初回加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。(Ⅰ)は350単位、(Ⅱ)は300単位。50単位の差ですが、算定の実態は大きく開いています。厚生労働省の集計では、初回加算(Ⅱ)を算定した事業所が9,614か所(55.2%)あるのに対し、(Ⅰ)を算定した事業所は915か所、5.3%でした。令和6年度改定で新設された(Ⅰ)は、まだほとんど使われていません。
分かれ目は一つ、退院・退所した当日に看護師が初回訪問したかどうかです。(Ⅰ)の算定がここまで少ない背景には、退院当日から関われる場面自体が限られることに加え、同じ退院当日の関与でも単位数の高い退院時共同指導加算(600単位)を選ぶ事業所があるという事情もあります(5章)。
この記事では、(Ⅰ)と(Ⅱ)の分かれ目、つまずきやすい「過去2月」の数え方、医療保険との関係、退院時共同指導加算とどちらを取るかの判断までを、告示・通知の原文にあたって整理しました。
急ぎの方へ
| いまの状況 | 進む先 |
|---|---|
| 単位数と基本の要件を知りたい | 1章 初回加算とは |
| (Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらで算定するか迷っている | 2章 (Ⅰ)と(Ⅱ)の分かれ目 |
| この利用者は「新規」に当たるのか知りたい | 3章 過去2月の数え方 |
| 医療保険の利用者にも算定できるか | 4章 医療保険に初回加算はない |
| 退院時共同指導加算と両方算定できるか | 5章 退院時共同指導加算との関係 |
| 准看護師・リハビリ職が初回訪問した | 7章 Q4 |
| 返戻・過誤になった/算定を忘れていた | 6章 返戻・過誤のパターン |
| 細かい疑問(別事業所・同月2か所など) | 7章 よくある質問 |
1. 初回加算とは — 単位数と告示の原文
初回加算は、その事業所として新規の利用者に訪問看護計画書を作って初回訪問をしたことを評価する加算です。介護保険の訪問看護費・介護予防訪問看護費の両方にあり、月1回、どちらか一方の区分だけを算定します。
| 区分 | 単位数 | 要件の核 |
|---|---|---|
| 初回加算(Ⅰ) | 350単位/月 | 退院・退所した日に看護師が初回訪問 |
| 初回加算(Ⅱ) | 300単位/月 | それ以外の初回訪問 |
介護予防訪問看護も同じ単位数です((Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位)。1単位あたりの単価は地域区分により10円〜11.40円なので、(Ⅰ)はおおむね3,500円〜3,990円に相当します。
告示の注は次のとおりです(指定居宅サービス介護給付費単位数表・訪問看護費)。
新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所又は介護保険施設から退院又は退所した日に指定訪問看護事業所の看護師が初回の指定訪問看護を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。ただし、⑵〔=初回加算(Ⅱ)〕を算定している場合は、算定しない。
(Ⅱ)の注はこの「退院又は退所した日に」「看護師が」の限定がない形で、(Ⅰ)を算定している場合は算定しない、と定めます。つまり(Ⅰ)と(Ⅱ)は同一利用者に対して排他です。両方は取れません。
なお、初回加算は区分支給限度基準額(要介護度ごとに決まる月々の保険給付の上限枠)の管理対象で、この枠の単位数を消費します。特別管理加算や緊急時訪問看護加算のような限度額対象外の加算とは扱いが違い、ケアマネジャーの給付管理票への反映が要ります(6章)。
この章の出典
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回・令和8年6月29日)資料3「訪問看護」
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)厚生労働省法令等データベース
- 兵庫県「訪問看護・介護予防訪問看護の手引き」(令和6年6月。告示注・留意事項の逐条転載)
2. (Ⅰ)と(Ⅱ)の分かれ目 — 「退院当日」と「看護師」
(Ⅰ)の要件は2つの条件が重なったときだけ満たされます。
条件1:退院・退所した「日」の訪問であること。 対象は病院・診療所・介護保険施設からの退院または退所です。翌日ではもう(Ⅰ)にはなりません。その場合は(Ⅱ)の300単位です。
条件2:訪問するのが「看護師」であること。 告示は「指定訪問看護事業所の看護師が」と職種を特定しています。准看護師や理学療法士等による初回訪問では、退院当日であっても(Ⅰ)は算定できません。
場面別の早見表にするとこうなります。
| 場面 | 算定 |
|---|---|
| 退院・退所した当日に看護師が初回訪問 | (Ⅰ) 350単位 |
| 退院・退所した当日でも、准看護師・理学療法士等が初回訪問 | (Ⅰ)不可。(Ⅱ)側で判断(7章 Q4) |
| 退院翌日以降に初回訪問 | (Ⅱ) 300単位 |
| 老健・介護医療院・特養から退所した当日に看護師が初回訪問 | (Ⅰ) 350単位(介護保険施設からの退所を含む) |
| 入院を伴わない新規利用 | (Ⅱ) 300単位 |
冒頭の統計のとおり、(Ⅱ)の算定事業所55.2%に対して(Ⅰ)は5.3%(令和7年11月審査分)。退院日は病院側の都合で動くため当日に看護師の枠を確保しにくいこと、退院当日から始まるケース自体が毎月あるわけではないこと、要件を満たしても退院時共同指導加算を選ぶ事業所があること。少なさの背景は一つではありません。(Ⅰ)が新設で評価したのは「退院直後の空白を作らない」動きであり、取れる場面で取りこぼさない仕組みづくりは検討に値します。
退院当日の対応については、もう一つ選択肢があります。同じ退院当日の関与を評価する退院時共同指導加算(600単位)です。どちらを取るかは5章で整理します。
この章の出典
3. 「新規」の判定 — 過去2月は暦月で数える
初回加算でいちばん返戻・過誤に直結するのがこの判定です。留意事項通知(老企第36号)は次のように定めています。
本加算は、利用者が過去2月間(暦月)において、当該訪問看護事業所から訪問看護(医療保険の訪問看護を含む。)の提供を受けていない場合であって新たに訪問看護計画書を作成した場合に算定する。
短い一文ですが、実務で効く限定が2つ入っています。
過去2月間(暦月)=60日間ではない。 過去2月とは、初回訪問した月の前の2つの暦月です。日数で数えると誤ります。
【図版1】暦月の数え方カレンダー図(下表の3例を月のマス目で図解)
| 例 | 初回訪問(予定日) | 見る暦月 | その2か月の提供 | 初回加算 |
|---|---|---|---|---|
| 新規利用 | 6月10日 | 4月・5月 | なし | 算定できる |
| 再開(最終訪問7月3日) | 9月30日 | 7月・8月 | 7月3日に提供あり | 算定できない |
| 再開(最終訪問7月3日) | 10月1日 | 8月・9月 | なし | 算定できる |
2例目と3例目は再開日が1日違うだけです。9月30日なら過去2月は7月・8月で、7月3日の訪問が引っかかります。10月1日なら過去2月は8月・9月になり、算定できます。日数では同じ「約3か月ぶり」でも、暦月の区切りで可否が割れる境目です。
「医療保険の訪問看護を含む」— 保険の切り替えでは算定できない。 特別訪問看護指示書の交付により14日間だけ医療保険の訪問看護へ移り、その後介護保険に戻ってきた。このとき、過去2月内に自事業所から医療保険の訪問看護を提供していれば、介護保険の初回加算は算定できません。保険が変わっても「当該事業所からの訪問看護」は続いているからです。請求ソフト上は別レセプトになるため見落としやすく、点検で拾いにくいポイントです。
なお、「新規に訪問看護計画書を作成した」の判定はあくまで自事業所単位です。他の事業所からの利用歴は問いません(7章)。
この章の出典
4. 医療保険に「初回加算」はない
「医療保険の利用者にも初回加算を付けられるか」という疑問には、短く答えられます。付けられません。訪問看護療養費(医療保険)に、初回加算という名前の加算は存在しないからです。
では医療保険は初回月を評価していないのかというと、そうではなく、仕組みごと違います。
| 介護保険 | 医療保険 | |
|---|---|---|
| 初回・開始時の評価 | 初回加算(Ⅰ)350単位/(Ⅱ)300単位 | 訪問看護管理療養費が「月の初日」と「月の2日目以降」の別建て。初日を高く評価 |
| 退院当日の評価 | 初回加算(Ⅰ)(看護師の訪問)または退院時共同指導加算 | 退院支援指導加算 6,000円(長時間の場合8,400円) |
医療保険では、管理療養費そのものが「月の初日の訪問」と「2日目以降の訪問」で単価を分けており、初回月の立ち上げにかかる手間は加算ではなく本体で評価される建付けです。金額は機能強化型の区分などで細かく分かれ、改定のたびに動くため、請求前に最新の料金表(令和8年6月改定対応版)で確認してください。
この構造の違いは、レセプト点検の観点でも意味があります。介護保険のレセプトで初回加算の算定漏れを点検する習慣があっても、医療保険側に「同じ加算」は存在しないため、探しても見つかりません。医療保険で見るべきは、月の初日の区分が正しく請求されているか、退院当日の指導が退院支援指導加算として拾えているか、の2点です。
この章の出典
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版)
- 訪問看護療養費に係るマスターの変更点について(令和8年3月6日・審査支払機関)
- 福岡県看護協会掲載 訪問看護料金表(医療保険・令和8年6月改定対応)
5. 退院時共同指導加算とどちらを取るか
退院にあたって病院・診療所・老健・介護医療院と共同で在宅療養の指導を行い、内容を文書で提供してから初回訪問をした場合、退院時共同指導加算(600単位)の対象になります。ここで実務の判断が発生します。初回加算と退院時共同指導加算は、両方は算定できません。
根拠は告示の退院時共同指導加算の注にあります。介護予防訪問看護費の条文を引きます。
退院時共同指導加算として、当該退院又は退所につき1回(特別な管理を必要とする利用者については、2回)に限り、所定単位数を加算する。ただし、ハの初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しない。
「ハの初回加算」は(Ⅰ)(Ⅱ)を区別しない項全体の参照です。つまり(Ⅰ)でも(Ⅱ)でも、初回加算を算定するなら退院時共同指導加算は取れません。訪問看護費(居宅)側も同じ構造のただし書きです。解説記事のなかには併算定不可の対象を(Ⅰ)だけとするものも見られますが、条文は初回加算全体を指しています。
実務上は、両方の要件を満たす場合にどちらか一方を選んで請求する扱いになります(条文でただし書きが置かれているのは退院時共同指導加算の側です)。判断材料を並べます。
| 初回加算(Ⅰ) | 退院時共同指導加算 | |
|---|---|---|
| 単位数 | 350単位 | 600単位(特別な管理を必要とする利用者は、共同指導を2回行った場合に2回まで=最大1,200単位) |
| 必要な行為 | 退院当日に看護師が初回訪問 | 退院前の共同指導+指導内容の文書提供+記録 |
| 書類 | 訪問看護計画書(新規作成) | 上記に加えて共同指導の記録・提供文書 |
単位数だけなら退院時共同指導加算が上です。共同指導を実施し記録要件を満たせるなら600単位を、退院前の関与がなく当日の訪問から始まるなら初回加算を、という選び方が条文に沿います。取扱いに迷う場合は保険者に確認してください。
もう一つ、対象施設の違いに注意が要ります。初回加算(Ⅰ)の対象は「病院、診療所又は介護保険施設」で、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)からの退所も含みます。一方、退院時共同指導加算の対象は「病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院」で、特養からの退所は含まれません。特養退所のケースでは択一は発生せず、初回加算だけが選択肢です。「特別な管理を必要とする利用者」の範囲は特別管理加算の記事で扱った対象者リストと重なる領域です。
もう一つ、名称が紛らわしい別の制度に退院支援指導加算があります。こちらは医療保険側の加算で、退院日に在宅療養の指導を行うことが要件です。算定日の考え方や、初回訪問前に利用者が死亡・再入院した場合の扱いは、本記事の初回加算とは別の条文で決まります。
新規開設したばかりの事業所であれば、その前に届出が受理されているかの確認が要ります。開業時に出せる届出と出せない届出は訪問看護の開業と事務・請求体制の記事にまとめました。
初回加算以外の加算も含めた金額と届出の要否は、訪問看護の加算一覧・早見表で医療保険・介護保険をまとめて確認できます。
この章の出典
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)厚生労働省法令等データベース(退院時共同指導加算の注・ただし書きを逐語確認)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)厚生労働省法令等データベース
6. 返戻・過誤になるパターン
初回加算そのものの要件はシンプルなので、つまずきは要件の外側で起きます。
給付管理票との不一致。 初回加算は区分支給限度基準額の管理対象なので、ケアマネジャーの給付管理票・サービス提供票に加算分の単位が載っている必要があります。事業所側だけで算定を判断し、ケアマネ側の提供票に反映されないまま請求すると、国保連の突合で不一致になります。新規利用開始のバタバタした時期に発生しやすい型です。算定を決めた時点で、サービス提供票への反映をケアマネに依頼してください。
暦月の数え間違い。 3章のとおり、「2か月空いた」の判定を日数で数えると誤ります。再開利用者の初回加算は、最終提供月と再開月をカレンダーで確認してからにします。
保険切り替えの見落とし。 医療保険を挟んだ利用者への算定です。介護レセプトの履歴だけ見ると空白の2か月に見えるため、医療レセプトの履歴も併せて確認します。
誤りに気づいたときの手続きは、請求前なら修正するだけですが、支払い後なら介護保険は過誤申立、算定漏れの方向なら月遅れ請求です。手順と期限は加算算定漏れの記事にまとめています。また、運営指導の報酬請求指導では加算の算定要件を関係文書で確認するとされており、初回加算なら訪問看護計画書の作成日と直近の利用実績の整合が確認の対象になり得ます。書類同士の突合という観点は運営指導対策の記事で全体像を書きました。
この章の出典
7. よくある質問
Q1. 別の訪問看護事業所を使っていた利用者が、うちの事業所を新規に使い始めた。初回加算は算定できますか。
できます。平成24年度介護報酬改定Q&A(問36)が「一つの訪問看護事業所の利用者が、新たに別の訪問看護事業所の利用を開始した場合」について算定可能と明答しています。過去2月の縛りは「当該事業所からの提供」だけを見ます。
Q2. 同じ月に2か所の訪問看護事業所を新規に使い始めた場合は。
それぞれの事業所で算定できます(同Q&A問37)。
Q3. 介護予防訪問看護の利用者が要介護になり、同じ事業所で訪問看護に切り替わった。算定できますか。
できます(同Q&A問38)。予防から本体への移行は、一体的に運営している事業所であっても新規扱いです。逆に、医療保険を挟んだ場合は算定できない(3章)ので、この2つを混同しないでください。
Q4. 初回訪問を理学療法士や准看護師が行いました。初回加算は。
(Ⅰ)は算定できません。告示が「看護師が」と職種を特定しているためです。保健師の扱いに直接答える公式Q&Aは確認できなかったため、保健師での算定は保険者にご確認ください。
(Ⅱ)は、注に職種の限定がないため、告示の文言上は排除されていません。ただし訪問看護計画書は看護師等(准看護師を除く)が作成する決まりがあり、初回を誰が訪問するかは計画・体制側の論点と絡みます。リハビリ職中心の初回運用を取る場合は保険者に確認してください。作成主体の規定は書類作成代行の記事で扱っています。なお准看護師が訪問した回は、基本報酬が所定単位数の100分の90になる減算が(Ⅰ)(Ⅱ)とは別にあります。
Q5. 事業所の統合・移転で事業所番号が変わった場合、既存利用者に初回加算は算定できますか。
この点に直接答える訪問看護の公式Q&Aは、調べた範囲では見つかりませんでした。実務では保険者判断になる領域なので、指定権者に文書で確認し、回答を記録に残してから算定してください。
この章の出典
8. 月350単位の裏にある、月350単位ぶんではない仕事
初回加算の算定判断は、この記事で見てきたとおり、暦月の数え方・保険種別の履歴・退院時共同指導加算との択一・給付管理票への反映と、確認事項が横に広がります。新規利用者を受けるたびにこの判定が発生し、判定を誤れば返戻・過誤対応という別の仕事が増えます。
株式会社ainaruは、訪問看護ステーションのレセプト請求・加算算定チェック・書類作成支援を行う介護BPOサービスを提供しています。新規受け入れ時の算定判断や、再開利用者の履歴確認のような「間違えると手戻りが大きい確認仕事」を外に出したい事業所は、サービス案内をご覧ください。加算全体の拾い漏れ点検は加算算定漏れの記事、事務負担全体の考え方は人手不足対策の記事もどうぞ。
ご利用にあたって
本記事は令和8年(2026年)8月時点の告示・通知・公開資料に基づいて作成しています。介護報酬は改定で変わります。実際の算定にあたっては、必ず最新の告示・留意事項通知と、保険者・国保連の案内をご確認ください。個別のケースの算定可否は、指定権者または請求先にご確認いただくのが確実です。
参考・出典一覧
厚生労働省
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回・令和8年6月29日)資料3「訪問看護」
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)
- 平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1・平成24年3月16日)(介護保険最新情報Vol.267)
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第103回・平成26年6月)資料1「区分支給限度基準額について」
- 保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版)