ロのほうは時間軸が違います。判定の窓は「算定日が属する月の前6月間」で、その窓の中に1月でも算定があればロには当たりません。つまり加算を算定すれば、その翌月から減算は外れます。年度をまたぐ必要はありません。
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6. 理学療法士等による訪問看護の単位数と回数の基本ルール
ここで、減算の対象になっている理学療法士等の訪問そのものの基本ルールに戻ります。減算の判定はこのルールの上に載っています。
| 項目 | 介護(訪問看護費) | 介護予防(介護予防訪問看護費) |
|---|---|---|
| 理学療法士等による訪問(1回) | 294単位 | 284単位 |
| 1回の時間 | 20分以上 | 20分以上 |
| 上限 | 1人の利用者につき週6回 | 1人の利用者につき週6回 |
| 1日に2回を超えて行った場合 | 1回につき100分の90 | 1回につき100分の50 |
最後の行が非対称です。告示19号の訪問看護費 注1は「理学療法士等が1日に2回を超えて指定訪問看護を行った場合、1回につき100分の90に相当する単位数を算定する」、告示127号の介護予防訪問看護費 注1は同じ位置で「100分の50に相当する単位数を算定する」と書いています。
要支援の利用者に1日3回のリハビリ訪問を行うと、3回目は284単位の半分です。要介護なら294単位の9割。同じ動き方をしても、保険が違うと手取りが倍近く変わります。
「1日に2回を超えて」なので、2回目までは減額されません。3回目以降が対象です。
週6回の上限も算定回数で数えるのが通例の扱いです。20分を1回として週6回までなので、60分の訪問は3回分を消費し、週2日で枠が埋まります。40分×3日、20分×6日といった組み方はできますが、60分×3日はできません。ただし週6回の限度を定めた通知本文の逐語はこの記事では未取得なので、訪問予定の組み方を変える前に確認してください(→確認しきれなかった点)。
6-1. 週6回はいつからいつまでか
週の起算日を書いた解説は多くありません。この記事では理学療法士等の訪問における週の起算日を定めた原文に到達できていないため、断定は避けます(→確認しきれなかった点)。月をまたぐ週の扱いも含め、指定権者の集団指導資料を確認してください。
この章の出典
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年2月10日 厚生省告示第19号)訪問看護費 注1
- 厚生労働省「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年3月14日 厚生労働省告示第127号)介護予防訪問看護費 注1
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回(令和8年6月29日)資料3「訪問看護」
7. 介護予防だけにある12月超の減算
8単位減算とは別に、介護予防訪問看護には利用期間で効いてくる減算があります。告示127号の注16と注17です。
注16 イ(5)について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に該当する指定介護予防訪問看護事業所については、1回につき8単位を所定単位数から減算する。
注17 イ(5)について、利用者に対して、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による指定介護予防訪問看護の利用を開始した日の属する月から起算して12月を超えて理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が指定介護予防訪問看護を行う場合であって、注16を算定しているときは、1回につき15単位を所定単位数から減算し、注16を算定していないときは、1回につき5単位を所定単位数から減算する。
注17は注16と連動しています。8単位減算がかかっている事業所では15単位、かかっていない事業所では5単位。 同じ12月超の利用者でも、事業所側の状況で減算額が3倍変わります。
| 事業所の状況 | 12月以内 | 12月超 | 合計の減算 |
|---|---|---|---|
| 8単位減算なし | 減算なし | 5単位 | 5単位 |
| 8単位減算あり | 8単位 | 15単位 | 8+15=23単位 |
284単位に対して23単位ですから、8%を超えます。ここまで来ると小さい話ではありません。
起算は「利用を開始した日の属する月から」です。要支援の認定を受けた月でも、事業所と契約した月でもなく、理学療法士等による介護予防訪問看護を使い始めた月です。利用者ごとに起算月が違うので、事業所単位ではなく利用者単位で管理する必要があります。
この12月超の減算は介護予防だけです。 厚生労働省の「介護報酬の算定構造」(令和6年6月改定箇所)で訪問看護費(介護給付側)の減算欄を確認すると、准看護師・1日2回超・理学療法士等の8単位・同一建物・虐待防止・BCPは並んでいますが、12月超による減算の欄はありません。要介護の利用者が何年リハビリ職の訪問を受けても、期間を理由とした減算は発生しません。
この章の出典
- 厚生労働省「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年3月14日 厚生労働省告示第127号)介護予防訪問看護費 注16・注17
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年6月改定箇所)
8. なぜ看護職員の訪問回数と比べるのか
減算の要件が「看護職員の訪問回数との比較」になっているのを、リハビリの提供量への規制と読むと納得しにくいと思います。理由は報酬の設計ではなく、制度上の位置づけにあります。
介護保険法第8条第4項は訪問看護をこう定義しています。
この法律において「訪問看護」とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。
そして「その他厚生労働省令で定める者」を受けているのが介護保険法施行規則第7条で、保健師、准看護師、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士が挙げられています。
つまり、訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問は、法律上「訪問看護」です。訪問リハビリテーションではありません。名称も報酬もその前提で組まれていて、算定するのは訪問看護費のイ(5)であって、訪問リハビリテーション費ではない。
だから比較の相手が看護職員になります。看護の枠組みで提供されているサービスが、看護職員の関与よりリハビリ職の訪問のほうが多い状態になっていないか。減算はその1点を見ています。
8-1. 訪問リハビリテーションとの違い
同じリハビリでも、事業所の種別が変わると別の制度になります。
| 訪問看護(ステーションの理学療法士等) | 訪問リハビリテーション | |
|---|---|---|
| 事業所 | 訪問看護ステーション | 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院 |
| 算定するもの | 訪問看護費 イ(5) 294単位 | 訪問リハビリテーション費 |
| 指示 | 主治の医師の指示(ステーションは文書による指示) | 事業所の医師の指示 |
| 計画 | 訪問看護計画書 | 訪問リハビリテーション計画書 |
利用者から見れば「リハビリの人が来る」で同じですが、書類も報酬も別系統です。訪問看護指示書に理学療法士等の訪問を書く欄があるのは、この位置づけの結果です(訪問看護指示書の記事で様式16の欄を扱っています)。
計画書も別立てにはしません。理学療法士等の訪問は訪問看護の一環なので、訪問看護計画書に看護職員の訪問と一体で位置づけて作成します。理学療法士等だけが訪問する月があっても、計画書・報告書の作成主体は看護師等(准看護師を除く)のままです。書き方は訪問看護計画書・報告書の記事で整理しています。
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9. 看護体制強化加算との連鎖
イとロは別々の入口ですが、実務では連動します。
看護体制強化加算には、看護職員の割合が6割以上という人員の要件があります。リハビリ職を増やして訪問件数を伸ばすと、この割合が落ちて加算が算定できなくなることがあります。そして加算が落ちれば、前6月間の算定実績がなくなり、ロの側で減算が発動します。
つまり、リハビリ職の比率が上がっていく事業所では、
- 理学療法士等の訪問回数が看護職員を超える → イで減算
- 看護職員の割合が6割を割る → 看護体制強化加算が算定できなくなる → ロでも減算
という二方向から同じ8単位に着地します。減算は重ならないので損は8単位のままですが、失うのは看護体制強化加算のほうが大きい。加算の要件は看護体制強化加算の記事で整理しました。
9-1. 全国の構成はどう動いているか
厚生労働省が令和8年6月29日の社会保障審議会介護給付費分科会に出した資料では、訪問看護ステーションの職員構成と単位数の内訳が示されています。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 訪問看護費の総単位数に占める理学療法士等による訪問の割合(令和6年度) | 34.1% |
| 介護予防訪問看護の総単位数に占める同割合(令和6年度) | 48.3% |
| 訪問看護ステーションの従事者に占める看護職員の割合 | 平成22年 81% → 令和6年 71% |
| 1事業所当たりの従事者数(平成27年→令和6年) | 6.4人 → 8.1人 |
| 1事業所当たりの看護職員数(平成27年→令和6年) | 4.7人 → 5.8人 |
看護職員の実数は減っていません。増えています。 増え方がリハビリ職より緩やかなために、割合が下がっています。職員数は伸びたが構成が変わった、というのが数字の読み方です。
介護予防では単位数のほぼ半分がリハビリ職の訪問です。介護予防に12月超の減算が置かれ、1日2回超の減額率も介護給付の100分の90に対して100分の50と厳しくなっているのは、この偏りと無関係ではないと読めます。
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10. 同時訪問・連続訪問をどう数えるか
看護職員とリハビリ職が同じ利用者宅に一緒に入る場面があります。判定の回数をどちらに積むかは通知に書かれています。
なお、⑥の定期的な看護職員による訪問に際し、看護職員と理学療法士等が同時に訪問した場合、看護職員の訪問看護費を算定する場合は看護職員の訪問回数を積算し、看護職員の訪問看護費を算定せず、理学療法士等の訪問看護費を算定する場合には、理学療法士等の訪問回数として積算すること。
積むのは「算定したほう」です。 同時に訪問しても、その訪問で看護職員の訪問看護費を算定したなら看護職員の1回、理学療法士等の訪問看護費を算定したなら理学療法士等の1回。両方には積みません。
同時訪問の日にどちらで算定するかは、判定の材料をそのまま動かします。看護職員の訪問回数を確保したい局面では、この選び方が効いてきます。
10-1. 続けて別職種が入った場合
一緒ではなく、続けて別の職種が訪問した場合は扱いが変わります。老企第36号は、1人の看護職員または理学療法士等が訪問看護を行った後に続いて他の職種が訪問看護を実施した場合について、職種ごとに算定できるとしています。算定が2件になる以上、訪問回数もそれぞれに積むのが素直な読み方です。
ただし、この場合の訪問回数の積み方を明示した疑義解釈は確認できていません。同時訪問については上の通知があり、連続する同一職種の訪問については3章の問28があり、別職種が続く場合だけ空いています(→確認しきれなかった点)。
10-2. 記録が判定の土台になる
問29が「居宅サービス計画書、訪問看護報告書及び訪問看護記録書等を参照し」と指示している以上、判定の正確さは記録の粒度で決まります。 記録書に訪問の開始・終了時刻と訪問した職種が入っていれば、1年後に数え直せます。入っていなければ、算定回数から逆算するしかなくなり、連続2回を1回に丸める処理ができません。
年度末になって前年度の回数を数えるのではなく、月次の請求作業のなかで「訪問回数」の欄を持っておくのが確実です。数えるコストは、記録の書き方を決めておくかどうかでまるごと変わります。
この章の出典
- 厚生労働省 老企第36号(令和6年3月15日改正・新旧対照表)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(令和6年3月15日・介護保険最新情報Vol.1225)問29
- 兵庫県「訪問看護・介護予防訪問看護の手引き」(令和6年6月)
11. 請求への反映と、4月にやること
判定が終わっても、請求ソフトの設定を変えなければ請求額は変わりません。イで該当した年度は、その年度のあいだ理学療法士等の訪問すべてに8単位を落とし続けることになります。ロで該当している間も同じで、こちらは加算の算定が始まるまで続きます。
11-1. 届出と設定
この減算は告示96号の施設基準に該当することで発動するので、体制等状況一覧表で届け出る形になります。項目名は指定権者の様式によって表記が異なるため、お使いの様式で「理学療法士等」「訪問回数」を含む欄を確認してください(この記事では特定の様式の欄名までは確認できていません。→確認しきれなかった点)。
請求ソフト側は、体制設定を変えたうえで適用開始年月を減算の始まる月に合わせます。当月を入れると過去の月に反映されません。ここは業務継続計画未策定減算・高齢者虐待防止措置未実施減算と同じ落とし穴で、BCP・虐待防止減算の記事でも同じ注意を書きました。
該当しているのに満額で請求していた月がある場合は、過誤申立で取り下げて正しい額で請求し直します。手順はレセプト返戻の記事と加算の算定漏れの記事で整理しています。
11-2. 3月末から4月にかけての作業
年度で判定が切り替わるので、この時期にやることは決まっています。
- 3月末で前年度(前年4月〜当年3月)の訪問回数を締める。理学療法士等と看護職員をそれぞれ集計する
- 連続2回の訪問を1回に丸める(→3章)。定期巡回との連携分も足す
- 理学療法士等が看護職員を超えていたら、4月から減算に入る
- 超えていなくても、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算の算定実績を前6か月分で確認する
- 体制等状況一覧表と請求ソフトの設定を、4月分の請求までに合わせる
- 減算に該当する場合は、担当のケアマネジャーに該当と適用開始月を連絡する。サービスコードと単位数が変わるため、給付管理票・サービス提供票の単位数が合っていないと返戻の原因になります
- 重要事項説明書の料金表に単位数を書いている場合は減算後の値に差し替え、利用者には負担額が下がる方向の変更として説明する
- 介護予防の利用者について、理学療法士等の訪問の利用開始月を一覧化し、12月を超える月を押さえる
このうち手間がかかるのは2と8です。どちらも、月次の請求のときに1列足しておけば年度末に発生しない作業です。
1年に1回しか回らない集計は、担当者が代わった年に抜けます。前年度の訪問回数を誰が数えるのか、その人が辞めたら来年は誰が数えるのか。この役は事業所の中に置かなくても成立します。
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12. よくある質問
リハビリ職が1人もいない事業所でも減算になりますか
実害はありません。施設基準にはロで該当しえますが、減算されるのは理学療法士等の訪問看護費なので、その訪問がなければ減算される対象がありません。実害が出るのは、リハビリ職の訪問はあるが緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算を1つも算定していない事業所です。
イとロの両方に当たったら16単位になりますか
なりません。告示は「いずれかに該当すること」を施設基準としており、該当する事業所について1回につき8単位を減算する構成です。該当のしかたが2通りあっても減算は8単位です。
看護職員の訪問回数には准看護師も入りますか
看護職員に准看護師は含まれます。介護保険法施行規則第7条も准看護師を訪問看護を行う者として挙げています。ただし准看護師が訪問看護を行った場合の報酬は所定単位数の100分の90です。
1日に2回を超えた3回目にも8単位減算はかかりますか
かかると読むのが自然です。8単位減算は所定単位数からの減算、1日2回超は所定単位数に100分の90(介護予防は100分の50)を乗じるもので、根拠が別だからです。ただし両者の適用順序を明示した原文は確認できていません。介護給付では端数処理の結果どちらの順で計算しても257単位になり差が出ませんが、介護予防では順序で134単位か138単位かが分かれます。請求ソフトの計算結果で確かめてください(→確認しきれなかった点)。
医療保険の訪問看護にもこの減算はありますか
ありません。この8単位減算は介護報酬の告示に基づくもので、医療保険の訪問看護療養費には対応する規定がありません。ただし医療保険では、理学療法士等の訪問も看護師等と同じ訪問看護基本療養費で算定し、原則週3日の限度に含めて数えます。限度が外れる利用者の範囲は別表第七・別表第八の記事で整理しています。
今年度から看護職員の訪問を増やせば、今年度の減算は外れますか
イによる減算は外れません。判定は前年度の実績で確定していて、その年度のあいだ続きます。効いてくるのは翌年度4月からです。ロによる減算のほうは、前6月間の窓に1月でも加算の算定があれば当たらないので、加算を算定した翌月から外れます。
介護予防の12月超は、事業所を変えたらリセットされますか
注17は「利用者に対して、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による指定介護予防訪問看護の利用を開始した日の属する月から起算して」と書いており、主語は利用者です。事業所を変えた場合の起算月を明示した原文には到達できませんでした。前の事業所の利用開始月を引き継ぐのか、自事業所での開始月なのかは、指定権者に確認してください。
新規開設で前年度の実績がない場合、イの判定はどうなりますか
イは「前年度の訪問回数」の比較なので、前年度に事業所が存在しなければ比較のしようがありません。ただし、実績がない場合の扱いを明示したQ&Aは令和6年度改定のQ&A(Vol.1)にはなく、指定権者に確認してください。注意が要るのはロのほうです。開設直後は3つの加算のいずれも前6月間に算定していない状態から始まるため、理学療法士等の訪問を開始した月からロで減算に入りえます。緊急時訪問看護加算の体制を開設時から届け出ておくのが、実務上いちばん確実な外し方です。
令和8年6月の改定でこの減算は変わりましたか
変わっていません。令和8年度改定で訪問看護に入った主な変更は介護職員等処遇改善加算の新設です。単位数・要件とも令和6年度改定のままです。
この章の出典
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年3月23日 厚生労働省告示第96号)四の二
- 厚生労働省「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年3月14日 厚生労働省告示第127号)注17
- 厚生労働省「介護保険法施行規則」(平成11年3月31日 厚生省令第36号)第7条
まとめ
この減算で額より重いのは、判定を間違えたまま気づかない期間です。判定が込み入っている理由は3つあります。入口が2つあってOR条件であること。判定に使う「訪問回数」が算定回数と違うこと。そして判定の期間と適用の期間が1年ずれていること。
このうち事業所が取り違えやすいのは2番目です。20分を3回算定した60分の訪問は、算定回数3回・訪問回数1回。連続して行った2回は1回。この丸め方を知らずに算定回数で比べると、実際には該当しない事業所が該当すると誤り、逆もまた起こります。
数え直しを年度末に始めると、記録書を1年分めくることになります。月次の請求のときに訪問回数の列を1つ持っておけば、3月末は集計を締めるだけです。介護予防の利用者については、あわせて理学療法士等の訪問の利用開始月も控えておく。
減算は、気づかない期間だけ静かに続きます。体制の届出をしていなければ、請求と突き合わせて気づかせてくれる相手もいません。年に一度、4月の請求の前に前年度の回数と加算の算定実績を並べて見る日を決めておくことです。
この章の出典
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成27年3月23日 厚生労働省告示第96号)四の二
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(令和6年3月15日・介護保険最新情報Vol.1225)問28
確認しきれなかった点
本文に書けるだけの一次資料を確認できなかった項目です。算定できない・要件が存在しないという意味ではありません。
| 項目 | 状況 | 照会がつくまでの運用 |
|---|---|---|
| 老企第36号 第二の4⑷の①〜⑦の逐語 | 参照した資料が新旧対照表で、改正部分の⑧のみ全文が掲載されており①〜⑦は「(略)」。週6回・1回20分以上は厚生労働省が令和8年6月29日の介護給付費分科会に提出した資料で確認したが、通知本文の逐語は未取得 | 週6回・20分以上として運用し、逐語の引用が要る場合は通知の全文を確認する |
| 8単位減算と1日2回超の減額の適用順序 | 根拠が別なので併存すると読めるが、順序を明示した一文は確認できず。介護給付では端数処理の結果どちらの順でも257単位で差が出ない。差が出るのは介護予防の1日2回超(138単位か134単位か) | 請求ソフトの計算結果で確認する |
| 体制等状況一覧表の届出欄の名称 | 複数の指定権者の様式一覧を参照したが、この減算に対応する欄の名称を特定できず | お使いの様式で「理学療法士等」「訪問回数」を含む欄を確認する |
| サービスコード表上の合成コード | 令和6年6月施行版の訪問看護サービスコード表で、8単位減算・12月超減算に対応する合成コードの有無と名称を確認できず | 明細書のプレビューで単位数が減算後の値になっているかを確認する |
| 医療保険の訪問を「訪問回数」の比較に含めるか | 明示したQ&Aは確認できず。介護報酬の施設基準なので介護保険の訪問で判定すると読むのが素直だが、問29の参照書類(報告書・記録書)は医療保険の訪問も載る | 集計の範囲を指定権者に照会する |
| 新規指定で前年度実績がない場合のイの扱い | 令和6年度改定Q&A(Vol.1)に該当する問なし | 指定権者へ照会する。ロは開設直後から該当しうる前提で運用する |
| 週6回の限度の数え方(算定回数ベースか)と週の起算日 | 週6回・20分以上は分科会資料で確認したが、通知本文の逐語は未取得。週の起算日を定めた原文にも到達できず | 算定回数ベースを前提に組み、指定権者の集団指導資料で確認する |
| 別職種が連続して訪問した場合の訪問回数の積み方 | 老企第36号は職種ごとに算定できるとするが、判定の訪問回数をそれぞれに積むかを明示した疑義解釈は確認できず | それぞれに積むものとして集計し、判断が要る場合は指定権者へ照会する |
| 介護予防の12月超の起算月と事業所変更の関係 | 注17の主語は利用者だが、事業所を変えた場合の起算月を示した原文は確認できず | 指定権者へ照会する |
| 理学療法士等による訪問の割合の年次推移 | 令和6年度の値(介護34.1%・介護予防48.3%)は複数回の読み取りで一致したが、それ以前の年度の系列は表の読み取りが安定せず | 年次推移として引用せず、令和6年度の値のみを使う |
参考・出典一覧
法令・告示・省令
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第4項
- 介護保険法施行規則(平成11年3月31日 厚生省令第36号)第7条
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日 厚生省告示第19号)訪問看護費 注1
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日 厚生労働省告示第127号)介護予防訪問看護費 注1・注16・注17
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年3月23日 厚生労働省告示第96号)四の二
通知・疑義解釈
- 老企第36号「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月15日改正・新旧対照表)
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日・介護保険最新情報Vol.1225)問28・問29・問30
- 令和6年度介護報酬改定の施行時期について
算定構造・審議会資料
自治体(指定権者の手引き)