最終確認日:令和8年8月12日|根拠告示:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費 注/指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)

看護体制強化加算は、介護保険の訪問看護で、緊急時訪問看護加算・特別管理加算の算定割合とターミナルケア加算の算定件数が一定以上ある事業所を評価する、利用者1人につき月1回の加算です((Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位・介護予防100単位)。

うちのステーションは要件を満たしているのか。割合はどの数字をどう割って出すのか。届出のあとも毎月何かをしないといけないのか。この記事はその3つに答えます。

先に、この加算のいちばんの特徴を書きます。体制を整えて届け出れば終わり、の加算ではありません。 要件の割合は「算定日が属する月の前6月間」の実績で決まるため、判定の窓は毎月1か月ずつ動きます。届出はスタート地点で、算定を続ける限り毎月の実績管理がセットです。この記事では、そこに6章をまるごと充てました。

なお、この加算は名前の似た別の加算と取り違えられやすく、検索結果にも別の加算の解説が混ざって表示されています。自分が調べたい加算がどれなのか、先に2章の表で確かめてください。

先に結論

問い答え
どの保険の加算か介護保険です。医療保険の訪問看護には別の仕組み(機能強化型)があります(→2章
いくらの加算か(Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位、介護予防は100単位。利用者1人につき月1回です(→3章
ⅠとⅡは何で分かれるかターミナルケア加算の利用者数だけです。(Ⅰ)は前12月間で5名以上、(Ⅱ)は1名以上(→3章
割合の要件は前6月間の実利用者のうち緊急時訪問看護加算50%以上+特別管理加算20%以上。看護職員6割以上も要ります(→3章4章
届出はどこに指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)へ。毎月15日以前の届出で翌月から算定です(→5章
届出のあとは毎月、直近6月・12月の実績で判定し続けます。下回ったら速やかに届出です(→6章
取っている事業所は全国の算定事業所割合は約10%です。緊急時訪問看護加算の約88%と比べるとかなり少数です(→7章

場面から探す場合は、こちらから。

1. 結論:実績を評価する加算。体制だけでは取れない

看護体制強化加算とは、介護保険の訪問看護費・介護予防訪問看護費に設けられた加算で、医療ニーズの高い利用者や看取りへの対応実績が一定以上ある事業所を評価するものです。利用者1人につき1月に1回、所定単位数を加算します。

似た趣旨の加算に、24時間対応の「体制」そのものを評価するものがあります(介護保険の緊急時訪問看護加算、医療保険の24時間対応体制加算)。看護体制強化加算はそれらと性格が違い、緊急時訪問看護加算などを実際にどれだけの利用者に算定してきたかという「実績の割合」が要件の中心です。体制を整えた月から取れる加算ではなく、実績が積み上がってはじめて要件に届きます。

だからこそ、この加算の実務は「要件を読む」だけでは終わりません。割合の分母と分子を正しく数えること、そしてその割合を毎月更新して監視し続けること。この2つが本体です。

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2. 似た名前の加算と間違えていませんか

「看護体制強化加算」を調べると、検索結果には別の加算の解説が上位に混ざって表示されます。名前が似た制度が実際に複数あるためです。先に区別してください。

名称制度対象サービス何が違うか
看護体制強化加算介護保険訪問看護・介護予防訪問看護この記事の加算。月1回、実績割合が要件
看護体制強化加算(同名)介護保険看護小規模多機能型居宅介護(看多機)名前が同じでも月単位の別の加算。要件・単位数は別に定められています
サービス提供体制強化加算介護保険訪問看護ほか多数勤続年数で評価する別の加算。1回ごとに加算します(→サービス提供体制強化加算の記事
看護体制加算介護保険特別養護老人ホーム・短期入所施設系の加算。訪問看護とは無関係です
機能強化型訪問看護管理療養費医療保険訪問看護ステーション医療保険側の上位評価。届出先も地方厚生局で別です

とくに取り違えやすいのが2つあります。ひとつはサービス提供体制強化加算。同じ訪問看護の加算ですが、こちらは職員の勤続年数を評価する加算で、看護体制強化加算とは要件も算定単位(回ごと)も別物です。もうひとつは医療保険の機能強化型訪問看護管理療養費。「実績要件のある上位評価」という発想は共通ですが、制度も届出先も要件の中身も違います。機能強化型の4区分の要件と収支は機能強化型訪問看護管理療養費の記事で整理しています。

介護保険の訪問看護の加算全体を俯瞰したい場合は訪問看護の加算一覧・早見表をどうぞ。

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3. 単位数と算定要件|ⅠとⅡを分けるのはターミナル件数だけ

3-1. 単位数

区分単位数算定単位
看護体制強化加算(Ⅰ)(訪問看護)550単位利用者1人につき月1回
看護体制強化加算(Ⅱ)(訪問看護)200単位同上
看護体制強化加算(介護予防訪問看護)100単位同上(区分はひとつだけ)

介護予防訪問看護にはⅠ・Ⅱの区分がなく、100単位のひとつだけです。

3-2. 算定要件の原文

要件は「厚生労働大臣が定める基準」(平成27年厚生労働省告示第95号)の第九号「訪問看護費における看護体制強化加算の基準」に定められています。(Ⅰ)の要件を原文から引きます(読みやすさのため、各要件中の括弧書き〔対象加算の条文上の定義など〕は省略しています)。

算定日が属する月の前六月間において、指定訪問看護事業所における利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の占める割合が百分の五十以上であること。

算定日が属する月の前六月間において、指定訪問看護事業所における利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の占める割合が百分の二十以上であること。

算定日が属する月の前十二月間において、指定訪問看護事業所におけるターミナルケア加算を算定した利用者が五名以上であること。

当該事業所において指定訪問看護の提供に当たる従業者の総数のうち、看護職員の占める割合が百分の六十以上であること。

(Ⅱ)の要件はこのうちターミナルケア加算だけが「一名以上」に変わり、他は同じです。整理すると次のとおりです。

要件(Ⅰ)(Ⅱ)介護予防
緊急時訪問看護加算の実利用者割合(前6月間)50%以上50%以上50%以上(緊急時介護予防訪問看護加算)
特別管理加算の実利用者割合(前6月間)20%以上20%以上20%以上
ターミナルケア加算の利用者数(前12月間)5名以上1名以上要件なし
看護職員の割合6割以上6割以上6割以上

表中の割合は、延べ人数ではなく実人数(実利用者数)で数えます。数え方の根拠は4章で示します。

ⅠとⅡを分けるのはターミナルケア加算の利用者数だけです。緊急時50%・特別管理20%・看護職員6割は両区分共通なので、「(Ⅱ)は取れているが(Ⅰ)に届かない」場合のボトルネックは常に看取りの件数ということになります。介護予防側にはターミナルケア加算という加算自体が存在しないため、ターミナル要件もありません。

構成要素になっている各加算の中身は、それぞれ別記事で扱っています。特別管理加算の対象者は特別管理加算の記事、ターミナルケアの要件はターミナルケア療養費の記事(医療保険側が主ですが介護のターミナルケア加算との非対称も整理しています)、緊急時訪問看護加算と似た名前の加算の区別は緊急訪問看護加算の記事をどうぞ。

3-3. 看護職員6割要件は令和3年に入った

看護職員の割合6割以上は令和3年度改定で新設された要件です。訪問看護の提供に当たる従業者のうち、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の比率が高い事業所はここで引っかかります。この加算が取れない場合でも、勤続年数で判定するサービス提供体制強化加算はリハビリ職も分母・分子に数えるため算定できることがあります。あわせて、リハビリ職の訪問回数が看護職員を超えていると理学療法士等の8単位減算の対象にもなります。新設時には令和5年3月31日までの経過措置が置かれ、急な看護職員の退職等で要件を満たせなくなった場合に採用計画の提出で適用を猶予する取り扱いも定められました(→8章)。

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4. 割合の計算方法|分母・分子・期間の数え方

4-1. 「実利用者数」の数え方には公式の答えがある

割合の分母は「算定日が属する月の前6月間における利用者の総数」、分子は同じ期間に各加算を算定した利用者の数です。ここで迷うのが、同じ利用者が何か月も利用している場合の数え方です。留意事項通知(老企第36号)の文言を確認する形で、平成30年度介護報酬改定Q&A(介護保険最新情報Vol.629 問10)に明文があります。

前6月間において、当該事業所が提供する訪問看護を2回以上利用した者又は当該事業所で当該加算を2回以上算定した者であっても、1として数えること

つまり延べ人数ではなく実人数(実利用者数)です。6か月間毎月利用した人も1人、1回だけ利用した人も1人と数えます。

4-2. 計算例

実利用者ベースで数えると、計算そのものは単純です。

例1:緊急時訪問看護加算の割合(要件50%以上)

前6月間の実利用者が48人、うち緊急時訪問看護加算を1回でも算定した実利用者が27人なら、27÷48=56.25%。要件を満たします。

例2:特別管理加算の割合(要件20%以上)

同じ48人のうち特別管理加算の算定実利用者が9人なら、9÷48=18.75%。この事業所はⅠにもⅡにも届きません。 緊急時の割合がどれだけ高くても、4要件はすべて同時に満たす必要があります。

例3:ターミナルケア加算の件数((Ⅰ)5名・(Ⅱ)1名)

こちらは割合ではなく人数です。前12月間にターミナルケア加算を算定した利用者を数えます。判定期間が他の2つ(前6月間)と違う点に注意してください。

【図版1】割合判定のイメージ図(前6月間・前12月間の判定窓が算定月ごとに1か月ずつスライドすることを示すタイムライン)

4-3. この記事で確定できなかった数え方

分母まわりには、原文で確認しきれなかった論点が3つあります。第一に、月の途中で医療保険の訪問看護に切り替わった利用者(特別訪問看護指示書の交付月など)を分母に含むのか。第二に、訪問看護と介護予防訪問看護の利用者を合算して計算するのか、別々に計算するのか。第三に、令和6年度に緊急時訪問看護加算が(Ⅰ)(Ⅱ)の2区分になったあと、どちらの区分の算定者も分子に数えてよいのか。いずれも記事末の開示表にまとめました。判定が割れそうな場合は、届出前に指定権者へ確認することをおすすめします。保険の切り替わりが起きる場面そのものは特別訪問看護指示書の記事で整理しています。

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5. 届出の実務|別紙19・15日ルール・自治体差

5-1. 様式と提出先

項目内容
提出先指定権者(都道府県・指定都市・中核市。権限移譲先の市町村の場合あり)
基本の様式介護給付費算定に係る体制等に関する届出書+体制等状況一覧表
加算固有の様式看護体制強化加算に係る届出書(別紙19。前6月間の実利用者数・各加算の算定者数・割合を記入)

医療保険の届出(地方厚生局)とは完全に別系統です。開業時にどの届出をどちらへ出すかの全体像は開業と事務・請求体制の記事で扱っています。

別紙19に書くのは、算定開始月の前6月間(ターミナルは前12月間)の実利用者数・算定者数・割合です。ここでひとつ実務の引っかかりがあります。7月から算定するには6月15日までに届出が必要ですが、その時点で6月分の実績はまだ確定していません。この点は、直近月を見込みで記入して届け出る建て付けが平成30年度Q&A(問11)で前提とされています。見込みが外れた場合の扱いは6章へ。記入対象期間の指定や根拠資料の添付要否は自治体で異なる場合があるため、様式の注記もあわせて確認してください。

5-2. いつから算定できるか

介護保険の体制届出は受理日ではなく日付のルールが明確です。毎月15日以前に届け出れば翌月から、16日以降なら翌々月から算定です。たとえば7月1日から算定を始めたければ、6月15日までに届出が必要です。医療保険側の「月末までに受理→翌月」(24時間対応体制加算の記事6章)とルールが違う点も、両保険を扱うステーションでは混同しやすいところです。

5-3. 自治体の運用差に注意する

届出の細部は自治体で運用が分かれます。実例として三重県は、看護職員6割要件の経過措置が終わる令和5年度の切り替わり時に、すでに算定中の事業所にも改めての届出を求め、「期日までに届出がない場合、看護体制強化加算『なし』の取扱となり、算定できなくなります」と案内していました。恒常的に毎年度の届出を求める運用かどうかは自治体ごとに異なるため、自分の指定権者のページで、様式とあわせて「継続時に再届出が要るか」まで確認してください。15日の期限が必着か消印かも自治体の案内で分かれるところで、電子申請届出システムを使う場合の扱いとあわせて確認が要ります。

5-4. 届出の前に、ケアマネジャーへ連絡する

もうひとつ、届出そのものより先にやるべきことがあります。看護体制強化加算は、区分支給限度基準額の管理の対象です。 介護給付費単位数の算定構造表は、訪問看護費で支給限度額管理の対象外となる算定項目を「特別地域訪問看護加算」「中山間地域等における小規模事業所加算」「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「ターミナルケア加算」「サービス提供体制強化加算」「介護職員等処遇改善加算」の8つと明示しており、看護体制強化加算はこの中に入っていません。

つまり、算定を始めると利用者全員の給付管理の単位数が毎月550単位((Ⅱ)は200単位)増えます。要件の分子側の加算(緊急時・特別管理・ターミナル)がいずれも限度額の対象外であるのと対照的です。区分支給限度基準額の上限近くまでサービスを使っている利用者では、他サービスとの調整や自己負担の増加が起こりえます。利用者負担も1割負担で月550円((Ⅱ)200円)、3割負担なら月1,650円(同600円)上がります。

算定開始月の前月までに、担当のケアマネジャーへ単位数が変わることを文書で伝え、限度額に近い利用者は個別に調整しておいてください。ここを飛ばして算定を始めると、給付管理票との不一致による返戻や、利用者・ケアマネからの問い合わせが算定初月に集中します。

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6. 算定してからが本番|毎月のモニタリングと要件割れ時の手続き

6-1. 判定の窓は毎月動く

要件の割合は「算定日が属する月の前6月間」で判定します。つまり8月分を算定するなら2〜7月、9月分なら3〜8月の実績です。判定の窓は毎月1か月ずつスライドするので、届出時に満たしていた割合が、その後も満たされ続けるとは限りません。 実利用者48人の事業所なら、特別管理加算20%のボーダーは10人。中重度の利用者が1〜2人減るだけで判定が変わる計算です。

6-2. 下回ったら速やかに届出。放置は返還につながる

届出のあとに要件を満たせなくなった場合の扱いは、平成30年度Q&A(問11)に明文があります(届出時に直近月を見込みで書く建て付けは→5-1)。

6月分を見込みとして届出を提出した後に、加算が算定されなくなる状況が生じた場合には、速やかにその旨を届出すること

要件割れに気づいたときに実際にやることは、順番で書くと3つです。第一に、その月の請求に加算を載せない(国保連への伝送前なら請求データから外します)。第二に、すでに請求済みの月があれば過誤申立(過誤調整)で取り下げる。第三に、体制届出の変更(取り下げ)を指定権者へ出す。要件を欠いたまま算定を続けた場合のリスクは、指定権者側がはっきり書いています。堺市の案内には「加算要件を満たさなくなった場合は、取り下げの届出が必要」「基準を満たさないまま加算を算定し続けた場合、高額の介護報酬の返還を求められる」とあります。看護体制強化加算は単位数が大きく利用者全員に付く加算なので、数か月放置してからの遡及返還は金額が膨らみます。運営指導で体制届出と実績の突合が行われる流れは運営指導対策の記事で扱っています。

割合が回復したら、改めて届出を出し直します。再開のタイミングは新規の届出と同じで、15日以前の届出で翌月からです(→5-2)。取り下げていた期間の分を遡って算定することはできません。体制届出のない月は算定できないためです(加算の算定漏れの記事で整理した型と同じです)。

6-3. 月次チェックの実務

毎月のレセプト締めのあとに、次の3行を更新するだけの管理表を用意しておくと、要件割れの月を見逃しません。

  1. 前6月間の実利用者数(分母)
  2. 緊急時訪問看護加算・特別管理加算それぞれの算定実利用者数と割合
  3. 前12月間のターミナルケア加算の利用者数

数字はレセプトの算定実績から拾えるため、請求業務と同じタイミングで機械的に更新できます。逆に、請求と切り離して「気づいたときに確認する」運用にすると、判定の窓が動いていることを忘れます。

【図版2】月次モニタリング表のサンプル(分母・分子・割合・ターミナル件数の4行×直近6か月の列)

なお、毎月見るべきものは割合だけではありません。同じ体制届の用紙で管理する業務継続計画未策定減算・高齢者虐待防止措置未実施減算は、要件を欠いた月から利用者全員の所定単位数が1%下がります(→BCP未策定減算・虐待防止減算の記事)。届出の区分と実態が合っているかは、この割合の集計と同じタイミングで見ておくと確実です。

この3行の集計は、レセプトの締め処理と同じデータから作れます。株式会社ainaruのレセプト・事務代行では、毎月の請求業務とあわせて加算要件の割合集計まで扱えます。

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7. 取るべきか|算定事業所は約10%。ボトルネックはどこか

7-1. 算定している事業所は約1割

社会保障審議会介護給付費分科会の資料(第259回・令和8年6月29日「訪問看護」)に、この加算の算定状況があります。看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定する事業所の割合は約10%で、近年横ばいです。

構成要件になっている各加算の算定事業所割合と並べると、どこにハードルがあるかが見えます。

加算算定事業所割合(介護給付費分科会 第259回資料)
緊急時訪問看護加算約88%(令和7年4月審査分時点)
特別管理加算66〜69%で推移
ターミナルケア加算9〜10%で横ばい
看護体制強化加算約10%で横ばい

緊急時訪問看護加算は約88%の事業所が算定しており、「体制」の要件は大半の事業所が既にクリアしている数字です。一方でターミナルケア加算の算定事業所は約1割しかなく、看護体制強化加算の約10%とほぼ同水準です。事業所単位で見たボトルネックは、割合要件よりも看取りの実績、それも(Ⅰ)なら年5名という件数です。

この件数のハードルには理由があります。数えられるのは介護保険のターミナルケア加算を算定した利用者だけで、基準の文言が「ターミナルケア加算を算定した利用者」である以上、医療保険のターミナルケア療養費で看取った利用者は入りません。がん末期の利用者は死亡前に医療保険へ切り替わることが制度上多いため(別表第七該当)、「年に10件看取っている」事業所でも介護保険側の看取りは数件、という開きが生まれます。看取りの実績が両保険でどう分かれるかはターミナルケア療養費の記事で整理しています。

利用者単位の割合(緊急時50%・特別管理20%)は事業所の利用者構成に依存するため、体制で9割が取れていても利用者割合50%に届くかは別問題である点にも注意が要ります。分子を増やす余地があるとすれば、緊急時訪問看護加算の説明と同意を新規契約時の標準の流れに組み込むことです。緊急時訪問看護加算そのものは支給限度額管理の対象外なので、利用者のプランを圧迫しないという説明材料も使えます(→5-4)。

7-2. 収益インパクトの目安

看護体制強化加算は利用者1人につき月1回算定します。1単位10円の地域で介護保険の利用者が40人いる事業所なら、(Ⅰ)で550単位×40人=月22万円、年264万円。(Ⅱ)でも200単位×40人=月8万円、年96万円です。単位単価は地域区分で10円〜11.40円まで変わるため、自事業所の単価で置き換えてください。介護予防訪問看護の利用者分は100単位で別計算です。また、区分支給限度基準額の上限に近い利用者では満額が給付されない場合があります(→5-4)。

金額だけ見れば大きい加算ですが、要件の性質上「取りにいって取れる」ものではありません。緊急時・特別管理・看取りへの対応を続けてきた事業所が、すでに満たしているのに届け出ていないケースを拾うのが実務的な入口です。前6月・前12月の実績を一度集計してみて、満たしていれば届出だけで算定が始まります。過去に要件を満たしていた期間があっても、体制届出が出ていなければ遡及はできません(加算の算定漏れの記事で整理した「届出漏れ→遡及不可」の型です)。

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8. 改定の経緯|令和3年で大きく変わり、この加算自体は以後据え置き

8-1. 令和3年度改定:単位数の引き下げと6割要件の新設

現在の形は令和3年度改定でほぼ固まりました。変更点は3つです。

  • 単位数の引き下げ:(Ⅰ)600→550単位、(Ⅱ)300→200単位、介護予防300→100単位
  • 特別管理加算の割合要件の緩和:30%以上→20%以上
  • 看護職員6割以上要件の新設(令和5年3月31日までの経過措置つき。急な退職等の場合は採用計画の提出で猶予)

古い解説には(Ⅰ)600単位・特別管理30%のまま更新されていないものが残っています。この記事の数値は現行の告示ベースです。

8-2. 令和6年度改定:本体は変更なし。周辺が動いた

令和6年度改定では、看護体制強化加算そのものの単位数・要件に変更はありません。ただし構成要素の側が動きました。緊急時訪問看護加算が(Ⅰ)(Ⅱ)の2区分に再編され(看護師等の負担軽減の取組の有無で分かれる建て付けは、医療保険の24時間対応体制加算の区分イ・ロと相似形です)、ターミナルケア加算は2,000単位から2,500単位に引き上げられています。

8-3. 令和8年度:臨時改定はあったが、この加算は動いていない

令和8年度は3年周期の本改定の年ではありませんが、令和8年6月1日施行の臨時改定がありました。内容は処遇改善加算の見直しが中心で、これまで対象外だった訪問看護にも処遇改善加算が新設されています(詳細は訪問看護の処遇改善加算の記事)。看護体制強化加算の単位数・要件はこの臨時改定でも動いていません。次の本改定は令和9年度で、介護給付費分科会では看取り対応の評価が引き続き論点になっています。

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9. よくある質問

Q. 新規開設のステーションはいつから算定できますか?

開設直後は取れません。要件が前6月間(ターミナルは前12月間)の実績で判定されるため、実績が積み上がるまで待つ必要があります。まず緊急時訪問看護加算・特別管理加算の体制と算定を整え、実績が要件に届いた時点で届け出る順番です。

Q. 医療保険の利用者が多い事業所ですが、算定できますか?

看護体制強化加算は介護保険の加算なので、算定対象になるのは介護保険の訪問看護費を算定する利用者だけです。医療保険のみの利用者には付きません。割合の分母に医療保険のみの利用者が入るかどうかは、原文で確定できていません(→記事末の開示)。なお、医療保険側には機能強化型訪問看護管理療養費という別の実績評価があります(→2章)。

Q. 医療保険で看取った利用者は、ターミナルの5名(1名)に数えられますか?

数えられません。基準の文言は「ターミナルケア加算を算定した利用者」なので、数えるのは介護保険のターミナルケア加算の算定者だけです。医療保険のターミナルケア療養費で看取った分は別枠です(→7章)。

Q. 限度額いっぱいまで使っている利用者がいます。算定を始めるとどうなりますか?

この加算は支給限度額管理の対象なので、毎月550単位((Ⅱ)200単位)が限度額の枠を使います。上限を超える分は全額自己負担になるため、算定開始前にケアマネジャーと調整してください(→5-4)。

Q. 割合が49.8%でした。四捨五入で50%になりますか?

告示の文言は「百分の五十以上」です。四捨五入して届くという規定は確認できていないため、届かないものとして扱い、判断に迷う場合は指定権者に確認してください。

Q. ⅡからⅠに上げるときも届出が要りますか?

要ります。区分の変更も体制届出の変更事項です。15日以前の届出で翌月からの切り替えになります(→5章)。

Q. 要件を下回った月の分はどうなりますか?

要件を満たさない月は算定できません。その月の請求から加算を外し、請求済みの分は過誤申立で取り下げたうえで、速やかに体制届出の変更を出します。満たさないまま算定を続けると、運営指導等で発覚した際に遡って返還を求められます(→6章)。

Q. 利用者への説明や同意は必要ですか?

医療保険の24時間対応体制加算のような同意要件は、この加算の告示上の要件にはありません。ただし加算の算定は利用料に反映されるため、重要事項説明書・契約書の利用料金表への記載と説明は必要です。あわせて、給付管理の単位数が変わるので担当ケアマネジャーへの事前連絡も忘れずに(→5-4)。

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10. まとめ

看護体制強化加算は、緊急時50%・特別管理20%・ターミナル件数・看護職員6割という4つの要件をすべて満たした事業所だけが取れる、実績評価の加算です。算定事業所は全国の約10%。統計の対比が示すボトルネックは、割合要件よりも看取りの件数です。

届出は指定権者へ、15日以前で翌月から。そして届出のあとが本番です。判定の窓は毎月動くので、レセプト締めと同じサイクルで分母・分子・ターミナル件数を更新し、ボーダーに近づいたら早めに手を打つ。この月次管理さえ回っていれば、返還リスクは避けられます。

割合の月次集計は、レセプトの算定実績から機械的に拾える作業です。株式会社ainaruのレセプト・事務代行では、請求業務とあわせて加算要件の実績集計まで扱えます。毎月の判定を人手で回しきれない場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。

確認しきれなかった点

以下は本文に書けるだけの一次資料を確認できなかった項目です。

項目状況照会がつくまでの運用
老企第36号の看護体制強化加算の留意事項の逐語通知本体が大部で、該当項の原文(毎月の記録義務の文言等)に到達できず。実利用者の数え方については、通知の文言をQ&A問10が引用・確認する形で間接的に確認済み。毎月判定される建て付け自体は告示の「算定日が属する月の前六月間」の文言とQ&A問11で裏付け月次モニタリングを行い、下回ったら速やかに届出する運用(本文6章)で安全側に倒す
医療保険に切り替わった利用者の分母算入特別指示書交付月など介護・医療双方の実績がある月の扱いを定めた原文を確認できず届出前に指定権者へ照会する
訪問看護と介護予防訪問看護の利用者の合算可否割合計算で両者を合算するか別々に計算するかの原文を確認できず別紙19の様式の記入欄構成を確認のうえ、指定権者へ照会する
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(Ⅱ)再編後の分子の扱い基準の原文は緊急時訪問看護加算を「訪問看護費の注10に係る加算」と括弧書きで定義しており、注10は(Ⅰ)(Ⅱ)双方を含むため告示上は両区分の算定者が分子に入ると読める。2区分化後の扱いを正面から述べた疑義解釈は確認できず告示の文言どおり両区分を数えつつ、判定がボーダーの場合は指定権者へ照会する
看護職員6割の計算方法実人数か常勤換算か、判定時点(毎月か・前6月平均か)、「訪問看護の提供に当たる従業者」に管理者・事務職員を含むかを定めた原文を確認できず指定権者へ照会する。PT・OT・ST比率が高い事業所は届出前に必ず確認する
看護職員6割要件の経過措置の延長有無令和5年3月31日までの経過措置が延長されたという情報は確認できず(=現在は本則適用と解される)6割を下回る場合は算定しない前提で組む
分科会資料p.41の(Ⅰ)(Ⅱ)別の請求事業所数PDFの自動読み取りが試行間で一致せず、個別数値を確定できず。「約10%で横ばい」の傾向は複数回の読み取りで一致個別数値を使う場合は原典を目視確認する

参考・出典一覧

厚生労働省(告示・通知・審議会資料)

自治体(指定権者の届出案内)

その他